龍馬伝48 ~龍の魂~
「龍馬の夢。」
「桂浜。塾生達に稽古を付けている半平太。それを側で見ている長次郎。半平太の号令の下、元気に刀を振る以蔵を初めとする土佐勤王党の面々。そこに現れた龍馬。駆け寄る一同。龍馬の功績を称える半平太。皆のおかげだと答える龍馬。饅頭を配る長次郎。笑み崩れる龍馬。」
「京都・近江屋。陽之助に起こされる龍馬。周囲に書き散らせされているのは、龍馬が書いた陸蒸気の図面。早晩日本にも入ってくる陸蒸気と蒸気船のどちらが早く人や荷物を運べるかを考えていたら、いつの間にか眠っていたと陽之助を笑わす龍馬。外から聞こえてくる祭り囃子の音。」
「陽之助に沢山の文を預けて、各藩の重役達に送る様に頼む龍馬。その中身は、新政府綱領八策でした。陽之助が止めるのも聞かずに外に飛び出していく龍馬。」
「町中で噂されている大政奉還。これから世の中がどうなって行くのかと不安がる町衆に、これからは上も下も無い世の中が来る、誰もが好きな様に生きていける様になると説く龍馬。彼は帝を中心とした新しい世の中がどんな形になるかを見届けようとしていたのでした。」
「土佐藩、京都藩邸。竜馬の居場所を尋ねに来た弥太郎。しかし、応対に出た役人の態度は惨憺たるものでした。龍馬を大殿を唆した悪人と罵り、象二郎こそ取り立てているが、ろくな者ではないと吐き捨てる役人。龍馬の居場所も教えて貰えずに閉め出される弥太郎。」
「近江屋。家人と共に夕食を食べる龍馬。龍馬の馬鹿話に興じる家人達。クワイを食べながら、こんな野菜は見た事がないと話す龍馬。野菜は良いが、塩や米が値上がりして醤油の値まで上がってしまった、このままでは商売があがったりだとぼやく近江屋新助。いつになったら元に戻るのかと心配する家人。もうすぐだと言ってやる龍馬。」
「密かに今日を抜けて越前に向かった龍馬。その途中で新選組に遭遇し、慌てて身を隠します。前にも増して、手荒く不審者を捜す新選組。その途中で見廻組の佐々木達の一行と遭遇した近藤。無言のまま、不気味に通り過ぎていく佐々木達。」
「越前城。春嶽侯に拝謁している龍馬。新政府綱領八策を見ながら、これを西郷や木戸に送ったのかと聞く春嶽侯。無論、容堂候にもと答える龍馬。なんという大胆な事をとあきれる三岡八郎。新政府綱領八策に書かれた○○○とは何かと聞く春嶽侯。そこには帝の下で政を取り仕切る人物の名が入ると答える龍馬。それば誰だと聞かれ、自分にも判らないと答える龍馬。少しあきれた様子の春嶽侯。」
「それより、今は米と塩の値を元に戻す事が大事だと詰め寄る龍馬。彼は、そのためにも早く新しい政府を作って仕事を始めて貰わなければならないと説きます。それには答えず、ここにすわってみないかと自分の席を指す春嶽侯。とまどいながらも、殿様の席に着く龍馬。」
「どうだ、景色が変わって見えるだろうと聞く春嶽侯。土佐の下士の生まれの自分には、居心地が悪い席だと答える龍馬。普通は高い所に座ると居心地が良くなって、降りたくなくなるものだと春嶽侯。慶喜公は降りてくれたと言う龍馬。あのお方だからこそだと答える春嶽侯。」
「もう世の中は変わり始めている、これからは身分の上下も無くなると迫る龍馬。そう容易には行かない、新政府綱領八策を読んだ者は皆疑心暗鬼になると反駁する春嶽侯。沢山の者が○○に入るのは自分だと言い出すかもしれないと三岡。それで良い、それでこそ真剣に○○に誰が入るべきかを皆が考え始めるのだと答える龍馬。苦笑する春嶽侯。」
