平清盛 第21回 「保元の乱」
(1156年(保元元年)7月10日、経子の館。子供達に夕餉を摂らせている時子。そこに忠正が離反したという知らせが入ります。清盛の心中を推し量る時子。)
(高松殿。参陣を告げる清盛と義朝。戦後の恩賞を約束し、昇殿も許されようと、帝のために戦えと励ます成親たち近臣。死んでしまってはどうにもならない、今すぐの昇殿をと迫る義朝。それを聞いて高笑いする後白河帝。)
(戦場で肉親と命のやりとりをする覚悟があるのかと問う信西。無論と義朝。それを聞き、昇殿を許して軍議に加われと告げる信西。じっと一点を見つめている清盛。)
(宇治、忠実の館。戦の行く末を案じる忠実。)
(洛外。守仁と共に避難している美福門院。父と伯父の戦いに疑問を持つ守仁。これは法皇の遺志である、戦の後には大きな役目が待っていると諭す女院。)
(白河北殿。武士達に向かって、戦に関する存念があれば言ってみよと問う頼長。立ち上がり、最も効果のある策は夜討ちだと為朝。)
(高松殿。為朝と符合する様に夜討ちを主張する義朝。)
(白河北殿。自分が敵陣に突入し、義朝の首を取る。そして逃げようとする帝を輿ごとここに連れて来て譲位させ、上皇が復位すれば良いと迫る為朝。)
(高松殿。夜の明けぬ内に敵陣を攻めよと下知をと迫る義朝。関白の意見はと問う信西。なんとおぞましいと顔を顰める忠通。それが戦だと義朝。)
(白河北殿。さあ、と決断を迫る為朝。その議はまかりならないと却下する頼長。夜討ちなど田舎の戦、これは帝と上皇の争いだというのがその理由でした。戦は先手を取った方が勝ちだと息巻く為朝。孫子の言葉を引き、兵力で劣る側から責めるのは理に合わない、大和の軍勢が着くのを待つのだと頼長。何を言っているのか判らないと為朝。さらに孫子の言葉を引き、夜に兵が呼び合うは臆病だ、何より夜討ちは卑怯だと頼長。)
(高松殿。孫子の言葉を引き、夜通し議論し続けるのは臆病者のする事。さらに、ぼんやりと夜明けを待つ事を孫子は良しとはしないと言い、今すぐ動くが良いと下知を飛ばす信西。)
((白河北殿。天下を争うこの戦で、夜討ちなどという下策を採れば、上皇は世を治める器にあらずと示すも同然と言い切る頼長。いまいましげに座る為朝。左大臣の言うとおりに従えと上皇。)
(高松殿。すぐに討って出よと下知する忠通。見事な献策だったと褒める信西。さすがに戦慣れしている、都育ちの武士ではこうは行かないと信西。黙って聞いている清盛。義朝に破格の恩賞を約束する信西。勇んで立ち上がる義朝。じっと座っている清盛に、早く行けと促す信西。我らにも働きに見合った恩賞をと要求する清盛。お手並み拝見と信西。立ち去る清盛。あれでは義朝が可哀想だと信西の臣。何の事やらと信西。)
(清盛の陣。敵の要は為朝、奴を狙えと清盛。あれは化け物、源氏に兄弟で争わせておけばよいと弟たち。それでは平氏の武功にならない、たとえ勝っても王家の犬のままだと清盛。ならば我ら兄弟で攻めると忠清。南門は忠清、忠直に任せたと清盛。承る二人。重盛と基盛にも忠清たちの勢に加われと命ずる清盛。この戦は武士にとって千載一遇の好機、死ぬ気で戦えと檄を飛ばす清盛。)
(自分も加えて欲しいと願い出る頼盛。すぐにここから立ち去れと清盛。何故と頼盛。弱気を抱えた者に従う兵は、無駄に命を落とす、そんな者を戦には出せないと頼盛を突き飛ばす清盛。悔しげに立ち去る頼盛。身内を敵に回すというのは難儀な事だと兔丸。)
(義朝の陣。長田忠致の参陣を伝える正清。これは頼もしいと義朝。彼らの前に現れ、直々に言葉を掛ける後白河帝。)
(この戦は白河院より乱れ爛れた世を止めるためのもの、それが出来るのは武士しか居ないと帝。武士によって白河北殿を落とす事が新しい世の始まりだと帝。じっと聞き入っている清盛たち。微笑んで姿を消す帝。出陣を命ずる義朝と清盛。武者押しの声で応える一同。)
(7月11日寅の刻。3手に別れて白河北殿に向かった帝の軍勢。それを見送る鬼若。)
(白河北殿。敵の夜襲に慌てる上皇軍。何と卑怯なと憤る頼長。)
(為義に上皇の側を守れと薦める通清。彼は子供同士が戦う姿を為義に見せたくないのでした。じっと佇む為義。)
(賀茂川。弟の頼賢の軍勢と出会った義朝。源氏の面汚しと義朝を面罵する頼賢。有無を言わさず矢を放つ義朝の郎党。たちまち乱戦になる軍勢。)
(由良御前の館。手を合わせて義朝の無事を祈る常磐。常磐に武運を祈りましょうと声を掛ける由良。)
