平清盛 第9回 「ふたりのはみだし者」
(薄物を被って市井を徘徊する雅仁親王。)
(初めての子が生まれた清盛。)
(喜びに沸く平家一門。)
(宴で盛り上がる清盛の館。そこに現れた家盛。家盛と仲良く二人で呑む清盛。)
(璋子の屋敷。一人琴を弾く璋子。)
(崇徳帝の御所。即位から15年経っても、鳥羽院に疎まれ続けている崇徳帝。子が出来ない事を苦にする中宮聖子。孤独をかこつ崇徳帝。)
(市井で無頼の生活を続ける雅仁。その親王を御所に連れ戻し、苦言を呈する乳父の通憲。通憲に、自分の乳父母になったのは博打だったのだろうと雅仁。見抜いておられると感心する通憲。得子の寵愛が深まっている、そんな事を言っている場合かと妻の朝子。)
(舞え舞え蝸牛と今様を歌う雅仁。そんな親王を見て、帝になどなれるものかと朝子。)
(清盛の下を訪れている祇園女御。清太と名付けられた子を抱く清盛を見て、逞しくなったという女御。彼女は都を出て古里に帰ると言い出します。白河院がまき散らした災いの種が、あちこちで芽吹きだしていると女御。)
(清盛と双六の盤を挟みながら、賽の目次第で流れが変わると女御。)
(相模。正清と木登りをしている義朝。その彼の下に現れ、土地を荒らす隣の荘園の者どもを退治するのに、義朝の力を貸して欲しいと頼む三浦義明。退治した暁には、義朝に従うと誓う義明。)
(璋子の御所を警護する清盛と教清。その教清に声を掛ける璋子。帝の為に歌をうたってやって欲しいと璋子。帝が自分を離さないのは、歌の為だけではない。孤独な帝をどう思うかと璋子に問う教清。何も答えられない璋子。)
(教清の家で呑む二人。教清から崇徳帝は白河院と璋子の間に出来た子供らしいと聞く清盛。それが鳥羽院が得子を寵愛する原因だと教清。お前は何がしたいと清盛。帝を救いたい、そのために璋子に目を覚まして欲しいのだと教清。)
(保延5年5月。男子を産んだ得子。)
(鳥羽院に、子が出来た祝いの品を献上する清盛。どこか不機嫌そうな鳥羽院。鳥羽院が去った後、その理由を家成に聞く清盛。その訳は言わず、得子が開く祝いの宴に出る様に勧める家成。)
(内裏。教清に歌合わせの日延べを告げる帝の近臣。御簾越しに見つめ合う教清と崇徳帝。)
(得子の宴の場。宸殿の内外に控えた殿上人や北面の武士たち。そこに子を抱いて現れた徳子と鳥羽院。躰仁だと子を紹介する鳥羽院。)
(教清を呼び、祝いの歌を詠めと命ずる得子。ではと一首詠み始める教清。)
(瀬をはやみ 岩にせかかるる滝川の 割れても末に 逢はむとぞ想ふ)
(それは崇徳帝の歌でした。なぜこの場にと問う得子に、この場に来る事が出来ない崇徳帝も躰仁親王の誕生を祝っている、いつか逢いたいという心を表した歌であり、この場に相応しいと教清。そこに笑いながら現れた雅仁。なぜと問う鳥羽院に、兄らしい恨み深き歌だからだと雅仁。)
(躰仁を抱く雅仁は、赤子の頬をつねって泣かせます。戯れが過ぎると鳥羽院。自分の戯れなど可愛いもの、鳥羽院と得子の戯れこそ国政を揺るがす問題だと雅仁。得子に国母になりたいのたろうと言い、笑い転げる雅仁。私は国母になどなりたくない、ただこの福々しい女に地獄わ味あわせたいだけだと璋子に言い放つ得子。白河院との密通によって鳥羽院を傷付けながらそれを何とも思っていない、何もかも無くさなければこの女は目を覚まさないのだと得子。もう良いと遮る鳥羽院。自分には人をいとおしく思うという気持ちが判らないのだと涙ぐむ璋子。ただ法皇様のおおせのままにと繰り返す璋子。これがあなたの妻、そして私の母だと笑い飛ばす雅仁。)
(笑いながら去っていく雅仁。気分が悪いからと言って帰っても良いかと問う頼長。こんな面白い宴は初めてだ、いつでも摂関家は力になると言って去って行く忠実。後に従う忠通と頼長。泣き続ける璋子。悲痛な表情で一点を見つめ続ける鳥羽院。)
(庭に残った清盛と通憲。これが皇子の誕生を祝う宴か、誰も彼も子を己の道具としか思わない、人の痛みも判らない者たちによってこの国は動かされていたのかと吐き捨てる清盛。それがこの国の今だと通憲。通憲もかと噛みつく清盛。雅仁が帝になる目に掛けて乳父となったと通憲。そんな事をと叫ぶ清盛。きれい事だけでは政は出来ないと通憲。)
(雅仁こそが、王家に渦巻く積年の鬱屈から出た膿、全ての歪みを抱え込んだ毒の巣だと通憲。この国を語るのなら、あの人を知らなければならないと通憲。そこに雅仁が姿を消したと知らせてくる朝子。すぐに探しに行くと通憲。)
(夜、得子の居室。今も璋子をいとしく思っているのかと得子。なぜかは判らない、しかし、愛しく思う程に傷付けたくなる、そして傷付ける程に愛しく思うのだと鳥羽院。涙ぐむ得子。)
