平清盛 第48回 「幻の都」
(六波羅。一人端座し、忠清を斬ろうとした事を回想する清盛。)
(通りがかった盛国に介錯を頼む忠清。平家の武の軸は忠清だ、これからも一門と清盛を支えて行こうと盛国。)
(重衛と知盛に忠清の言った事をどう思うと問う宗盛。譜代の侍大将の言う事は見当外れではないと知盛。父は昔から誰よりも強く偉い人だったと重衛。)
(治承4年10月、鎌倉。降伏してきた大庭景親。斬首の上、さらし首と命ずる頼朝。)
(配下の武将に所領を安堵し、報償を与える頼朝。忠誠を誓う武将たち。威厳をもって佐竹攻めを命ずる頼朝。)
(福原。病に伏す高倉上皇。上皇を見舞う清盛。何よりも上皇の身体が大事、俄かの遷都が元であるならばと徳子。)
(京、内裏。諸国の謀反について朝議に諮る公卿達。還都を主張する兼実。まだ半年だと基通。今、平安京を攻められたら何とすると兼実。重盛が生きていた頃は、まだ秩序が保たれていたものをと経宗。間もなく福原に新しい内裏が出来る、平家が作り上げた都を捨てる事など断じて出来ないと時忠。立ち去る兼実ら公卿達。)
(福原。一門を集めた宗盛。何用かと清盛。都還りをと進言する宗盛。環都せよと言うのかと色をなす清盛。寺社までが旧都を狙っている、上皇様も病と宗盛。宗盛を蹴飛ばし、都還りはしないと叫ぶ清盛。父の気持ちが判らぬか、福原は清盛の人生の全てだと時忠。たとえ武士の世と言えなくても、自分が出会った全ての人の証しがこの福原の都なのだと清盛。それでも都還りして頂きたいと宗盛。それでも棟梁かと時忠。棟梁故にと宗盛。過去の様々な出来事を振り返り、兄とは比べものにならない出来の悪い男子だと宗盛。その自分に出来る事があるとすれば、今この時、父を諌める事だと泣いて訴える宗盛。一門の者、一人一人の顔を見つめ、海を振り返る清盛。)
(11月11日。落成した内裏。玉座に就く安徳帝。帝のために作った新しい内裏だと孫に語りかける清盛。)
(京、内裏。清盛が環都の意向を示したと駆け込んでくる経宗。どよめく公卿達。)
(福原。宴の席で、「帰りなんいざ」と歌い始める舞姫。)
(清盛の回想。白河院の前で舞った時の事。保元の乱、平治の乱で戦った時の事。武士の世を作るのだと忠盛。海の近くに、平家の都を持ってくると清盛。先例大事の枠に囚われて国造りをしている暇はない、この国の形を密かに作り上げ、それをこの国の姿だと示すと清盛。ここは自分の世だ、武士が頂きに立つ世だと清盛。殿ご自身が武士ではないと忠清。)
(舞を見つめながら涙する清盛。)
(がらんどうになった福原の館。港の模型の残骸を見る清盛。そこに現れ、母と家来と共にここに残り、父の志を守ると小兔丸。彼らに頭を下げる清盛。立ち去る小兔丸たち。11月29日、福原を去った清盛。)
(六波羅。知盛に近江、伊賀、伊勢の謀反人を討てと命ずる清盛。承知、と出て行く知盛。重衛に源氏と結びついた山法師を攻めよと命ずる清盛。承知と重衛。)
(縁に座り、庭を眺める清盛。隣に座り、何をお考えかと時子。この何十年、何をしてきたのか、武士の世とは何だったのかと思っていると清盛。悲しげな時子。)
(鎌倉。一人端座し、夕陽を眺めている頼朝。そこに現れ、何をお考えかと政子。清盛が目指した武士の世とは何であったか、真の武士とは何であったのか、未だに計りかねていると頼朝。そこに現れた義経と弁慶。)
(何故挙兵を決心したのかと義経。亡き父の武を証し立てるためと頼朝。父の武と義経。義朝と清盛は若い頃から切磋琢磨して来られた、しかし、いつしか袂を分かつ事となった。起死回生を狙って起こした平治の戦の顛末は知ってのとおりと頼朝。その後、清盛は太政大臣にまで上り政をしているが、今は武士の世とは名ばかりの平家の世だと頼朝。私は平家を力で倒し、その上に真の武士の世を作ると頼朝。是非そうしてもらいたい、そうすれば先々代の源氏の大将の魂も浮かばれると弁慶。)
(頼朝に乞われ、若き日の清盛が神輿を狙って矢を放ったと語る弁慶。驚く頼朝。)
(弁慶の回想。神輿を射た時のごとく、朕を射てみよと鳥羽法皇。法皇を射る仕草をする清盛。そなたこそが乱れに乱れた世に報いられた一本の矢だと鳥羽法皇。)
(それを、あの方はやり続けてきたのかと頼朝。朝廷に入り込み、その仕組みそのものを壊し、変え、誹られながらも新しい都を作る、それらは全てと頼朝。)
(頼朝の回想。六波羅で倒れている頼朝の側に髭切の太刀を刺し、真の武士とは如何なるものかを見せてやると清盛。)
(鳥羽院に向かって矢を放つ清盛を思い浮かべる頼朝。矢を放つ清盛。腹に衝撃を受け、前のめりになる頼朝。別れ別れになったかに見えた父、義朝と、清盛の道は、再び一つになる、そしてそれこそが自分の務めであると悟った頼朝。)
(内裏。おろおろと駆け込んできた兼実。経宗を見つけ、東大寺を含む南都の寺が灰燼に帰したのは本当かと問う兼実。本当だと経宗。崩れ落ちる兼実。)
(12月28日。南都を鎮圧する重衛。風に煽られた火。)