(白河北殿、南門。対峙する忠清と為朝。名乗り合う二人。忠清を歯牙にもかけない為朝。自ら名乗り出て為朝に挑む忠直。矢を向け合う二人。放たれた為朝の強弓は、忠直の身体を突き破って、後ろの忠清の鎧の袖までも貫きます。六郎と叫ぶ忠清。唖然とする平家軍。)
(北門。攻め寄せた清盛の軍勢の前に現れた忠正。忠正の前に進み出て、無駄な血は流したくないと清盛。いざ勝負と矢を放つ忠正。)
(経子の館。清盛の身を案じて落ち着かない時子。もし忠正と清盛が対峙すれば、武士として存分に戦うはず、これは武士の世への道と盛国。)
(矢を打ち合う忠正と清盛。矢を討ち果たした忠正を見て、剣を抜き剣での勝負を挑む清盛。固唾を呑んで見守る郎党達。激しく切り結ぶ二人。)
(戦場で戦うのは武士の生きる道そのもの、今宵集まった千を超える武士は命を燃やすのだと時子に説く盛国。辛そうに聞いている時子。)
(激しく戦う義朝たち。)
(観音の絵図に手を合わせる池禅尼。そこに戻ってきた頼盛。何故と禅尼。戦場から追い出すという辱めを与えた清盛の兄が憎いと頼盛。)
(白々と明ける夜。その中で撃ち合っている清盛と忠正。焦れて門を打ち破れと叫ぶ兔丸。黙って見ていろと叫ぶ郎党。あほらしいと引き上げに掛かる兔丸。そこに駆けつけてきた家貞。南門はどうしたと問う清盛。忠直が討ち死にしたと伝える家貞。驚く清盛。このまま為朝を狙い撃ちしても被害が増すばかりと家貞。それを聞いて、功を焦ったなと忠正。)
(自分が上皇方に付いたのは頼盛のためばかりではない、最後の最後まで信じられなかったのだ、清盛の中に流れる物の怪の血をと叫んで撃ち掛かる忠正。俺はもののふだ、平氏の棟梁だと反撃する清盛。この戦にも、物の怪の血にも勝ってみせる、俺は平清盛だと叫ぶ清盛。)
(二人の戦いを余所に、門から討って出る上皇方の軍勢。迎え撃つ平氏の軍勢。)
(賀茂川。激戦を続ける義朝。そこに援軍に現れた頼政の軍勢。)
(南門。苦戦を続ける平氏軍。そこに現れた正清。源氏の郎党がと憤る為朝。為朝に矢を射る正清。その矢を受け、射返す為朝。子の前に立ち、その矢を受けた通清。驚く正清。この父を見習うでないぞと言って去る通清。父を撃たれて、怒りの余り為朝に襲い掛かる正清。)
(オウムの駕籠を抱えて狼狽えている頼長。落ち着けと為義。庭で矢を受けて倒れる武者。その姿を見て腰を抜かす頼長。)
(為義に、その息子たちの戦い振りを伝え、源氏の夜はきっと来ると言って息絶えた通清。悲鳴を上げる頼長。通清を看取って、戦に出て行く為義。ここに居て自分を守れと叫ぶ頼長。その頼長に黙れと叫び、戦を知らぬ者は、耳を塞いで時が過ぎるのを待っておれと怒鳴りつける為義。駕籠を抱えながらうなずく頼長。)
(激戦の続く南門。駆けつけた義朝。その前に現れ、通清は死んだと告げ、叫びながら義朝に斬り掛かる為義。慌てて防ぐ義朝。親子で激しく斬り合う二人。義朝の加勢に加わる正清。放たれる為朝の強弓。たまらず引けと下知を下す義朝。彼は正清に信西の下に向かう様に命じます。戦い続ける忠清たち。)
(信西に火攻めの許しを願う正清。義朝は火攻めによって、隣接する法勝寺が焼失する恐れがあると懸念したのでした。)
(激戦の続く北門。撞木を運んできて、門を突き破ろうとする兔丸。)
(義朝は愚か者だ、帝がこの世にあれば法勝寺などすぐに再建が出来る、許しを請うに及ばず、即刻火を掛けよと命ずる信西。)
(門を突き破ろうとする兔丸。火矢を射掛ける義朝の軍勢。)
(火矢の雨に怯む上皇方の軍勢。兄の策かと歯ぎしりする為朝。)
(門を突き破り、中に突入した兔丸。混乱する上皇軍。駕籠を持ったまま避難する頼長。)
(はずみで転んだ頼長。そこに現れた崇徳上皇。地に転んでいる頼長を見て、そなたを信じた自分が愚かであったとつぶやく上皇。呆然と上皇を見つめる頼長。近臣に守られ、逃げていく上皇。取り残された頼長。頼長様の才は、古今和漢に比類なきものとしゃべり続けるオウム。叫びながら駕籠を振り上げる頼長。)
(帝の前にひれ伏し、にっこりと笑う信西。御簾の内で微笑む帝。)
(壊れた駕籠から出たオウム。その側を逃げまどう人々。)
(追い詰められた為義。そこを救い、早く逃げろと鬼若。)
(燃えさかる館の中で、忠正を捜し求める清盛。見つけてどうする、忠正は敗軍の将だと忠清。諦めて館を出る清盛。燃え落ちる館を見つめながら、幼き日に白河法皇に、お前にもこのもののけの血が流れていると言われた事を思い出す清盛。武士の手によって落とされた白河法皇のかつての御所。)