(一人庭に佇む璋子。そこに現れた教清。あなたが人を傷付けるのは、あなたが傷ついているからだ、しかし心の奥底には人をいとしく思う心が眠っているはずと教清。その空っぽの瞳の奥に誰も見た事が無い美しいものが宿っているのが私には判ると言いながら、璋子に近付く教清。そして、跪いて璋子の手を取ります。何をすると振りほどこうとする璋子。これが人をいとしいと思う気持ちですと言いながら、璋子を抱きしめる教清。教清に顔を埋める璋子。)
(都大路。雅仁を捜す清盛。そして道ばたで、ぼろぼろの衣をまとった親王を見つけます。通憲の言うとおり、ばくちは損をする様に出来ているとつぶやく親王。)
(清盛の館。着替えを済ませた親王。ひれ伏す清盛。物珍しげに部屋を見渡す親王。度を超した戯れの訳を聞く清盛。白河院の落としだねとはそなたであろうと親王。人は生まれてくる事が博打、負けて損をするのが大方の成り行きだと親王。生まれは変えられなくても、生き方は変えられる、自分は武士となって良かったと思っていると清盛。途方もない負け惜しみだと笑い飛ばす親王。その笑い声は、赤子の声に聞こえると清盛。)
(双六盤を持ち出し、負けた者は勝った者の願いを一つ必ず聞くのだと持ち掛ける親王。受けて立つ清盛。そこに現れた清太。向こうにいっておれと清盛。構わないと親王。そして、自分が勝ったらこの子を貰うと言い出します。そんな事は聞けないと清盛。そなたが負けなければ良いのだと親王。)
(合わせて10以上の目が出なければ自分の勝ちだと親王。許しして欲しいと願う清盛。ならぬと親王。横から竹筒を取り、賽を振る清太。出た目は6と4でした。10が出たと言って、清太と二人で駒を進める清盛。邪魔をしおってと、盤を崩す親王。せっかく楽しんでいたものを、幼子であっても許さぬと言って、盤を振り上げる親王。清太を庇い、負けた者は勝った者の言う事を聞くという約束だと叫ぶ清盛。そして、この先清太に害をなすというのなら、その命貰い受けると言って親王に短刀を向けます。清盛を睨み付けたまま、双六盤を投げ捨てる親王。)
(親子の絆など脆いものだと親王。平氏は王家とは違うと清盛。だが、そなたにも王家の血が流れていると親王。そして清盛の手を握り、きっといつか現に生きるもののけの血がうずく時が来ると言って、笑いながら立ち去ります。)
今回は雅仁親王の登場が描かれました。雅仁親王は、ドラマの最後にもあった様に後の後白河天皇となった人で、若い頃は今様に狂っていた事で知られます。雅仁親王は鳥羽院の第4皇子で、崇徳帝の他にあと二人の兄が居たのですが、一人は盲目、一人は自力では寝起きもままならないという身体障害者でした。そして、崇徳帝に子が出来ない事から、帝位に就く可能性も持っていたのですね。しかし、躰仁が生まれた事で、ほぼその目は無くなりました。この保延5年の時、雅仁親王は12歳だったのですが、どうにもこのドラマは役者の実年齢と史実の年齢が合わなくて困まります。それにしても、満11歳の子供にしては言う事がませすぎているという気もしますね。
それはともかく、帝位に就く可能性がほぼ無くなった雅仁親王は今様に狂い、その稽古に寧日が無かったと言われます。後には今様の上手な遊女なども近くに置き、そのあまりの遊びっぷりから帝位に就く器量ではないと世間の評判になりました。乳父である通憲でさえ、和漢の間に比類無き暗王であるとこき下ろしていた程なのですね。その筋金入りの変人ぶりを、松田翔太の演技は良く表していると思います。ドラマに描かれた清盛との出逢いは無論創作ですが、ずっと後まで続く因縁の出逢いとしては面白い描き方だったのではないでしょうか。
一方、璋子と得子の間も酷い事になって来ました。いくら何でも、あれほどあからさまに敵意を表すという演出はどうなのでしょう。常識が通じない王家という設定ではあるにしても、仮にも相手は国母なのですからね、失礼なんて言うどころではありません。判りやすくしたいという事なのかも知れませんが、あまりに無茶な演出ですよね。そして、サディスト気味の鳥羽院は、歪んだ愛情を璋子に感じていたのでした。この苦悩振りも見所の一つなのですが、実際には鳥羽院は得子を寵愛する様になった後も璋子には気を遣い、熊野詣に璋子を伴うなど大切にされていた様です。奔放な白河院に比べれば、はるかに常識人だったと言えるのでしょうか。
ちなみに、崇徳帝は全く無力な天皇であったという演出になっていますが、必ずしもそうでは無かったという見方もある様です。例えば、得子が鳥羽院の寵姫となった時、それを不快と思った崇徳帝は、得子の親族を次々と失脚させるという報復を行っています。得子に対するあからさまな嫌がらせなのですが、これに対して鳥羽院は口を出す事が出来なかった様ですね。つまり、院政下にあっても成人した天皇の権力は強いものがあり、単なるお飾りでは無かったという事の様です。天皇が子供の間はまた別だったでしょうけどね。
