京都・洛中 第47回京の冬の旅 ~慈照院~
第47回京の冬の旅が始まっています。毎回楽しみなのが非公開文化財の特別公開なのですが、その一カ所目として慈照院を訪れてきました。
慈照院は相国寺の塔頭で、相国寺の広い境内とは道路一筋隔てた北側に位置しています。創建は1405年に遡り、相国寺13世の在中中奄によって開かれました。当初の寺号は大徳院と言いましたが、1490年に足利第8代将軍の義政公の影堂となった事で、その法号を採って慈照院と呼ばれる様になっています。
このため、寺には義政公の位牌や座像があり、今回の特別公開でも見る事が出来ますよ。ただ、暗い中、遠くからしか見る事しか出来ないため、はっきりとは判らないのが残念なのですが。
慈照院は臨済宗の寺らしく、庭がそこかしこに整備されています。その中でも山門内にあるこの庭が一番禅寺らしい枯山水かな。ここは普段でも、山門の外から覗く事が出来る場所ですね。
客殿前には巨大な松である陸船松(りくせんしょう)のある枯山水があります。この松に意識が行き勝ちですが、この右手の方に石組みがあって、そちらが庭の中心である事が判ります。
江戸時代に入ると、当院第7世の仏性本源国師が、桂宮家初代の智仁親王、二代の智忠親王と親交を深められ、1629年には桂宮が当院の境内に御学問所を建てられました。その3年後に御学問所は本源国師に下賜され、書院棲碧軒(せいへきけん)として今に伝わっています。写真右手の建物がそうで、桂離宮と建材や技法が同じなのだそうですね。また、慈照院は桂宮家の菩提所でもあり、この縁から八条宮家の位牌のみならず、墓所が境内に隣接して存在しています。
本源国師はまた、千宗旦とも親交がありました。茶室・頤神室(いしんしつ)は宗旦との合作と言われ、宗旦好みの席とも言われています。いわゆるにじり口が無く、障子二枚の貴人口があるのが特徴だそうですね。
この茶室には宗旦狐の伝説があり、ある時、慈照院で開かれた茶会に宗旦が遅れて来ると、先に来ていた宗旦狐が手前を披露しているところでした。宗旦はその手前の素晴らしさに感心してしまったのですが、正体を見破られたと気付いた狐は窓を破って逃げてしまいます。この時狐が破った窓は大きく穴が開いてしまい、修復はされたものの、茶室には不釣り合いな大きな窓になってしまったとされています。写真の中にわずかに見えているのがその窓ですね。実を言えば、この窓が見たくて慈照院に来た様なものなのですよ。
この茶室には宗旦狐の掛け軸が賭けられているのですが、これも暗くて良く見えなかったのが残念です。もっと間近で見たかったな。また、右手には布袋像が安置されているのですが、この像の首はすげ替えられるようになっており、利休の首が別に用意されているのだそうですね。罪を得て切腹させられた利休を堂々と祀るのははばかりがあったため、この様な仕掛けがしてあるのだとか。この布袋像も実際に見る事が出来ますよ。
慈照院は観光寺院で無いためあまり知られていませんが、見所の多い特別公開だと言えそうです。
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コメント
宗旦狐の茶室、行かれたのですね。
今回の公開の中で、私もこちらを
一番楽しみにしています。
想像すると愉快ですよね。
投稿: zuzu | 2013.01.16 11:36
zuzuさん、
以前に宗旦狐の記事を書いた時にこの茶室の存在を知り、
いつか見たいものだと思っていました。
誰が言いだしたのかは知らないけど、面白い事を考えるものですね。
宗旦狐の掛け軸共々、是非ご覧になって下さい。
投稿: なおくん | 2013.01.16 20:35