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2010.09.05

龍馬伝36 ~寺田屋騒動~

「京都守護職屋敷。隠密から薩摩と長州の間で密約が交わされたらしいとの報告が入ります。そして、その席に土佐の脱藩浪士坂本龍馬が同席していた事が知られました。」

薩摩と長州の間に不穏な動きがある事、その仲立ちをしているのが龍馬である事は、ほぼ幕府側に探知されていました。ただ、ここではあたかも薩摩藩邸の中に隠密が居たかの様な設定になっていますが、そこまでは入り込めていなかった様ですね。

現在判っているのは龍馬のごく身近なところに密偵が居たという事で、例えば桜島丸(ユニオン号)の水夫頭である久太夫という人物がそうでした。この久太夫は後に海援隊士になっており、龍馬とかなり近い位置に居た人物であったと思われます。こんな密偵が他に何人も居た様ですから、龍馬の言動が筒抜けになるのも無理はないと言えるでしょうか。こういう事実を知るとずっと騙され続けていた龍馬が可哀想になってくるのですが、何よりも恐るべきは幕府の密偵網という事ですね。

「寺田屋。弥太郎と龍馬が朝餉を食べています。弥太郎に長州と薩摩の動きを探りに来たのかと聞き、無駄な事をせず土佐に帰れと忠告します。どうしたらよいのかと言う弥太郎に、徳川幕府の世は終わる、幕府の顔色を窺うのはやめろと象二郎に伝えろと告げる龍馬。外国に分け取りにされない様に、この国の仕組みを変えようとしているという龍馬に、薩摩と長州の手を組ませたのかと確かめる弥太郎。世の中がどう変わるかを考えながら進む事が大事だと答える龍馬。」

「寺田屋を後にする弥太郎。あいつに関わっているとろくな事にならないと言い捨てて去っていきます。そんな事は承知の上と答えるお龍。」

この下りに関する弥太郎は完全な創作ですので、ここでは触れません。でも、せっかく出てきたのですから、もう少し面白くしてくれたら良かったのにとは思います。それがこのドラマの楽しみの一つなのですからね。

「三吉慎蔵と祝杯を上げる龍馬。もう京都を離れようと言う慎蔵ですが、小五郎(木戸準一郎)との約束があると言って待つという龍馬。彼は小五郎から密約の裏書きをして欲しいと頼まれていたのでした。このままでは龍馬の護衛という使命を果たせなられないと苦悩する慎蔵に、生涯の友になれそうだと答える龍馬。」

龍馬が盟約の裏書きを頼まれたのは前回に書いたとおりです。ただし、直接二人が会って決めた訳ではなく、一度大阪に下った小五郎が文書にしておきたいと思い立ち、慶応2年1月23日付で長文の手紙を書いて龍馬に依頼したのでした。伏見で襲撃を受けた龍馬がこの手紙を読んだのは2月に入ってからであり、依頼どおりに裏書きを書いたのは2月5日の事でした。

一方、三吉慎蔵と龍馬は、ドラマの台詞にあったとおりに誰よりも信頼しあえる友となりました。これはお龍も含めての事であり、この日3人で生死を共にした事が何よりの絆となったのですね。その後の経過については以前の記事を参考にして下さい。

「お登勢にあと2、3日滞在すると言う龍馬。京を離れた後はどこに行くのかと聞くお龍に、長崎に行く、お尋ね者になってしまったからにはもう京には戻らないと答える龍馬。長崎名物のぽっぺんを土産にやろうという龍馬ですが、そんな物は要らないと言って出て行くお龍。」

「大阪城。なぜ薩摩は兵を出さないと苛立つ慶喜。」

このあたりはドラマの設定ですが、慶喜には薩長の間に動きがあるとは伝わっていない事になっているのでしょうか。慶喜は裸の王様という事になるのかしらん?

