西郷どん 第三十九回 「父、西郷隆盛」
明治37年、京都市役所。
市長として赴任した西郷菊次郎。
助役の川村に問われるまま、父、隆盛について話し出す菊次郎。
明治2年、鹿児島。
隠居生活を送る隆盛。
奄美大島。
菊次郎を迎えに来た糸と熊吉。
くれぐれも糸に菊次郎の養育を頼む愛加那。
引き受けた糸。
武村。
借金を返し終え、屋敷を構えた隆盛。
家族の一員となった菊次郎。
さっそく郷中教育を受ける菊次郎。
久光に呼び出された隆盛。
維新後、下級武士が力を持ち、旧秩序を乱していると、
久光に非難される隆盛。
武村。
今ひとつなじめずに居る菊次郎。
東京。
参議会議。
中央集権に急進的な大久保。
それを心配する木戸。
日本各地で噴出する新政府に対する不満。
武村。
東京に一緒に行って、新政府に対する抗議をしてくれと
隆盛に頼む横山安武。
東京では大久保が新しい日本を作っている、
民百姓の事も考えていると隆盛。
民百姓だけではなく、自分たちの事も大事、
いずれ侍の世は終わると横山。
それもやむなしと隆盛。
憤然として帰る横山。
東京、集護院。
門前で抗議の自害を果たした横山。
さらに頻発する一揆や暴動。
暗殺された大村益次郎。
東京。
騒然とする世を憂うる岩倉。
西郷を呼び出すために従道を呼び出した大久保。
鹿児島。
戊辰の戦で亡くなった戦士たちの御霊を弔って歩く西郷。
帰郷した従道。
フランス帰りの従道を歓迎する一同。
その夜。
隆盛にフランスのポリスの話をする従道。
それは良い、士族に仕事を与えられると隆盛。
一緒に東京に来て欲しいと従道。
自分には政に参加する資格が無いと隆盛。
死んでいった者たちのためにも、
政府直属の強い軍を作って欲しいと従道。
東京に行く決心をした隆盛。
菊次郎のためにもう暫く家に居て欲しいと糸。
その話を聞いていた菊次郎。
翌朝。
父と母に隆盛の東京行きを直談判した菊次郎。
東京に行く事となった隆盛。
「今回から西田敏行が菊次郎として登場しました。なんと、今までナレーションをしていたのは菊次郎だったのですね。なんだか取って付けたような設定ですが、まあいいか。」
「そしてオープニングがまた少し変わりましたね。隆盛と大久保という両巨頭のすれ違いが象徴されている様で、なかなか興味深いところです。」
「明治2年頃の西郷は隠居生活を望んでいましたが、凱旋した下級士族が発言権を増し、明治新政府が藩籍奉還を行った事で藩政府の人材が不足し、乞われて藩の執政職に就いていました。ドラマのような野良仕事に精を出す姿ではなかったのですね。」
「西郷は維新の功労者として2千石の禄典を与えられ、幕末以来続いていた借金生活からようやく抜けだし、武村に屋敷と田畑を持つ事が出来ていました。また、朝廷からは正三位という高い官位を授けられています。もっとも、この官位と禄典については久光に遠慮をし、後に辞退する事になります。」
「久光との関係は、隆盛はドラマにあった様に常に非難される立場に晒されていました。久光は幕府は否定していたものの、封建制度そのものは維持を願っていたのでした。それを覆そうとする新政府の動きは久光には不満そのもので、そのはけ口の対象となったのが隆盛だったのですね。」
「隆盛はやはり封建制度で育った人らしく、藩主に対する忠義は絶対のものでした。なので、久光から非難される事は何より辛かったのですね。そのストレスが隆盛の健康を蝕み、益々体調不良を進行させていました。隆盛は温泉療養に何度となく出かけていましたが、屡々下血をするという程、身体を壊していたのです。」
「その隆盛にとってわずかに救いとなったのは、菊次郎を引き取った事でした。菊次郎から見た父は、甚だ喜び遊ばされている様に見えたそうです。」
「その隆盛が東京に出る事になったのは、従道に説得された訳では無く、その後岩倉具視が勅使として派遣され、それに対して隆盛が新政府の改革案を示し、それが受け入れられたからでした。それは国力に見合った陸海軍の整備、外交においては信義、礼節を欠いてはならない、政府の高官となるものは驕奢な生活をしてはならないといった内容でした。ドラマで横山が諫死した様に、一部の政府高官のおごり高ぶった生活ぶりは、庶民の非難する的となっていたのですね。それは隆盛としても許せるものではありませんでした。」
「自分の意見が受け入れられると知った隆盛は新政府入りを承諾しました。一つには久光から距離を置けるという事に救いを感じたのかも知れません。この後も久光との軋轢は続くのですが、それはともかくとして隆盛が中央に出る事によって新政府は新たな局面を迎える事となります。」
(参考文献)
「西郷隆盛」 「西郷隆盛 維新150年目の真実」 家近良樹著 「西郷隆盛 手紙で読むその実像」 川道麟太郎著 「西郷隆盛53の謎」 原口泉著 「勝海舟と西郷隆盛」 松浦玲著
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