西郷どん 第三十八回 「傷だらけの維新」
大村益次郎の指揮により、半日で壊滅した彰義隊。
しかし、更に抵抗の度合いを増した東北越諸藩。
京。
兵も金も無い新政府。
全てを薩摩で引き受けた西郷。
鹿児島。
援軍を集めるため帰郷した西郷。
久方ぶりの団らん。
菊次郎に書物を送る糸。
久光を説得し、増援軍を編成し越後に派遣した西郷。
その様子を見ていた吉二郎。
早朝、刀を持って家を出ようとする吉二郎。
それを見とがめ、止めた信吾。
戦に出たいと西郷に直談判をした吉二郎。
その熱意にほだされた西郷。
越後に出立した吉二郎たち。
数日後、ガトリング砲を有する長岡藩に苦戦をしているとの報告を受け、
自ら出陣した西郷。
越後に着いた西郷の下にもたらされる数々の援軍要請。
そんな中届いた、吉二郎が撃たれたという知らせ。
しかし、兵の命は皆同じと軍議を続ける西郷。
1500人の死傷者を出し、新政府軍の勝利で終わった北越戦争。
傷病兵を見舞う西郷。
侍働きが出来て嬉しかったと言い、西郷の腕の中で亡くなった吉二郎。
その後も函館まで戦い続けた新政府軍。
明治へと生まれ変わった日本。
明治元年10月、東京城に入った明治天皇。
東京城の一室。
二人で話し合う西郷と一蔵。
突然、全て終わった、薩摩に帰りたいと言い出した西郷。
これから全てが始まるのだ、
新しい国を作ろうと言い出したのはおはんだと一蔵。
そのために全てを壊した、多くの者を死なせた
その責めを負わねばならんと西郷。
それが新しい国を作るという事じゃろがと一蔵。
すまん、一蔵どんと西郷。
勝手な事を言うな、共に新しい国を作るために戦って来たんじゃと一蔵。
腰から小さな袋を取り、一蔵の前に置き、
世界に負けん国を作ってくいやいと言い残し、立ち去る西郷。
袋の中にあったのは、かつて見た鹿児島と書かれた地図でした。
後に残され、乾いた笑い声を上げる一蔵。
鹿児島。
吉二郎の妻、園に遺髪を渡す西郷。
泣き崩れる園。
吉二郎が西郷のためにと残していった銭を渡す糸。
西郷家の出納帳を見て、一人泣く西郷。
その夜、剃髪した西郷。
「今回は戊辰戦争の終結から西郷の退隠までが描かれました。心を鬼にして戦う西郷と、弟を亡くし泣き崩れる生身の西郷の対比が鮮やかな回でした。」
「彰義隊を壊滅させた後西郷は鹿児島へと帰りますが、それは増援要請と共に、自らの療養のためでもありました。体調を崩していたらしい西郷は帰郷後すぐに日当山温泉に湯治に向かい、新政府軍が戦っている最中、50日も鹿児島に止まっています。」
「長岡で激戦があったのは事実で、河合継之助率いる長岡藩は寡兵ながら良く戦い、新政府軍を苦しめたのでした。しかし、西郷の援軍が到着した時には大勢は決しており、西郷自身の出番はありませんでした。」
「吉二郎がこの戦場で倒れたのも事実ですが、西郷が看取ったというのは記録になく、ドラマの演出でしょう。でも、流れ的には許される範囲かなとも思いますね。」
「その後の西郷は陣頭指揮を執る事はなく、北陸道征討総督府の働きによって東北諸藩は降伏に追い込まれました。西郷は米沢を経て庄内へと入ります。ドラマではスルーされてしまいましたが、ここで庄内藩に対して取った寛大な処置が後の西郷像を決定的なものとしました。すなわち、賊軍に対しても降伏して来たものはこれを許し、対等以上に扱う度量の大きな徳を持った人物という評価が定着したのです。西郷の座右の銘として知られる敬天愛人という言葉を世に広めたのも庄内の人たちでした。」
「西郷はその後、新政府の要請を無視して鹿児島へと帰ってしまいます。その理由は良く判っていないのですが、鳥羽伏見の戦いの直後に家族に宛てた手紙には、戦が終わった後には隠居すると認められており、早くから退隠する心づもりであった事は確かです。」
「ドラマでは吉二郎の死を悲しんだ西郷が剃髪したかの様に描かれていましたが、実際には越後に発つ前に既に髪を切っていた様です。これは藩主に無断で隠居する事を意味し、後に久光の怒りを買う原因の一つともなるのですが、ドラマではどこまで重みを置くのでしょうね。」
「鹿児島に帰った西郷は再び日当山温泉で湯治を行っており、体調の悪さが退隠を願った理由の一つだったのでしょう。吉二郎を死なせた事も引き籠もる気持ちを更に強くさせたのかも知れません。いずれにしても西郷は静かな余生を願っていた様ですが、彼を覆っていた名声がそれを許しませんでした。西郷はこれからも激動の時代に翻弄されながら生きていく事となります。」
(参考文献)
「西郷隆盛」 「西郷隆盛 維新150年目の真実」 家近良樹著 「西郷隆盛 手紙で読むその実像」 川道麟太郎著 「西郷隆盛53の謎」 原口泉著 「勝海舟と西郷隆盛」 松浦玲著
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