趣味

2004.08.13

カブトムシの飼育法・幼虫応用編

今日は、昨日のカブトムシの飼育法・幼虫基本編に続く応用編です。

応用編と言っても特別な事をする訳ではなく、楽しみながら育ててみませんかという提案です。

1.幼虫の体重を計ってみる
カブトムシの幼虫は、見る見るうちに大きくなっていきます。せっかくなら、その変化を数字で追ってみましょう。餌換えの都度に体重を量かって記録していくと、成長の度合いが見て取れてなかなか楽しいものです。幼虫の体重は人間用の体重計で量るには軽すぎるので、料理用の秤を使用します。デジタル式のものがお勧めで、0.1gまで計れるタイプならなお可です。

カブトムシの体重は♂と♀で違っていて、普通に育てれば♂で30g、♀で20g程度になります。後で出てくるエサの工夫をしてやればさらに増えて、♂なら30g代後半、♀なら20g代後半まで大きくなります。これくらいの重さの♂なら、80ミリ前後の立派な成虫として羽化してくれます。なお、@ニフティの昆虫フォーラム5番会議室ビートルズ広場で開催されていたカブトムシの大きさを競うカブトンピックでは、♂42g、♀35gという記録が残っています。

2.エサの工夫をしてみる
エサの工夫をしてやると、幼虫をより大きく育てる事が出来るようになります。ただし、以下に紹介する方法は、いずれもリスクを伴いますので、それを承知の上で、自己責任において行って下さい。

ア.発酵マット
普通に売っている昆虫マットは、椎茸栽培に使用したあとのクヌギやコナラのほだ木を粉砕したものがほとんどですが、これをこのまま使って育てると大体♂で30g前後までに育ちます。このマットを、人工的に発酵して使うと、消化吸収が良くなるのか、幼虫をより大きく育てる事が出来る様になります。市販されているものを使うのが最も手軽ですが、結構高価で、安いマットを使って自分で作る事も出来ます。

発酵マットの作り方は以下のとおりです。ただし、失敗すると幼虫が死ぬ事もありますので、最初から全部の幼虫に使用するのではなく、数匹のグループに分けて、ノーマルの飼育と平行して試してみる事をお勧めします。また、発酵途中で凄まじい悪臭を発生しますので、近所迷惑にならないよう置き場所には十分注意して下さい。

用意するもの
未発酵のマット(マルカン製 「昆虫マット(クヌギジャンボマット)」 ミタニ製 「くぬぎ純太君」など)5L程度
薄力粉0.5L
水0.3Lから0.5L
ビニールのゴミ袋2枚

分量は、マットの量に併せて適宜変えて下さい。

まず、悪臭対策のためにゴミ袋を2重にし、その中に未発酵マットを入れます。このマットに薄力粉をふりかけ、よく混ぜます。これに水を徐々に加えながら撹拌していくのですが、水の入れすぎは禁物です。目安は、カブトムシの幼虫にセットする時よりはずっと少なめで、ざっと湿っているなという程度が良く、マットが手にべたべたと付くようだと入れすぎです。水が多すぎると発酵を通り過ぎて腐敗してしてしまう事になってしまいますので、注意が必要です。また、元々マットが湿っている事があるので、水の量は適宜加減して下さい。

次いで、ビニール袋の口を縛って、日なたに置きます。暑い時期なら、2日もすれば発酵が始まります。このとき、マットがかなりの高温となり、何より凄まじい悪臭を発生します。ですから、ビニール袋は3重くらいにしておいた方が良いかも知れません。発酵が始まったら、2日から3日に一回、撹拌をしてやります。これは、そのまま放置すると嫌気発酵となってしてしっまて腐敗に繋がって行くためで、撹拌してやる事によって空気に触れさせてやるのです。最初は、発酵途中のマットの中に手を入れるのは勇気が要りますが、必要な事なので頑張ってやって下さい。また、素手でやると悪臭が手に染みついてしまうので、手袋を使用する事をお勧めします。なお、嫌気発酵しているかどうかの目安は、アルコール臭がするかどうかです。また、嫌気発酵になったとしても諦める必要はなく、撹拌を繰り返していく内に元に戻っていきます。

これを適宜繰り返し、暑い時期なら約3週間、涼しくなってきたら1ヶ月から2ヶ月程度で出来上がります。完成の目安は色と臭いで、マットが濃いきつね色になり、かつ悪臭が消え、インクの様な臭いになってきたら完成したと思って間違いありません。