「○○○を巡って議論を始める薩長の人々。毛利敬親公かと長州藩。徳川か、ならば徳川は滅ぼさなくてはならないと薩摩藩。徳川は既に政権を返している、今は戦よりも新しい政府を作る方が先だと大久保に迫る慎太郎。お前は龍馬に良い様に転がされていると相手にしない大久保。」
「近江屋。龍馬を訪ねてきた弥太郎。龍馬は居ないと答える近江屋の家人達。龍馬はどこだと大声を上げる弥太郎。弥太郎を投げ飛ばす籐吉。ますます檄高する弥太郎。騒ぎを聞きつけて階下に降りてきた龍馬。」
「どういう訳か土佐藩邸に入れなくなったと言いながら弥太郎を二階に案内する龍馬。お前は大政奉還を成し遂げた英雄、薩摩にとっても長州にとっても大恩人だろうと言う弥太郎に、そう簡単にはいかないと良いながら茶を勧める龍馬。」
「湯飲みを受け取らずに、お前と会うのはこれが最後だと言いながら、ミニエー銃九千丁を売って儲けた5245両だと手形を差し出す弥太郎。土佐商会とは関わりなく、自分で儲けた金だと聞き、我が事のの様に喜ぶ龍馬。」
「ところが、弥太郎はこの金は要らないと言い出します。彼は戦が起こると見込んでミニエー銃を仕入れた、大政奉還など有り得ないと思ったからだ。しかし、龍馬ならやりかねないと弱気になった、お前を信じてしまったのだ、こんな悔しい事があるかと叫ぶ弥太郎。お前に儲けさせてもらった金など要らぬ、お前にくれてやると叫びながら、手形を放り投げる弥太郎。龍馬など足下にも及ばぬ男になって見せると言い捨てて去っていこうとする弥太郎。そんな彼を呼び止める龍馬。」
「お前は俺がそんなに嫌いかと聞く龍馬。この世で一番嫌いだと答える龍馬。悲しげに、自分はいつでも弥太郎を友達だと思ってきたと語りかける龍馬。そんなところが一番嫌いだと答える弥太郎。思う様に生き、それがことごとくうまく行く、そんな龍馬と一緒に居たら、自分はとんでもなく小さな人間に思えてしまうのだと悲しげに語る弥太郎。」
「しかし、誰もが新しい世の中を望んでいると思ったら大間違いだと続ける弥太郎。彼はいざ扉が開いたら、とまどい、怖じ気づく者が山の様に居る。恨み、ねたみ、恐れ、保身、そのうち怒りの矛先はお前に向くと予言します。まぶし過ぎる日の光は、無性に腹が立つと知っていると語る弥太郎。悲しげな龍馬。」
「お前の言うとおりかも知れない、知らぬ間に人を傷付けて来たのかも知れないと弱々しげにつぶやく龍馬。」
「世の人は、我を何とも言わば言え、我がなす事は我のみぞ知る。」
「わしは自分の出来る事をしたまでだ、お前も自分の好きに生きたらよい、と弥太郎に語りかける龍馬。そして、彼の手を取り手形を渡そうとします。止めろと良言いながら抵抗する弥太郎。構わずに、自分の事など相手にしなくても良い、お前はこの金で世の中と繋がっていると叫びながら弥太郎を押し倒す龍馬。お前はこの金で日本一の会社を作り、日本人みんなを幸せにしなければいけない、それは自分には到底出来ない、岩崎弥太郎にしか事だと諭す龍馬。」
「寂しげに、達者での、弥太郎と言って頭を下げる龍馬。」
「近江屋をさまよい出た弥太郎。達者でのという言葉が繰り返し彼の頭の中で響いていました。」
「浜辺で月琴を弾くお龍。」
「近江屋で、お龍に宛てて手紙を書く龍馬。今は自分の役目の最後の仕上げに掛かっている、これが終わればもう出番はない、お龍を連れて土佐に帰り、みんなで世界を旅して回るのだと記す龍馬。」
「その前に、お前も英語を習わなくてはならないと説く龍馬。海援隊には英語の辞書を作る様に命じたと続けます。」
「長崎、海援隊本部。辞書の編集にいそしむ隊士達。自由、希望としいった単語を入れようと話し合う惣之丞達。」
「子供達が日本に生まれてきて良かったと思える国を作りたいのだと続ける龍馬。」
