カブトムシの飼育法・幼虫応用編
今日は、昨日のカブトムシの飼育法・幼虫基本編に続く応用編です。
応用編と言っても特別な事をする訳ではなく、楽しみながら育ててみませんかという提案です。
1.幼虫の体重を計ってみる
カブトムシの幼虫は、見る見るうちに大きくなっていきます。せっかくなら、その変化を数字で追ってみましょう。餌換えの都度に体重を量かって記録していくと、成長の度合いが見て取れてなかなか楽しいものです。幼虫の体重は人間用の体重計で量るには軽すぎるので、料理用の秤を使用します。デジタル式のものがお勧めで、0.1gまで計れるタイプならなお可です。
カブトムシの体重は♂と♀で違っていて、普通に育てれば♂で30g、♀で20g程度になります。後で出てくるエサの工夫をしてやればさらに増えて、♂なら30g代後半、♀なら20g代後半まで大きくなります。これくらいの重さの♂なら、80ミリ前後の立派な成虫として羽化してくれます。なお、@ニフティの昆虫フォーラム5番会議室ビートルズ広場で開催されていたカブトムシの大きさを競うカブトンピックでは、♂42g、♀35gという記録が残っています。
2.エサの工夫をしてみる
エサの工夫をしてやると、幼虫をより大きく育てる事が出来るようになります。ただし、以下に紹介する方法は、いずれもリスクを伴いますので、それを承知の上で、自己責任において行って下さい。
ア.発酵マット
普通に売っている昆虫マットは、椎茸栽培に使用したあとのクヌギやコナラのほだ木を粉砕したものがほとんどですが、これをこのまま使って育てると大体♂で30g前後までに育ちます。このマットを、人工的に発酵して使うと、消化吸収が良くなるのか、幼虫をより大きく育てる事が出来る様になります。市販されているものを使うのが最も手軽ですが、結構高価で、安いマットを使って自分で作る事も出来ます。
発酵マットの作り方は以下のとおりです。ただし、失敗すると幼虫が死ぬ事もありますので、最初から全部の幼虫に使用するのではなく、数匹のグループに分けて、ノーマルの飼育と平行して試してみる事をお勧めします。また、発酵途中で凄まじい悪臭を発生しますので、近所迷惑にならないよう置き場所には十分注意して下さい。
用意するもの
未発酵のマット(マルカン製 「昆虫マット(クヌギジャンボマット)」 ミタニ製 「くぬぎ純太君」など)5L程度
薄力粉0.5L
水0.3Lから0.5L
ビニールのゴミ袋2枚
分量は、マットの量に併せて適宜変えて下さい。
まず、悪臭対策のためにゴミ袋を2重にし、その中に未発酵マットを入れます。このマットに薄力粉をふりかけ、よく混ぜます。これに水を徐々に加えながら撹拌していくのですが、水の入れすぎは禁物です。目安は、カブトムシの幼虫にセットする時よりはずっと少なめで、ざっと湿っているなという程度が良く、マットが手にべたべたと付くようだと入れすぎです。水が多すぎると発酵を通り過ぎて腐敗してしてしまう事になってしまいますので、注意が必要です。また、元々マットが湿っている事があるので、水の量は適宜加減して下さい。
次いで、ビニール袋の口を縛って、日なたに置きます。暑い時期なら、2日もすれば発酵が始まります。このとき、マットがかなりの高温となり、何より凄まじい悪臭を発生します。ですから、ビニール袋は3重くらいにしておいた方が良いかも知れません。発酵が始まったら、2日から3日に一回、撹拌をしてやります。これは、そのまま放置すると嫌気発酵となってしてしっまて腐敗に繋がって行くためで、撹拌してやる事によって空気に触れさせてやるのです。最初は、発酵途中のマットの中に手を入れるのは勇気が要りますが、必要な事なので頑張ってやって下さい。また、素手でやると悪臭が手に染みついてしまうので、手袋を使用する事をお勧めします。なお、嫌気発酵しているかどうかの目安は、アルコール臭がするかどうかです。また、嫌気発酵になったとしても諦める必要はなく、撹拌を繰り返していく内に元に戻っていきます。
これを適宜繰り返し、暑い時期なら約3週間、涼しくなってきたら1ヶ月から2ヶ月程度で出来上がります。完成の目安は色と臭いで、マットが濃いきつね色になり、かつ悪臭が消え、インクの様な臭いになってきたら完成したと思って間違いありません。