以下補足事項です。

失敗の原因の多くは、十分な発酵が出来ていない状態で使用してしまう事で、発酵が不十分なマットを使うと室内の温度で再発酵が始まってしまいます。そうなると、マットの内部で酸欠が起こり、幼虫が死亡する原因となってしまうので、注意が必要です。特に、気温が低くなってから作った場合に起こりやすく、わずかでも発酵臭が残っている場合は使わない方が無難です。

気温が低くて発酵が起こりにくい場合は、イースト菌を使ってやると発酵の手助けとなります。市販のドライイースト小さじ3杯程度を砂糖水で予備発酵してから混入してやると発酵しやすくなります。このときばかりは、パンのような良い臭いになるから面白いですよ。

気温が20度を切ると発酵しませんので、屋外での作成は初夏から初秋までとなります。それ以外の時期に作ろうと思えば、屋内でなんらかの保温措置をとってやる必要がありますが、悪臭を伴うためあまりお勧め出来ません。

薄力粉の代りに強力粉を入れる方法もあります。この場合、より幼虫にとって栄養状態の良いマットが出来ますが、発酵の度合いが強く、腐敗しやすくもなるため撹拌の頻度を上げるなど一工夫が必要になってきます。このほか、添加剤として、うまみ調味料(味の素)を少量加える方法があります。

また、小麦粉の代りにふすま(麦を精製した後に出来るもの。米のぬかに相当)を入れる方法もありますが、これは強烈に発酵(50度くらいの熱を発する事があるそうです)するので管理が難しく、最初は避けた方が無難です。ただし、発酵マットとしては最も効果の高いマットを作る事が出来ます。その他、きなこを使ったマットもある様ですね。

イ.菌糸カス
クワガタ飼育のエサとして菌糸があるのですが、これを直接カブトムシに与えても食べる事はなく、効果はありません。ところが、クワガタの幼虫が食べた後の菌糸カスになると、カブトムシにとって最高のエサとなります。クワガタの幼虫が一度消化することで、カブトムシにとっては消化吸収しやすい形になる様ですね。ただし、これも、そのままを与えると幼虫を殺してしまう事になりますので、注意が必要です。これは、菌糸カスの中に生きている菌糸が居ると再繁殖を起こして酸素を消費し、結果として酸欠を起こしてしまうためです。従って、菌糸カスを使う前に、処理が必要になってきます。

(1)乾燥させてから使う
菌糸カスを容器に集め、天日に晒して完全に乾燥するまで放置します。こうする事で、菌糸カスに残っていた菌糸は死滅し、再繁殖を起こす事は無くなります。ただし、これも中途半端な乾燥の仕方だと菌糸が生き残っている可能性があるので、完全に水気がなくなってカラカラに乾くまで放置しておく事が必要です。これをマットに混ぜて使うのですが、用心のため暫くは幼虫には使わず、一週間程度様子を見て菌糸が発達していない事を確かめてから幼虫を投入するよにすることをお勧めします。

(2)発酵させてから使う
菌糸をビニール袋に入れ、発酵マットを作るのと同じ要領で日なたに置いておくと発酵してきますので、適宜撹拌してやります。やがて発酵臭が収まったら使用可能となります。これをマットに混ぜるなり、大量にある場合はそのままマットの代りに使用します。カブトンピックで優勝した幼虫は、この菌糸カスを発酵させたもので育てた幼虫でした。
この方法も発酵が完了したかどうかの見切りが大事で、これを誤ると失敗の原因となりますので、注意が必要です。
なお、この菌糸カスを使う方法は、外国産のカブトムシを育てる時にも有効です。

ウ.大きな容器で大量のエサで飼育する
カブトムシを大きくするのに一番有効な事は、良質のエサを大量に与える事です。そのために衣装ケースなどの大きな容器に10匹程度を入れ、次々に新しいエサを与えるという方法があります。かなり贅沢な方法で管理も大変になってきますが、最大級のカブトムシを目指してみるのも面白いかも知れません。

以上で、応用編は終了です。ただ育てるのも面白いですが、一工夫しでみるのもきっと楽しいと思いますよ。

| | コメント (12) | トラックバック (0)

2004.08.12

カブトムシの飼育法・幼虫飼育基本編

カブトムシの飼育法、前回の成虫編に続いて幼虫飼育基本編です。

早くからカブトムシ成虫の飼育を始めた家庭では、そろそろ卵が孵化して幼虫が生まれて来ているのではないでしょうか。大抵の場合、幼虫はケースの一番底に集まりますから、ケースを持ち上げて下をのぞき込むと、幼虫が居るかどうかが確認できます。

