京都・洛西 京の夏の旅2012 ~木島櫻谷旧宅~
今年の京の夏の旅、2カ所目は木島櫻谷(このしまおうこく)旧宅に行って来ました。場所は少し分かり難い所にあり、北野白梅町の北西に当たります。洛星高校の向かいと言った方が判りやすいかな。
木島櫻谷は明治から昭和初期にかけて活躍した日本画家の一人です。京都の人で、三条室町の商家の次男として生まれました。16歳の時に京都画壇の大家であった今尾景年に弟子入りし、以後、四条・円山派の流れを汲む日本画家として頭角を現します。
若くして数々の展覧会に入選して注目を集め、やがて竹内栖楓と人気を二分する程の大家となりました。その画風は写実的で、今回の公開で展示されているライオンの絵などを観ると、もの凄い迫力すら感じますね。
しかし、その一方で批判も多くあり、特に代表作とされる「寒月」については、夏目漱石から酷評を受けた事が知られています。六曲一双ので、寒月が照らす竹林の中を狐が歩くという構図なのですが、講評を求められた漱石は「月は寒いでしょうと言っている。竹は夜でしょうと言っている。ところが動物はいえ昼間ですと答えている。」と言い、「写真屋の背景にした方が良い」と断じたのでした。私から見れば凜とした雰囲気のある素晴らしい絵だと思えるのですが、漱石の目には駄作と映ったのでしょうね。
これに限らず、櫻谷を批判する勢力は根強く、やがて画壇とは没交渉となり、独自の世界に沈殿する様になっていきます。この衣笠村の地に移ったのは大正の初め頃で、それをきっかけとして堂本印象、小野竹喬、土田麦僊など数多くの画家が周辺に集まり、この周辺は衣笠絵描き村と呼ばれる様になりました。
この旧宅は2000坪という広大な敷地を有しており、木造二階建ての和館のほか煉瓦造りの洋館、80畳のアトリエなどが現存しています。かつては船を浮かべられる程の大きな池もあったそうですね。画壇とは一線を画した孤高の画家であったとは言え、大勢の弟子を抱えた大家であった事を窺わせる旧宅です。
櫻谷は晩年には精神を病んでいたらしく、その最後は線路を歩いていて、電車で跳ねられるという悲惨なものでした。場所は枚方近くの京阪電車だったと言いますから、ちょっと驚きますね。
この旧宅は50年高く閉鎖されていたそうで、痛みが激しく、あちこちを修復して今回の公開に至ったものだそうです。それでも、二階には一度に20人以上は上ってはいけないという制限が付けられているそうですから、見た目以上に朽ちているのでしょうね。
見所としては、昭和初期の面影の残る母屋や台所、螺旋階段の残る洋館でしょうか。母屋の二階は広々として涼しく、居心地の良さを感じます。台所は昔ながらの竈がある一方、湯沸かし器があるのが印象的でした。いくつか展示されている作品も興味深いものがありますよ。ただ、80畳敷のアトリエは修復中との事で入る事が出来なかったのが残念だったな。
注意すべきは金土日祝日のみの公開となっている事で、金曜以外の平日には入る事が出来ません。建物の痛みが激しいという事からなのかな。その点がちょっと残念ですね。
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