「近江屋。龍馬の部屋で世界の絵図を見入る近江屋新之助。その様子を見て、本を手渡す龍馬。峰吉にはと、別の本を手渡します。」
「お龍に向けて、簡単な英語を教えると記す龍馬。アイ・ラブ・ユー、わしは、おまんが、好きじゃという意味だ、良く覚えておく様に、自分たちにとっては一番大事な言葉だからと続ける龍馬。」
「浜辺で龍馬の手紙を読み、もアイ・ラプ・ユーとつぶやくお龍。」
「近江屋の二階で、アイ・ラプ・ユーじゃ、お龍とつぶやく龍馬。」
「京都、薩摩藩邸。龍馬はみんなで日本の事を考えようと言っている、どうしても徳川を叩かなくてはいけないのかと西郷に迫る慎太郎。」
「下関。木戸に向かって、龍馬を信じよう、京に上って新政府を作ってくれと迫る伊藤と井上。本当のところは、龍馬はどう思っているのだうとつぶやく木戸。」
「京都、薩摩藩邸。もし、龍馬が○○○に徳川慶喜と書くつもりならと言いかける吉之助。そんな訳はないと遮る慎太郎。龍馬は大政奉還で徳川を助けたと叫ぶ吉之助。それなら自分が確かめてくる、もしあいつが言ってはならない名を口にしたら、その場であいつを斬ると言う慎太郎。黙ってうなずく吉之助。」
「近江屋。慎太郎から届いた手紙。そこには居場所を知らせろとありました。」
「町中を行く慎太郎。その前に現れた新選組。やり過ごそうと道を変える慎太郎。その背に向かって、龍馬と一緒に居た土佐者だなと声を掛ける近藤。逃れようと先を急ぐ慎太郎。その前を遮る新選組。囲まれた慎太郎。」
「隊士に向かって、手を出すな、自分がやると命ずる近藤。近く見ている見廻組の佐々木。」
「近藤と激しく斬り合う慎太郎。慎太郎の刀を素手で掴んだ近藤。彼は痛みをこらえて慎太郎に噛みつきます。叫び声を上げて近藤を突き放す慎太郎。」
「刀を投げ捨て、近藤に対峙する慎太郎。彼は、この刀が何の役にも立たない世の中が目の前に来ていると言いながら、懐紙を取り出して近藤の傷ついた手に握らせます。そして、おまえ、どうすると小声で聞きます。困惑しながら、そんな事は判らんと言い捨てて去っていく近藤。付き従う新選組。」
「幕府が無くなったら、新選組もただの人切りだと噂し合う町衆達。黙って去っていく佐々木。じっと見ていた今井信郎。」
「居酒屋。居続けで呑んでいる弥太郎。店の者に注意され、土佐ではみんな鯨の様に酒を呑むものだと毒づく弥太郎。その言葉を聞きつけたらしく、お前は土佐者かと尋ねる今井。彼の用件は龍馬の居場所を聞く事でした。」
「雨の中、見廻組の者達に囲まれながら、あんな奴の事は知らないと白を切る弥太郎。お前達は誰だ、幕府か、新選組か、見廻組か、薩摩かね長州か、紀州藩か、それとも長崎奉行所かと次々に名を上げていく弥太郎。龍馬を恨む者は沢山居るなと嬉しそうな今井。お前もその一人かと聞く今井。あんな奴は殺されて当然だと叫ぶ弥太郎。黙って去っていく見廻組。」
「その後を追う弥太郎。彼らの前に立ちはだかり、龍馬は殺される様な事はしていない、あいつは日本のためを考えているだけだと弁護を始める弥太郎。龍馬に悪気は無い、龍馬を殺してはいかんぞと叫ぶ弥太郎。彼を無視して先を急ぐ今井達。」
「彼らに追いすがり、殺さないでくれと懇願する弥太郎。彼は財布を取り出し、これをやる、五千両全部やると差し出します。今井は弥太郎に近付き、龍馬は徳川に忠義を尽くす我ら侍を愚弄した、我らの全てを無にしたと叫びながら当て身を食らわせます。思わずその場に崩れ落ちる弥太郎。彼を捨てて去っていく見廻組。泥水にまみれながら、のたうち回る弥太郎。」