幼虫が居たらどうするか。基本的には、すぐには触らず暫くはそのまま放置しておきます。まだ孵化していない卵がある可能性がある為で、マットが乾燥していない限り触らない方が無難です。出来ればさらに2週間程度、そっとしておいて下さい。もし乾燥の度合いが激しければそうも言っていられないので、ケースをひっくり返し、注意深く幼虫と卵をより分けて、再度マットを加水してケースに戻してやります。そのあと、幼虫はマット上においてやれば自分で潜っていきます。また、卵はマットに埋め戻しておいて下さい。孵化率は落ちると思いますが、何割かは孵化してれるはずです。

次に、カブトムシ幼虫の育て方の基本です。

1.素手では触らない事
人の手には雑菌が沢山付いているのですが、これらの菌の中には人には無害でもカブトムシの幼虫にとっては有害になるものがあります。このため、できるだけ手袋をはめるなりして、直接幼虫には触らない工夫をして下さい。

2.エサの種類
幼虫のエサは、大きく分けて二通りあります。

ア.腐葉土
カブトムシというと腐葉土というイメージがありますよね。実際腐葉土でもカブトムシは育ちます。ただし、普通の家庭で腐葉土で育てようとすると、幾つか難点が出て来ます。以下腐葉土で飼育する場合のポイントを上げてみます。

(1)エサとして使える腐葉土を選ぶ
腐葉土なんて、園芸店でいくらでも売っているじゃないかと思われるでしょうが、カブトムシに向く腐葉土というのは案外見つからないものです。まず、広葉樹100%でなければいけません。成虫編でも少し触れたように針葉樹には昆虫を殺す成分があって、これをエサとして与えると大抵の場合死んでしまいます。これが確認出来る腐葉土は意外に少ないものです。次に、農薬が入っていてもいけません。園芸用の腐葉土には、殺虫用に農薬が混じっている事がありますが、当然ながらこれを与えると幼虫は死んでいまいます。この2点をクリアできるなら、カブトムシのエサとして使っても大丈夫です。

(2)栄養が不足気味
ところが、もう一つ難点があって、園芸用として売られている腐葉土は、カブトムシのエサとするには熟しすぎていて、あまり良いエサとは言えないのです。育つ事は育ちますが、あまり大きくはなりません。ただし、広葉樹の葉ばかりを集めて自家製の腐葉土を作っているのなら話は別で、反対に最適なエサとなります。適度に熟した腐葉土なら、大きく育ったカブトムシが得られる事でしょう。

(3)管理が楽
腐葉土の難点ばかりを上げてきましたが、良い点もあります。それは、餌換えの手間が楽という事です。後に掲げる昆虫マットの場合は加水しなければならない訳ですが、これが案外手間が掛かります。腐葉土の場合、最初から湿度を持っている事が多いので、そのままケースに入れてやれば良く、手間が掛かりません。それに、ケースが軽くなるという利点もあります。

(4)蛹化時の注意
腐葉土で飼育していく場合でも、蛹になる時期が近づくと昆虫マットを混ぜてやる必要があります。これは、カブトムシが蛹室を作りやすくしてやるためで、腐葉土だけだと蛹室を上手く作る事が出来ず、せっかく育った幼虫がそのまま死んでしまう事があります。幼虫は自分の糞と周囲の材料を使って回りを固めて蛹室を作るのですが、カブトムシはこれを作るのが下手で、腐葉土だとちゃんと壁にする事が出来ないようです。ですから、昆虫マットを入れて蛹室を作る材料を提供してやる必要があるのです。

イ.昆虫マット
(1)入手が楽
昔と違って、今はホームセンターに行けば、大抵昆虫マットを売っています。この内、針葉樹が混じっていないものを選べば、大抵はそのままエサとして使えます。ただし、若葉という名のマットは幼虫には使わないで下さい。なぜか幼虫が育たず、大抵の場合死んでしまいます。この商品は、安くてかつ大量に売られているので、注意が必要です。また、冬になると昆虫マットが店頭から消えてしまう事があるので、ある程度買いだめしておく事をお勧めします。万が一、秋以降にストックがなくなってしまったら、インターネットで専門店を探して、通信販売で入手して下さい。

(2)栄養はまずまず
生まれてすぐの初令の場合は、なるべく細かいマットの方が良いのですが、2令以降になれば一番安い粗いマットを使っても構いません。これを適度に加水して与えてやれば、そこそこの大きさのカブトムシに育ちます。

