龍馬伝46 ~土佐の大勝負~
「土佐藩、高知城。城内に運び入れられる千挺のミニエー銃。その箱を見て何だこれはと問い掛ける容堂候。今に日本中が内乱となる。土佐が生き残るためには必要な武器だと答える象二郎。その武器はどっちを向いて使う気だと問う容堂候。徳川将軍の威光は無く、人心は新しい世を望んでいると答える象二郎。不機嫌そうに、無言で立ち去ろうとする容堂候。あわてて容堂侯を制し、会わせたい者が居る、坂本龍馬というこの千挺の銃を持ってきた男ですと縋る象二郎。象二郎を振り切って立ち去る容堂候。」
「目を閉じて座敷に控えている龍馬。」
「今日は駄目だ、大殿様を動かすのは簡単ではないと言いながら座敷に入ってきた象二郎。薩長はもう待ってくれない、何としてもお目通りを叶えて欲しいと訴える龍馬。判っていると苛立ちを押さえつつ答える象二郎。」
「坂本家。台所で働く乙女達。そこに誰がいませんかという野太い声が聞こえました。お客さんだ、千野さんと声を掛ける乙女。そこに、龍馬が帰ってきましたと現れる龍馬。驚きつつも喜んで飛びつき、糠味噌の付いた手で龍馬の顔をなでる乙女。あまりの臭気に怒る龍馬。出迎える千野。春猪の子鶴井を見て駆け寄る龍馬。権平を見て、無沙汰を詫びる龍馬。子供を抱いて現れた春猪。大騒ぎになる坂本家。」
「仏壇に向かって手を合わせる龍馬。留守中に亡くなった伊輿が心配してくれていたと聞き、位牌に向かって詫びる龍馬。」
「居間。今度戻って来る時は、必ずお龍を連れて来ると約束する龍馬。彼は今度土佐に戻って来たのは、大殿様にお願いをするためだと語り始めます。お前が大殿様に会えるはずはなかろうと驚く乙女達。実は後藤象二郎様のとりなしがあるのだと答える龍馬。藩の参政と知り合いかといぶかる乙女。知り合いと言うか同志と言うかと答えを濁す龍馬。もしかして、大出世したのかとはしゃぐ春猪。どう説明したら良いのかと困る龍馬。その時、訪ねてきた人が居ました。」
「夜、大宴会になっている坂本家。訪ねてきたのは岩崎家の人々でした。機嫌良く踊る弥次郎。龍馬に酌をしながら、弥太郎は藩の役に立っているのかと聞く美和。あいつが土佐商会を引っ張っているのだと答える龍馬。出世したからと言って人様を見下す様な事をしたら私が許さないと美和。弥太郎はそんな者では終わらないと話に加わる弥次郎。自分が日本を支えるという気概を持たなければ侍ではないと気炎を上げる弥次郎。にこやかにうなずいてやる龍馬。酔い崩れる弥次郎。弥太郎は自分というものをしっかりと持っていると言ってやる龍馬。それは褒め言葉かと相好を崩す弥次郎。和やかに続く宴。」
「土佐商会。主任から降りて、一介の職員として夜遅くまで働く弥太郎。そこにやってきた藩士の高橋と森田。彼らは弥太郎が付けていた帳簿を奪い取り、中身を点検します。これは土佐商会の仕事ではないと指摘する高橋達。わしは自分の商売をしている、藩の金を使う訳ではないと言って帳簿を取り返す弥太郎。自分たちはお前が主任を降ろされた事を残念に思っていると意外な事を言い出す高橋達。これからは刀よりも算盤の方が役に立つ時代が来る、その仕事を手伝わせてくれと頼む高橋達。」
「高知城。藩の行く末について議論をする重臣達。どうどう巡りの議論を聞き、やかましいと怒鳴りつける象二郎。」
「龍馬が帰って来たという噂は、一晩で土佐中に広がりました。海岸で龍馬を囲む下士の仲間達。千挺の銃でどっちと戦うつもりかと聞く下士達。徳川だと答える龍馬。ついに幕府を倒す時が来たかと盛り上がる下士達。そこに、坂本龍馬というのはどこに居るのかと言いながらやって来た上士達。」
「高知城。容堂候に、龍馬に会って欲しいと再度頼み込む象二郎。どうしてあの男に会わなければならないのだと怒鳴りつける容堂候。」
「海岸。大殿様に会って何をするつもりか、土佐藩を戦に巻き込むつもりかと龍馬に詰め寄る上士達。薩長と徳川が戦を始めたら、土佐も日和見は出来ないと反論する下士達。跪けと居丈高になる上士達。やめや、と叫ぶ龍馬。」
「高知城。今の世の中の流れを作ったのは坂本龍馬だ、薩長を結びつけ、薩土盟約を成立させたのはあの男なのだと容堂候に訴える象二郎。」
「海岸。砂浜に正座する龍馬。満足げに、お前達も跪けと下士達に命ずる上士達。憤る下士達。突然笑い出した龍馬。下士が上士に跪く、こんなばかばかしい事を土佐ではまだしているのかと言って立ち上がる龍馬。何だとと詰め寄る上士達。一人の男の手を掴む龍馬。」