「近江屋二階。咳き込んでいる龍馬。下から酒を運んできた寅之助。仕事のし過ぎを心配する寅之助に、自分が生まれたこんなめでたい日になとおどける龍馬。大事にして下さいと言って帰る寅之助。何やら書き物を続ける龍馬。」
「新政府の重役たるべき人物の名を書き連ねた龍馬。その紙を前に半平太に語りかけ、その名をここに書きたかったと杯に酒を注ぐ龍馬。」
「半平太の杯を飲み干し、新たな杯に酒を注ぐ龍馬。今度は以蔵に語りかけ、優しいお前には人を助ける仕事が向いていると言いながら、以蔵の杯を飲み干す龍馬。次いで、海援隊士の写真を置き、お前の事も忘れていないと長次郎に語りかける龍馬。お前には世界中を飛び回る大仕事をまかせると言って杯を干す龍馬。4つめの杯に酒を注ぎながら、高杉に向かって夢にまで見た新しい日本が来ると語りかけ、その杯を干す龍馬。」
「雨の中、近江屋に向かう慎太郎。その姿を陰で見つめる今井達。」
「闇の中、集まってくる傘。その傘を投げ捨てて、近江屋に向かう男達。」
「近江屋。夜なべ仕事をしている家人達。その時、潜り戸を叩く音。用心深く、もう店じまいしたと声を掛ける家人。腕まくりして構える籐吉。中岡慎太郎が来たと伝えて欲しいという男の声。はいと言って戸を開ける家人。安心して慎太郎を案内する籐吉。」
「中岡を部屋に請じ入れる龍馬。火鉢を挟んで対座する慎太郎。彼は新政府の重役を考えていたと言いながら、書き物を慎太郎に示す龍馬。」
「難しい顔をしながら、書き物に目を通す慎太郎。彼はそこに春嶽侯の名があるのを見て、徳川家の後家門だと難色を示します。春嶽侯は新政府には必要な人間だと答える龍馬。険しい表情で龍馬を見つめる慎太郎。その機先を制する様に、腹が減ったと言って立ち上がり、龍馬!と叫ぶ慎太郎を尻目に、階下に向かって軍鶏を買ってきてくれと頼みます。」
「雨の中、無言で近江屋に向かう武士の隊列。」
「軍鶏鍋でも食べながら話をしようと席に戻る龍馬。徳川を新政府に入れてはいけないと急き込む慎太郎。これは日本人による日本人のための新政府なのだと答える龍馬。人の気持ちはされほど割り切れるものではないと反駁する慎太郎。それは弥太郎にも言われた、しかし、260年も前のと言いかける龍馬を遮り、あの○○○は誰の名前が入るのだと問い掛ける慎太郎。あの○○○には、みんなが入ると答える龍馬。志さえあれば誰でも入れる、それをみんなで選ぶのだと説く龍馬。」
「その選んだ人物を、この人達が支えていくというのが自分の考えだ、自分を斬る前に良く考えてみてくれと言って、書き物を差し出す龍馬。お前の名前がないと答える慎太郎。自分は役人になる気は少しもないと答える龍馬。」
「雨の中、龍馬の名を連呼しながら近江屋に向かって駆ける弥太郎。」
「自分は海援隊の仲間と世界を回る、アメリカやイギリスがどれほどの国か、この目で確かめてくると龍馬。彼はさらに、世界中から知恵と技術と人々を集める、この世界には蒸気船の様に驚くべきものがまだまだ満ち溢れていると語ります。」
「世界中から知恵と技術と人々が集まったら、この国はかつて無いほどの夢と希みに溢れた国になると語る龍馬。興奮が冷め、龍馬の話に聞き入っている慎太郎。さらに蝦夷地開拓の夢まで語り出す龍馬。すっかり軟化し、海かとつぶやく慎太郎。」
「近江屋の潜り戸を叩く音。用心深く誰だと聞く家人。中岡慎太郎の家内だと答える女の声。不審に思いながら扉に近付く家人達。」
「近江屋二階。誰にも言うなと言いながら、自分は泳げないと白状する慎太郎。それは誰にもいえないないと笑い出す龍馬。その時、階下で響く物音。ほたえな!と叫ぶ龍馬。駆け上がって来る足音。危機を察知し、いかんと叫ぶ慎太郎。」