今回は保元の乱が描かれました。前半の山場なだけに、期待に違わず見応えがありましたね。戦の経過だけでなく、身内で争う同士の悲しみも丁寧に描かれており、これまでで最も面白い回だったと思います。
戦いの経過は以前に書いたので省略しますが、ドラマもほぼ史実に添って描かれていました。ただ、違ったのは清盛が活躍し過ぎた事で、実際には最初に南門に攻め掛かったものの、忠直が為朝に射殺された時点で戦意を失ってしまい、さっさと旗を巻いて別の戦場に移っています。この清盛のあまりの弱腰に腹を立てた重盛が為朝に向かおうとしたのですが、郎党がこれを取り押さえるという一幕もありました。要するに、清盛はこの戦いでは脇役に過ぎなかったのですね。主役を演じたのは源氏の一門で、中でも為朝の働きは抜群だったと伝えられます。
また清盛と忠正が一騎打ちをしたという事実はありません。忠正がこの戦いでどの様な働きを示したかは伝わっておらず、どこで戦っていたのかもわかっていないはずです。また、頼盛が戦からはずされたという史実も無く、全てはドラマにおける創作ですね。
ドラマに戻って、戦いの前の信西と頼長の対比の仕方は見事で、観念で動いた頼長が墓穴を堀り、より実践的に動いた信西の勝利に終わった事が明確に描かれていました。頼長のために少し弁護をしてやるとすれば、彼には興福寺の軍勢が援軍に来るという当てを持っていたのですね。逸って打って出るより、時を稼いだ方が有利になるはずという読みが彼にはあったと言われます。それを覆したのが義朝の夜討ちであり、火攻めだったのでした。そして、それを即座に認めた信西の読み勝ちだったという事なのでしょう。
史実と少し違ったのは、義朝の昇殿を信西が認めた事で、保元物語では義朝が無理に軍議の席に昇ってしまい、信西はあきれたものの、帝は大層面白がられたとなっています。
身内同士の争いでは、為義の悲しみが良く表されていました。息子に斬って掛かるなど、正気では居られなかった事でしょうね。そこを堪えて戦う姿に、戦の惨さがにじみ出ていたと思います。史実では為義と義朝は直接戦ってはいない様ですが、為朝、頼賢は義朝と刃を交えており、骨肉の争いがあった事は事実です。
清盛と忠正の戦いでは、まだそこまで悲壮感は無かったのですが、清盛の中に流れる物の怪の血がここでもテーマとして再現されていました。忠正は最後まで白河院の血の怖さを恐れていたのですね。それを指摘されて、俺は平清盛だと叫んだ台詞が印象的でした。彼は心から平家の棟梁であろうとしたのです。
主題とは関係の無いところで、脇役もさりげなく登場していました。長田忠致と源頼政がそうで、彼らは今後の物語で重要な役目を果たす事になります。
火攻めの場面では、信西の台詞が保元物語とは少し違っていました。ドラマでは義朝は愚かなりと言っていましたが、物語では殊勝なりと言っています。この違いは、今後のドラマの展開を考えた伏線なのでしょうか。ちょっと考え過ぎかな。
秀逸だったのは頼長の周章狼狽ぶりですね。何を血迷ったのかオウムの駕籠を後生大事に抱え込み、武士が討たれたの見て腰を抜かす臆病者ぶりで、山本耕史が情けない姿を見事に演じきっていました。ずっと頼長に頭が上がらなかった為義が彼を怒鳴りつけた事は、時代が武士の手に移りつつある事を象徴していましたね。また、オウムを効果的に使っていた事も面白かったです。ただ、保元物語には、あそこまで臆病だったとは描かれておらず、少し可哀想な気もしますね。
一つ判らないのは頼盛を戦から外した事で、一歩間違えれば、彼をして上皇方に走らせる結果になったかも知れない清盛の言葉でした。これは今後彼に独自の動きをさせるための伏線なのでしょうか。そこまで追い詰める必要があったのかしらん。
さて、大きな山場が過ぎ、次回は戦後処理が描かれます。待っているのは源氏と平家の悲劇ですが、どう描かれるのか楽しみに待ちたいと思います。特に信西の演出には注目ですね。
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コメント
山本耕史とオウム、良かったですね。
笑えるやら、泣けるやら。
次週の予告でもチラッとオウムが出てたような?
投稿: zuzu | 2012.05.28 10:21
zuzuさん、
あの演出は秀逸でしたね。
悪左府にとっては、唯一心を許して話せる相手だったのかしらん。
鋭すぎた人の悲劇かな。
次週もオウムは出て来る様ですね。
どんな演出なのか楽しみです。
投稿: なおくん | 2012.05.28 20:30