(3)管理が少し大変
管理が大変と言っても腐葉土に比べればという意味で、新しいマットにまんべんなく加水してやるのは案外手間が掛かるという事です。コツとしては、ケースの中にマットを入れてから加水して混ぜようとすると結構大変なので、大きなビーニール袋を用意して、その中にマットを入れて加水しながら混ぜてやると割合楽に作業が出来ます。

3.集団飼育について
カブトムシは、単独で飼育するより、集団で飼育した方が良く育つ様です。ですから、一つのケースに複数の幼虫をいれてやるのですが、注意点がいくつかあります。

ア.飼育頭数の目安
一つのケースで育てる幼虫の数ですが、大プラケで10頭程度が目安になってきます。それ以上多いとエサの取り合いになって、あまり大きくは育たない様です。

イ.成長段階を会わせる事
カブトムシの幼虫は、孵化したての初令幼虫から、脱皮する毎に2令幼虫、3令幼虫と育って行くのですが、初令と3令では大きさが数10倍違っています。これを同じケースで育てようとすると、最悪の場合初令幼虫が3令幼虫に殺されてしまう事があります。共食いと言うより事故と言うべきなのでしょうけれども、同じ成長段階にある幼虫同志の場合なら、こうした事はほとんど起きません。ですから、なるべく同じ成長段階にある幼虫同志を集めて飼育する様にしてやって下さい。ただし、飼育数が少なく、ケースが十分に大きい場合はこの限りではありません。

4.エサの交換
エサを交換する目安は、マット(腐葉土)の表面に糞が目立ってきたら、新しいエサに換えてやるようにします。エサの交換の前に、園芸用のふるいを用意しておきます。交換の要領は、まずケースの中身を全部ひっくり返し、幼虫を避けながらふるいを使って糞を除いていきます。糞以外の残ったマット(腐葉土)は、次の新しいエサに混ぜて使う様にします。これは、経済性というより幼虫が自分で作った環境をそのまま引き継いでやる為で、バクテリアなどの関係かこうしてやった方が幼虫の成長が良くなる様です。湿った腐葉土ならそのままケースに入れてやり、古い腐葉土と適当に混ぜてやります。マットなら上記2.イ.(2)のとおりに加水(水加減はぎゅっと握って団子が出来る程度。水がしたたる様では、水の加え過ぎ。)したマットと古いマットを混ぜて、ケースに入れます。エサの量は多ければ多い程良く、ケースの8分目以上にまで入れてやります。ただし、万が一ケースの中の環境が幼虫にとって良くない場合は幼虫が表面に出てくる事があるので、ある程度のスペースは空けておく様にします。ケースの蓋には、新聞紙か専用のシートを挟んで、乾燥の防止とコバエの侵入を防ぐようにします。


5.冬の管理
エサの交換の頻度は、成長が最も盛んになる秋には、飼育頭数にもよりますが、2週間に一度くらい必要になると思います。反対に、真冬になるとほとんど活動を停止しますので、エサの交換も必要なくなります。このとき、エサの交換をしなくなる分ケースの中身が乾燥してしまう恐れが出てくるため、これを防ぐために蓋に挟むものを新聞紙から料理に使うラップに換えてやります。このラップには、通気のために針で小さな穴を沢山開けてやるようにします。専用のシートを挟んでいる場合は、この限りではありません。

ただし、暖かい部屋で飼育していると少しづつでもエサは食べ続けますので、エサの減り具合には注意してやって下さい。その場合、真冬の寒気に幼虫を晒すのは厳禁で、室内でエサの交換を行うか、減った分だけを上から補充ししてやるようにします。

6.蛹化の時期
普通に飼育していると、4月の後半から5月に掛けて、蛹化が始まります。その時分にはエサの交換は止めて、そっと放置しておくようにします。蛹室は大抵ケースの壁を利用して作るので、ケースをよく見ていると蛹室を作り出した事が判ります。

ただし、マットの深さには注意が必要です。カブトムシは縦に蛹室を作るので、エサを食べきってマットが浅くなっている様な事があると、上手く蛹になる事が出来なくなります。出来れば12cm以上の深さが欲しいところです。また、羽化した後は成虫が表面に出てくるので、ケースはマットで一杯にはせず、ある程度の空間を開けておく必要があります。

7.人にあげる場合
カブトムシを人に分けるときの注意ですが、カブトムシは丈夫な虫なのですが、それでも初令、2令の内は環境が変わると死んでしまう事があります。このため、人にあげるのは、幼虫が3令にまで育つのを待ってからにして下さい。

以上が、幼虫飼育の基本編です。明日は、これを元にもっと楽しむための応用編をアップします。

 


| | コメント (14) | トラックバック (0)