以下補足事項です。
失敗の原因の多くは、十分な発酵が出来ていない状態で使用してしまう事で、発酵が不十分なマットを使うと室内の温度で再発酵が始まってしまいます。そうなると、マットの内部で酸欠が起こり、幼虫が死亡する原因となってしまうので、注意が必要です。特に、気温が低くなってから作った場合に起こりやすく、わずかでも発酵臭が残っている場合は使わない方が無難です。
気温が低くて発酵が起こりにくい場合は、イースト菌を使ってやると発酵の手助けとなります。市販のドライイースト小さじ3杯程度を砂糖水で予備発酵してから混入してやると発酵しやすくなります。このときばかりは、パンのような良い臭いになるから面白いですよ。
気温が20度を切ると発酵しませんので、屋外での作成は初夏から初秋までとなります。それ以外の時期に作ろうと思えば、屋内でなんらかの保温措置をとってやる必要がありますが、悪臭を伴うためあまりお勧め出来ません。
薄力粉の代りに強力粉を入れる方法もあります。この場合、より幼虫にとって栄養状態の良いマットが出来ますが、発酵の度合いが強く、腐敗しやすくもなるため撹拌の頻度を上げるなど一工夫が必要になってきます。このほか、添加剤として、うまみ調味料(味の素)を少量加える方法があります。
また、小麦粉の代りにふすま(麦を精製した後に出来るもの。米のぬかに相当)を入れる方法もありますが、これは強烈に発酵(50度くらいの熱を発する事があるそうです)するので管理が難しく、最初は避けた方が無難です。ただし、発酵マットとしては最も効果の高いマットを作る事が出来ます。その他、きなこを使ったマットもある様ですね。
イ.菌糸カス
クワガタ飼育のエサとして菌糸があるのですが、これを直接カブトムシに与えても食べる事はなく、効果はありません。ところが、クワガタの幼虫が食べた後の菌糸カスになると、カブトムシにとって最高のエサとなります。クワガタの幼虫が一度消化することで、カブトムシにとっては消化吸収しやすい形になる様ですね。ただし、これも、そのままを与えると幼虫を殺してしまう事になりますので、注意が必要です。これは、菌糸カスの中に生きている菌糸が居ると再繁殖を起こして酸素を消費し、結果として酸欠を起こしてしまうためです。従って、菌糸カスを使う前に、処理が必要になってきます。
(1)乾燥させてから使う
菌糸カスを容器に集め、天日に晒して完全に乾燥するまで放置します。こうする事で、菌糸カスに残っていた菌糸は死滅し、再繁殖を起こす事は無くなります。ただし、これも中途半端な乾燥の仕方だと菌糸が生き残っている可能性があるので、完全に水気がなくなってカラカラに乾くまで放置しておく事が必要です。これをマットに混ぜて使うのですが、用心のため暫くは幼虫には使わず、一週間程度様子を見て菌糸が発達していない事を確かめてから幼虫を投入するよにすることをお勧めします。
(2)発酵させてから使う
菌糸をビニール袋に入れ、発酵マットを作るのと同じ要領で日なたに置いておくと発酵してきますので、適宜撹拌してやります。やがて発酵臭が収まったら使用可能となります。これをマットに混ぜるなり、大量にある場合はそのままマットの代りに使用します。カブトンピックで優勝した幼虫は、この菌糸カスを発酵させたもので育てた幼虫でした。
この方法も発酵が完了したかどうかの見切りが大事で、これを誤ると失敗の原因となりますので、注意が必要です。
なお、この菌糸カスを使う方法は、外国産のカブトムシを育てる時にも有効です。
ウ.大きな容器で大量のエサで飼育する
カブトムシを大きくするのに一番有効な事は、良質のエサを大量に与える事です。そのために衣装ケースなどの大きな容器に10匹程度を入れ、次々に新しいエサを与えるという方法があります。かなり贅沢な方法で管理も大変になってきますが、最大級のカブトムシを目指してみるのも面白いかも知れません。
以上で、応用編は終了です。ただ育てるのも面白いですが、一工夫しでみるのもきっと楽しいと思いますよ。
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