そして、もう一人、教清が大変な事になっています。なんと言葉巧みに璋子に近付いて抱きしめてしまったのですが、この状況が史実であるかどうかという見方は二つに分かれます。というのは、はっきりと書かれたものは無いのですよ。ただ源平盛衰記に、教清の出家の原因として「言うも恐れのある上臈」との恋が原因だとあり、その相手が前後の状況から見て璋子であるという説が有力なのですね。もっとも、源平盛衰記以外にこれを書いたものは無く、史実とは異なるという見方もあって、本当の事は判らないというのが実情の様です。このあたりは来週に描かれる様ですね。あまり書くとネタバレになってしまいそうなのでこれ以上は書きませんが、ドラマとしてどんな展開を見せてくれるか楽しみにしているところです。
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コメント
>役者の実年齢と史実の年齢が合わなくて困ります
そこに突っ込み入れるのもまた一興、と思って最近は見ています(笑)
しかしもう少し若さを出す演技をしてくれてもいいものを。
本の年齢設定自体が上げられているのかしら?
でも雅仁親王は元服前だからそれは無いか…
北条時宗の頃はまだ元彌さんが頑張って17歳っぽく若作りしてたのですけどね。(笑えたけど)
すみませんこんなコメントで。
松田翔太好きなのでそのへん中心に見ています。
いきなり野太い声で「舞え舞えかたつむり♪」を歌い出した時はなっちゃんのCMかと思いました(笑)
投稿: まきぼう | 2012.03.05 18:44
今回も、面白かったです。
私 本当に歴史音痴だったのに、こんなにはまってしまうなんて。最近 NHKで平安時代や源氏物語を取り上げた番組をやっていました。それもめちゃ面白くて。
源氏物語は長くて難しそうですので、関連マンガあたりから 入門してみようかと思います。お勧めなどあったら 教えていただきたいです。
投稿: Atsuko.F | 2012.03.05 19:18
まきぼうさん、
松田翔太の雅仁親王は髪型をみずるにしていたので、
一応童形という事にはなっていました。
でも、どう見ても無理がありすぎますよね。
この辺りは、前の江の時からそうなのだけど、
やはり年齢相応の役者を使って欲しいです。
でも、松田翔太の演技自体は良かったと思います。
私、松田優作のファンだったもので、
どうしてもかぶってしまうのですけどね。
投稿: なおくん | 2012.03.05 22:13
Atsuko.F さん、
平安時代も嵌ると面白いでしょう。
それに京都が必ず絡むので、興味倍増です。
ただ、源氏物語だけは苦手なのですよ。
以前に読みかけた事があるのですが、
途中で挫折してしまいました。
どうしても光源氏に感情移入が出来なかったのですね。
でも、漫画から入るのは良いかも知れません。
私ももう一度挑戦してみようかな。
投稿: なおくん | 2012.03.05 22:20
あっ、私も翔太の演技自体は良かったと思います。
以前はどっちかっていうと
(表情などは別として)セリフ読みはあんまり上手くない人かなと思ってましたが
雅仁さんは異端児っぽい迫力があって良かったですね(´∀`)
お父さんの面影は、お兄さんの龍平さんのほうが濃いような気がします。
翔太はちょっと異質なかんじかなぁ
すみません、個人的な話ばっかりで…
投稿: まきぼう | 2012.03.06 12:42
歴史好きな方でも 苦手なのとかあるのですね。
友達から「あさきゆめみし」というマンガを借りる事にしました。ワクワク!
投稿: Atsuko.F | 2012.03.06 14:48
まきぼうさん、
確かに龍平の方がお父さん似かも知れないですね。
でも、翔太だけを見ていると、やはり面影が宿っていると感じます。
後白河天皇という重要な役を担っていくのですから、
これから先は是非頑張って好演技を見せて欲しいですね。
投稿: なおくん | 2012.03.06 22:54
Atsuko.F さん、
やっぱり得意な分野というのがあって、
私のメインは幕末ですね。
次いで、戦国と源平時代となります。
そして、源氏は駄目でも枕草子は面白いと思うから、
自分でも不思議です。
漫画が面白くて、源氏の世界に入り込めると良いですね。
投稿: なおくん | 2012.03.06 22:58