「駆け込んで来るなり、刀を振るう刺客達。不意を突かれて斬り立てられる慎太郎。斬られながらも刀を持って今井の太刀を受け止めた龍馬。どうしてわからん!と叫んで今井を突き飛ばす龍馬。その隙に斬り立てる見廻組隊士達。倒れた龍馬と慎太郎に何度も斬り付ける隊士達。龍馬の書き付けで刀の血を拭う今井。やがて、彼らは佐々木がもう良いとい言ったのをきっかけに立ち去ります。」
「後に残った瀕死の二人。のたうち回りながら、泳げなくても平気だ、わしの船はどんな嵐でも沈まないと叫ぶ龍馬。それなら安心だと答える慎太郎。世界はどれくらい広いのだろうと聞く慎太郎。すくに見に行けると答える龍馬。」
「震える手で、頭の傷をなぞった龍馬。深傷である事を悟ったのか、ああとうめき声を上げます。」
「わしはこの命を使い切れたかと問い掛ける龍馬。何を言う、お前はまだまだ!と叫ぶ慎太郎。そうか、まだまだか、そうだなあとつぶやく龍馬。」
「龍馬!と叫びながら夜の町を駆ける弥太郎。その前に現れた、抜き身の刀を持った血まみれの今井。なんていう事をと言いながら、今井達にむしゃぶりつく弥太郎。弥太郎を突き飛ばす今井。放っておけと弥太郎を捨て、家路に付く佐々木達。血刀を鞘に収める今井。」
「近江屋。そうじゃのと言って、息が絶えた龍馬。龍馬の名を呼びながら、屋根の上に這い出ようとする慎太郎。血まみれになって横たわる龍馬。その横に転がる新政府の重役候補の名簿。」
「雨の中、龍馬を返してくれ、大事な人だ、大事な人だと繰り返し泣き叫ぶ弥太郎。」
「桂浜。海を見つめて立っているお龍。その背後から呼びかける龍馬の声。振り向くと小船の中から龍馬が現れました。この海の向こうに広い世界があると両手を広げて伸びをする龍馬。そして、お龍に向かって、う・み!と笑顔の練習をしろと念押しをします。そう言われて海を見つめるお龍。再び振り向いた場所には、もう誰も立っていませんでした。」
「向こうからやって来た権八と乙女。お龍さんと声を掛ける乙女。う・みと言って笑顔を作り、乙女達の方を向くお龍。何を言ったのかと怪訝そうな乙女。一人背を向けて海岸を歩いていくお龍。黙って見送る二人。」
「明治15年。坂崎を相手に語り終えた弥太郎。西郷も木戸も居なくなった政府は、見にくい勢力争いばかりだと吐き捨てる弥太郎。今に龍馬の夢見た世の中が来ると言う坂崎。そんな甘い事ではないと言って立ち上がろうとし、転げる弥太郎。助けようとする坂崎の手を振り払い、わしに触るなと叫ぶ弥太郎。」
「龍馬は、脳天気で、自分勝手で、人たらしで、女人に好かれて、あれほど腹の立つ男は居なかった!わしはこの世で、あいつが一番嫌いだった!あなん男は、あんな龍はどこにも居ない!と言って、完爾と笑う弥太郎。」
「明治18年2月7日、弥太郎死去。」
「船の舳先で腕組みをして立つ龍馬。汽笛の音と共にフェードアウトする画面。完の文字。」
とうとう龍馬伝が終わりました。色々と思うところはあったけど、終わってみると寂しいものですね。ドラマの冒頭で弥太郎が放った龍馬が大嫌いだというインパクトのある台詞が、最後になって別の意味を持って甦ってきました。それは弥太郎がずっと押し殺してきた龍馬に対する思いだったのですね。この終わり方はなかなか良かったと思います。
近江屋事件周辺の史実については既に何度か書いていますので、ここでは詳しくは触れません。少しだけ補足しておくと、龍馬暗殺の夜に雨が降ったという記録は無く、雨中の出来事というのはドラマの創作でしょう。一つには弥太郎の行動を劇的にしたいという事、もう一つは吉田東洋の暗殺と重ね合わせたという事があるのかも知れません。(追記:当日の雨に関してですが、日中は確かに雨が降っていました。現場に下駄の遺留品があったのは、道がぬかるんでいたせいだと言われていますね。ただ、夜は雨が上がって晴れており、雨中の出来事であるという描写は、創作である事には変わり有りません。)