(入道め、まだ懲りておらぬかと経宗。わざとではない、火が風に煽られただけと基通。もし我が寺興復すれば天下興復し、我が寺衰弊すれば天下衰弊す、と東大寺創建の折の聖武帝の詔を話す兼実。衝撃を受ける経宗。世に平家ある限り、天下の乱れは収まらないと兼実。)
(六波羅。こればかりは如何なる言い分も通らないと清宗。重衛も大仏まで燃やすつもりは無かった、強い風に煽られたのだと宗盛。それこそが、もはや運が尽きたという事、天は平家を見放したのだと清盛。)
(そこに現れ、笑顔で戦果を報告する重衛。伽藍を焼いた事も天は許す、自分たちが討ったのは仏を盾に狼藉を働く不埒者だ、これが出来るのは我ら平家のみ、強き武門の我らを措いて他には居ないと世に示したと重衛。立ち上がって、ようやったと重衛を労う清盛。はっと平伏する重衛。じっと庭を見つめる清盛。)
今回は福原からの環都、そして南都焼き討ちが描かれました。落日を迎えつつある平家と、旭日の勢いを示す源氏との対比が鮮やかになった回でしたね。
環都については、福原への遷都は清盛の独断で行われた様なものであり誰も喜ぶ者は無く、都還りはほとんどの人が望んでいた事でした。宗盛が清盛に環都を直訴した事は玉葉に記されており、おそらくは宗盛が清盛に示した唯一の反抗的態度ではなかったかと思われます。また、これに先だって、延暦寺が環都を求めており、もし入れられなければ山城と近江を占領するという恫喝を行っていました。さらには、病に倒れた高倉院もまた環都を望むようになったと言います。
一門の中で環都に反対したのは時忠だけだったと言い、周囲の支持を失った清盛は、やむなく環都を実行したと考えられますが、これには異説もあります。清盛はそんな消極的な理由で都還りをしたのではなく、近江にまで迫った反乱軍に断固たる措置を執るべく平安京に帰ったのだという説で、環都後、清盛は公卿や荘園領主たちに対して兵士を進上する様に求めているというのがその根拠です。つまり、東国の反乱に対抗するために、平家のみならず、公卿や荘園領主を巻き込んだ挙国一致の体勢を築こうとしていたというのですね。この場合の清盛はドラマの様な気弱な老人ではなく、平家政権のさらなる強化を図る意気盛んな政治家という姿になりますね。
南都の焼き討ちについては、重衛が陣の周囲を照らそうと民家に放火を命じた火が、強風に煽られて広がったとする説、平家は最初から計画的に焼き討ちを考えていたとする説に分かれます。この直前に、同じく反平家の立場を取った近江の園城寺を焼き討ちしている事を考えると、南都の焼き討ちも計画的だったという気がして来ますね。いずれにせよ、大仏殿を含む堂塔伽藍のほとんどが焼け落ちたのは確かで、平家物語に拠ると、討ち死にした悪僧は1500人、焼け死んだ者は3500人にも上ったと言われます。これが事実なら未曾有の殺戮が行われた事になりますが、実際にはドラマにあったように49人の悪僧が討ち取られたというのが真相に近い様です。
ドラマに戻って、今回はほとんどが回想シーンだったのですが、そのどれもが伏線となっていたのは見事だったと思います。中でも鳥羽院を矢で射たシーンなんて忘れていましたよ。祇園闘乱事件で放った矢が頼朝にまで届くとは、恐れ入った伏線の張り方でした。
それにしても、忠清によって生き方の全てを否定されてしまった清盛は、抜け殻の様になってしまいました。そこに追い打ちを掛けたのが宗盛の直訴で、初めてと言って良い宗盛の反抗で、清盛も遂に平家の都という彼の夢を諦めたのでした。この時の宗盛の回想もまた伏線の回収になっており、どこまで周到なんだとあきれる思いで見ていましたよ。
そして、抜け殻となった清盛の思いを継ぐのは宗盛ではなく頼朝であり、その橋渡しとなったのが弁慶でした。ドラマの前半において、なぜ弁慶があちこちに出没しているのかと疑問に思っていたのですが、全てはここに繋がる伏線だったのですね。これが今回の止めだったなあ。
天に見放されたとつぶやく清盛にかつて武士の世を目指した頃の面影は無く、清盛と義朝の道を繋ぐという頼朝には、真の意味での武士の世を開くという意気込みと輝きが見られました。史実においてはまだまだ意気盛んな所を示す清盛なのですが、ドラマにおいては死亡フラグが立ってしまいましたね。
後残りは2回、どんな収束を用意しているのか、楽しみに待ちたいと思います。
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コメント
お久しぶりです。
あまりにお久しぶりでお忘れかと思いますが(笑)
紅葉楽しませていただいてます。
さて、なんだか突然思いついて、締め切りギリギリ狐の嫁入りに応募しようと思ってます。
めちゃくちゃ忙しい時期ではありますが…当たらないと思うので(笑)
でもやってみたいなー。(笑)
投稿: きょうこ | 2012.12.10 00:09
きょうこさん、
もしかしたらハンドルネームを変えられましたか。
過去の記録にないもので...。
狐の嫁入りですか、面白そうですね。
もし当選したら、花灯路でお目に掛かれるかもしれませんね。
投稿: なおくん | 2012.12.10 20:37