「高知城。象二郎に向かって、どうしてそれを黙っていたと詰め寄る容堂候。下士の分際で東洋に認められ、脱藩者でありながら次々と大事を成し遂げていく龍馬が妬ましかったのだと苦しげに白状する象二郎。」
「海岸。男と無理矢理握手する龍馬。自分が持ってきたあの銃は、こうしてみんなが仲良く手を繋ぐための銃だと諭す龍馬。手を振りほどいて、尻餅をつく上士。この振る舞いは決して許さないと捨て台詞を残して去って行く上士達。」
「龍馬に会ってくださいと頼む象二郎。その前に座り、一点を見つめている容堂候。」
「太鼓が響く中、高知城の廊下を歩く龍馬。」
「目を閉じて容堂候のお出ましを待つ象二郎。庭先で土下座して控えている龍馬。」
「奥から現れた容堂候。彼は庭先の龍馬に向かって面を上げろと命じます。」
「久しぶりだと切り出す容堂候。勝麟太郎の書生をしていた時に一度会って以来だと答える龍馬。脱藩者だという事を隠して、白々しい事を言っていたと皮肉る容堂候。」
「慶喜公に政権を返上する大政奉還の建白書を書いて貰えないかと切り出す龍馬。それは直訴か、直訴というものは受け入れられなかった時には腹を切らなければならないのだと一喝する容堂候。大殿様が戯れ言だと思われたのなら、ここで腹を切ると答える龍馬。」
「笑いながら、自分の戯れ言で城下に騒ぎを起こしたのを忘れたのか、東洋を斬ったのは自分だと嘘を付いたではないかと言って席に着く容堂候。あれは武市を助けたがったからだ、武市は武士の鑑だったと答える龍馬。あれに切腹を命じたのは自分だ、お前の仲間の下士達を殺していったのも自分だ、難くはないのかと問い掛ける容堂候。下士が上士に虐げられているこの土佐の有様が憎いと叫ぶ龍馬。しかし、母は自分に教えてくれた、憎しみからは何も生まれないと。憎むべきは250年以上続いてきた、この古い日本の仕組みだと言って立ち上がる龍馬。無礼者と言って飛びかかる上士達。大声を出して制止する象二郎。その上で申し訳ないと容堂候に詫びる象二郎。」
「座敷に入り、立ったままで、幕府も藩ももう要らない、この国は新しく生まれ変わらなくてはならない、それが大政奉還だと叫ぶ龍馬。将軍も大名も消してしまうと言うのかと問い掛ける容堂候。はい、武士という身分もおそらく無くなってしまうと答える龍馬。いきり立つ上士達。黙れと制止する象二郎。自分がどれほど恐ろしい事を言っているのか判っているのかと問う容堂候。世の中が変わるという事は、突き詰めて考えれば、自分が言った様になるだろうと答える龍馬。」
「座って容堂を見つめる龍馬。彼はこの国は武士が力で押さえるのではなく、志のある者が議論を尽くして治めていく様になるべきではないのかと訴えます。そして、脇差しを抜いて前に置き、懐から巻紙を取り出し、ここに新しい国の形が書いてある、どうか大殿様のご決断をお願いしますと結びます。」
「立ち上がる容堂候。それを見て、自分も脇差しを抜いて前に置き、ご決断をと叫ぶ象二郎。」
「二人を見下ろしながら、大名も武士も無くなってしまった世の中に何が残るのか答えろと龍馬に問い掛ける容堂候。顔を上げて、異国と堂々と渡り合う日本人が残ると答える龍馬。」
「刀を仕舞えと命ずる容堂候。脇差しを差す二人。立ち去る容堂候。正面を見つめ、涙を流す龍馬。」
「夜、坂本家。夜食を食べながら坂本家の飯が一番だとご機嫌な龍馬。給仕をする乙女達。父が亡くなった年まであと5年だ、自分が死んだら誰がこの家を守るのかと言い出す権平。私が守ると言い張る乙女。彼女を無視して、龍馬に坂本家の家督を継いで貰えないかと頼む権平。今龍馬を止めてはいけないとたしなめる乙女。居住まいを正し、もう少しで大仕事が終わる、その時が来たら必ずこの家に戻って来ると答える龍馬。本当かと確かめる権平や春猪。必ずと約束する龍馬。複雑な面持ちの乙女。」
「夜明け前。坂本家の縁側で酒を飲む龍馬。」
「同時刻、高知城の縁側で酒を飲んでいる容堂候。その傍らには、龍馬が渡した巻紙があります。」
「大政奉還の建白書を出して慶喜公の怒りを買えば、この山内家はお取りつぶしになるかもしれないとつぶやく容堂候。側に控えている象二郎。彼は大殿様が意を決して建白書を出すのなら、それに異を唱える家臣は一人もいないと進言します。杯を象二郎に渡し、酒を注いでやる容堂候。飲み干して返杯する象二郎。武士の世を終わらせるてやるかと語りかける容堂候。」
「別室で建白書を書き始める容堂候。やがて書き終えて、極楽浄土の掛け軸を見つめます。」
「高知城。建白書を載せた三方があります。平伏して礼を述べる龍馬。千挺の鉄砲は9千両で土佐藩が買い上げると宣告する容堂候。ただし、その鉄砲は徳川を撃つ為ではなく、この土佐を守る為の武器だと付け加えます。有り難き幸せとひれ伏す龍馬。」