また、龍馬の名は彼が作った重役候補の中にはなく、それを見て不審を覚えた西郷に向かって、自分は役人になる気は無い、この後は世界の海援隊をやるつもりだと答えたというエピソードは有名ですよね。ドラマもこの線に沿って組み立てられていましたが、実際に作成された案には、参議候補として彼の名が入っていました。つまりは、彼は新政府に参加して新たな国作りを続けるつもりだったと思われるのですが、後世(大正時代)になってから世界の海援隊という伝説が創作された様です。まあ、その方が龍馬らしいという感じはするのですけどね。
次に、龍馬の葬儀について触れておきます。
龍馬の葬儀が行われたのは、慶応3年11月17日の夜の事だとされます。お尋ね者であった龍馬の葬儀を幕府にとがめられる事を恐れて、あえて夜に出棺したのだと言われます。その様子は以前に龍馬坂として触れていますが、その先の墓についてはまだ紹介していなかったと思います。
これが霊山にある龍馬の墓ですね。これまでも常に参拝者が途切れる事はなかったのですが、龍馬伝の放映以来さらに増えて、行列が出来る程になっていたそうですね。この日は混雑を恐れて朝早くに訪れたのですが、それでも何人もの人がお参りに訪れていました。
墓域には三柱の石塔が立っています。その右側にあるのが龍馬の墓石ですね。龍馬の遺体は土葬されたので、今でもこの下には龍馬の遺骨が眠っているはずです。
左側にあるのが中岡慎太郎の墓石です。その功績は龍馬以上という評価もある中で、今ひとつ龍馬の陰に隠れてしまっている観がある人ですが、そのせいなのでしょうか、見ていると龍馬~慎太郎の順で参拝する人が多いようです。まあ、考えすぎかも知れないのですが。
彼らの墓の隣に、一回り小さな墓標があります。これが藤吉の墓なのですね。龍馬達と一緒に死んだ藤吉も、同じ墓域に葬って貰えたのでした。ただ、この墓の存在を知る人は案外少ないらしく、手を合わせる人は少ない様です。今度お参りする機会があれば、是非藤吉の墓にもお参りしてあげて下さい。
そしてもう一つ、龍馬達がここに眠っている理由は、この霊明神社にあるという事も忘れてはいけません。当時はこの神社の墓地に葬られる事が志士としての名誉とされており、龍馬達もまたその栄誉を受けるべくここに運ばれたのでした。
その後、京都護国神社が出来た事でその存在を忘れられてしまいましたが、やはり歴史的事実を消してしまうべきではありませんよね。
さて、終わりに当たってのご挨拶ですが、結構批判的な事も書いたりしたけれど、この番組によって龍馬が辿った人生を壮大なドラマとして楽しませて頂いたと思っています。私的には、龍馬をもう一度勉強し直す良い機会となりました。また、これまであまり知らなかった半平太や弥太郎の人生を知る事が出来たのは収穫でしたね。出来ればまた高知を訪れて、彼らが生きた町を探索してみたいものだと思っています。
皆様におかれては、一年間龍馬伝のレビューにおつきあい下さいまして、ありがとうございました。期間を通じて沢山のアクセスを頂いた事に感謝しています。これからも機会があれば龍馬について書いていきますので、よろしければまた遊びに来て下さい。お待ちしています。
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