西郷どん 第四話「新しき藩主」
赤山靭負が切腹を命じられた事を知り、久光に助命を嘆願する西郷達。
自分には何も出来ないと冷たくあしらう久光。
「斉彬派の処分は斉興の一存で行った事であり、久光は預かり知らぬ事でした。なので、久光の反応が冷たいのも当然ですね。そもそも、斉彬派は久光の暗殺まで企図しており、久光に嘆願などあり得ぬ事で、この下りは全くの創作です。」
赤山の介錯をした吉兵衛。血染めの肌着を抱いて復讐を誓う西郷。
「赤山家は島津家の分家であり、8754石という大禄を持つ家柄でした。吉兵衛は長くその家令を務めていたのですが、介錯は特に靭負に命じられたと言われます。西郷は靭負の血染めの肌着を抱いて終夜号泣したと伝わっており、後々まで西郷に影響を与えたのでした。」
父が鬼界ケ島に流され、自らも謹慎を命じられた大久保正助。
「正助、後の利通がこの時お由良騒動のあおりを受けて、困窮の中に叩き込まれたのは事実です。その反動で正助は西郷と気脈を通じる様になり、明治維新に至るまで固い絆で結ばれる事となったのでした。」
斉彬に向けてお由羅騒動の顛末を書き、血染めの肌着と共に送る西郷。それを読み、決意した斉彬。
「西郷は後にお由羅一派の処罰を斉彬に向けて建言する事になりますが、それは斉彬が藩主に就任してから後の事で、まだ部屋住みであった斉彬に向けて建言したという事実は無い様です。」
「斉彬が藩主になるべく動き出したのは国元の不穏な動きがきっかけだったのは事実ですが、その動機はもっと深いところにあり、外国の侵略から日本を守るという強い意思からでした。彼にとっては、薩摩藩内の騒動は二の次だったのですね。」
江戸城で阿部正弘に、従三位就任を願う斉興。即答は出来ぬと言い、代わりに上様からの下されものと言って茶壺を渡す正弘。それは隠居せよという幕府からの勧告でした。笑って応えない斉興。
「幕府から斉興に茶壺が下されたのは事実です。ただし、それに関わったのは斉彬と正弘だけでなく、斉彬の英明さを知る島津家の縁戚、伊達宗城といった開明派の大名、斉興が従三位就任の仲介を依頼していた筒井政憲など複数の人たちの合意の上でした。」
「茶壺に隠居せよという暗喩が込められていたのはドラマの説明にあったとおりで、それを斉興が無視したのも史実です。ドラマと違うのはこの後で、幕府はやむなく、次の機会を捉えて今度は朱の衣を渡しました。これも意味は茶壺と同じだったのですが、斉興はこれも無視してしまうのです。」
斉彬と対面し、面罵する斉興。自らに例えて斉興を批判する斉彬。それは西郷が送った手紙に基づいた批判でした。たった一人の下郎に振り回されおってと斉興。一人ではない、自分に薩摩藩の立て直しを期待してくれている者たちに応えなければならないのだと斉彬。薩摩の事は全て自分が決めると斉興。
密貿易の事、琉球出兵の事も全て公儀が知っている、このままでは藩主は切腹、島津家はお取り潰しになる、隠居さえしてくれれば丸く収まると斉彬。断固として断る斉興。
箱からピストルを取り出し、藩主の座を賭けてロシアンルーレットを挑む斉彬。ついに諦めた斉興。
「ロシアンルーレットの下りは完全な創作です。もし、本当にそんな事で藩主を決めでもしたら、薩摩藩は即刻お取り潰しでしょう。」
「斉興を追い込んだのはやはり正弘で、もし隠居しなければ従三位の位をふいにするばかりでなく、島津家にとっても良くない処分が下ると、筒井家を通じて露骨に勧告したのでした。ここまで強硬に迫られては斉興も抵抗する事は出来ず、ついに隠居を決意したのです。」
斉彬の藩主就任の報を聞き、驚喜する西郷達。
お国入りを果たした斉彬。大喜びで新藩主を出迎える領民達。
「斉興が容易に隠居をしなかったのは、一重に斉彬が藩を潰しかねないと危惧していたからでした。お由羅騒動も由羅一人が悪いように言われますが、元はと言えば斉彬派が早まって由羅と久光の暗殺を企てた事が原因であり、それを踏まえれば斉興の処置も当然だったと言えましょうか。それが悪く言われるのは、正嫡を廃そうとした倫理上の問題もさる事ながら、幕末という英雄を欲した時代であった事、後に歴史を動かしたのが斉彬の薫陶を受けた者たちであった事が大きいのでしょう。」
「もし、これが江戸時代の半ばの出来事であったなら、藩の財政を立て直した調所広鄕を重用した斉興こそが藩を救った名君であり、正嫡ながら浪費家でかつ時代に合わない斉彬をあえて廃そうとした広鄕は、忠臣として崇められていたのではないでしょうか。」
「歴史は勝者によって書かれると言われますが、ここにもそれは当てはまる様です。」
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