「立ち上がって龍馬の前に行き、座り込む容堂候。お前はわしがこれを書くと信じていた、それはどうしてだと聞く容堂候。それは大殿様が武市半平太の牢に来たと聞いていたからだと答える龍馬。今の姿と同じように半平太と同じ地べたに座り、お前は良い家臣だったと言ってくれた、半平太は涙を流して喜んでいたと語る龍馬。黙って立ち上がり、部屋を出て行く容堂候。その後ろ姿に向かってひれ伏し、ありがとうございますと礼を言う龍馬と象二郎。」
「三方に乗った建白書を手に取り、頭を下げる龍馬。そして、傍らにいる象二郎に礼を言います。象二郎は立ち上がって、右手を差し出しました。龍馬も立ち上がり、微笑みながら握手を交わします。」
「海岸で海を眺めている龍馬。そこにやって来た乙女。にこやかに迎える龍馬。彼は明日京に発つ、いよいよ正念場だと言います。お前の周りは敵ばかりの様で心配で堪らない、命だけは大切にしろと忠告する乙女。心配ない、大殿様は自分の言う事を聞いてくれたし、象二郎は今や味方だと笑い飛ばす龍馬。そして、全てが終わったら、自分は蒸気船に乗ってお龍を連れて土佐に戻ってくると約束し、かつて乙女達に言った家族を連れて世界を見て回るという夢を語り出します。清国、インドと叫ぶ乙女。アフリカと言いながら砂浜に地図を書き出す龍馬。アメリカと言って小さく線を引く乙女。アメリカはもっと大きいと叫ぶ龍馬。出立は来年の春だ、それままで楽しみに待っていてくれと言う龍馬。ありがとうと礼を言う乙女。」
「早く春にならないかと言いながら海を見つめる龍馬。隙有りと言って棒でその尻を叩く乙女。久しぶりにやるかと言って、ちゃんぱらを始める二人。龍馬の棒を叩き折った乙女。なんという力だと驚く龍馬。いつまでもじゃれ合う二人。」
今回は史実とは全く違う完全な創作(容堂候を説得したのは象二郎。容堂候に関しては龍馬は関与していません。)でしたのでドラマの感想だけになりますが、なるほどここに持ってきたいがための伏線だったのかという謎解きがいくつもありました。このシナリオ作者は半平太への思い入れがとても強いのですね。どう考えても無理があった半平太に会いに来た龍馬のシーンを入れた意図がやっと判りましたよ。
リアリティの無さは相変わらずで、下士に過ぎない龍馬が御前であんな態度を取ったら、乱心者として斬り捨てられてもおかしくはないと思うのですが、それが通ってしまうのが龍馬伝ですね。それに訴えている事があまりに情緒的で、説得力が無い事も気になります。大政奉還=武士の世の終わりというのも飛躍のし過ぎですね。何より、大名も武士も無くしてしまうなどとこの時点で殿様に向かって言ってしまっては、全てがぶち壊しになってしまうのが落ちでしょう。それを怒らない容堂候の度量の大きさには感服しました。この容堂候は結構好きだなあ。
ただし、慶喜公を怒らせたら山内家はお取りつぶしになると言っていましたが、そんな権力が幕府に残っているはずも無く(それをやろうとして失敗したのが長州征伐です)、容堂候の思考の中に入っていたはずもないと思いますけどね。
龍馬の横でじっとこらえている象二郎の演技は光っていました。無茶苦茶な龍馬に対して折り目正しい象二郎という対照も良かったですね。説得力の無い訴え方は頂けないですが、龍馬の暴走を止めずにいる度量の大きさと上士達を押さえる威厳はなかなかのものでした。
最後のシーンは、ほのぼのとしていて良かったです。これも小龍に出会った後のシーンを受けてのものですね。あの回では何だこの子供じみた夢はと思ったのですが、ここまで来るとすぐ後に来る悲劇と対照していとおしく感じました。
少しだけ史実との絡みを補足しておくと、ドラマの中で龍馬に絡んだ上士達が居ましたが、実際にも龍馬を厳罰に処すべきだと当局に迫った上士達が居た様です。何と言っても脱藩という大罪を二度も繰り返した訳ですからね、それに対して何の処罰も与えない藩当局に対して不満を持つ者も少なからず居たという事です。
龍馬が京都藩邸に入れなかった理由の一つには、こうした反対勢力が居た事が挙げられます。直接には龍馬の土佐藩への復籍の手続きが終わっていない事が原因だったのですが、不平分子に拠る意図的なサボタージュがあったのかなという気もしますね。龍馬の敵は国元にも居たと言う事は確かです。
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