「京都守護職屋敷。龍馬を必ず捕らえよと檄を飛ばす容保。」

「京都薩摩屋敷。いつ同盟を世に示すかという小松の問い掛けに、今は伏せておくべきだと答える吉之助。」

「土佐への帰路、龍馬の言葉に思いを巡らせる弥太郎。」

「寺田屋。お龍の事を思いめぐらせる龍馬。」

「風呂に入るお龍。晩酌をするお登勢。その時、表戸を叩く音がしました。お登勢が出てみると、大勢の捕り方がひしめいています。二階の客の名を聞かれ、薩摩藩の西郷小次郎だと答えるお登勢。しかし、捕り方は信用せず、龍馬だろうと決めつけます。」

「店の裏手に回る捕り方。その様子を風呂の中から見たお龍。」

「お登勢を押しのけ、店内に乱入する捕り方。」

「二階で不穏な気配を感じ取った龍馬と慎蔵。そこに合わせ一枚をまとったお龍が駆け込んできます。彼女から捕り方に囲まれていると聞いた龍馬は、迎え撃つ決意をし、拳銃を取り出します。そして、慎蔵に襖を外させる一方で、お龍には下がっている様に言いますが、自分も戦うと言って聞かないお龍。龍馬は自分の着物をお龍に掛けてやり、今から薩摩の伏見藩邸に知らせに行ってくれと頼みます。死なないでくれと願うお龍に約束すると言って手を握る龍馬。」

「捕り方が溢れる店先。そこに度胸を決めて現れたお龍。上に坂本が居るだろうと聞かれ、とても強い侍なら居ると答えるお龍。業を煮やして捕らえろと命ずる与力。放せと暴れるお龍を見て、助けに入るお登勢。そのお登勢に今から薩摩藩邸に行くと言い捨てて飛び出していくお龍。」

「自分がやつらを押さえるから、その隙に逃げろという慎蔵。自分だけ逃げる訳にはいかないと答える龍馬。そこに踏み込んできた捕り方達。伏見奉行林肥後守の上意であると凄む捕り方。天井に向かって威嚇射撃をする龍馬。それをきっかけに乱闘になります。槍を振るって奮戦する慎蔵。ピストル片手に素手でやり合う龍馬。」

「ピストルの威力を見せて押し切ろうとする龍馬ですが、容易な事では脱出出来そうにはありません。再び床に向けて威嚇射撃を行う龍馬。しかし、かえって踏み込んでくる捕り方。龍馬は与力の一人を捕まえ、ピストルをつきつけて人質に取ります。」

「じりじりと階段を下りつつ、三度目の威嚇射撃をする龍馬。なんとか店の入り口までたどり着きますが、表には捕り方が充満していて逃げられそうにもありません。ここで与力を突き飛ばし、再び乱戦に入る龍馬達。戦う内に左手の親指の付け根を斬られた龍馬。龍馬を逃がそうと敵を引き付ける慎蔵。わずかな隙を突いて障子窓を破って飛び出す龍馬。後に続く慎蔵。」

「暗がりの中、伏見の町中を逃げる龍馬と慎蔵。後を追う捕り方。出血が酷く、倒れる龍馬。龍馬を助けて走り続ける慎蔵。」

「薩摩藩邸に向かって駆けるお龍。」

「材木小屋に逃げ込んだ龍馬と慎蔵。龍馬の傷の応急手当をしてやる慎蔵ですが、龍馬は動けなくなってしまいます。もはやここまでと腹を切ろうと言い出す慎蔵。腹を切るのはいつでも出来る、薩摩藩邸に行けと答える龍馬。もし途中で捕まったら覚悟するという龍馬の言葉を聞き、必ず戻って来ると言って飛び出す慎蔵。」

「薩摩藩邸の門前にたどり着き、必死になって開門を求めるお龍。やっと開けてくれた門番に、坂本さくんを助けて下さいと懸命に訴えるお龍。事情がわからず彼女を邪険に扱う門番。土下座して助けを請うお龍。」

「薩摩藩邸へ向かう途中、捕り方の一隊と遭遇した慎蔵。槍を持たない彼は、竹竿を武器に捕り方と渡り合い、鬼神の働きを見せて活路を切り開きます。」

「材木小屋。のたうつ様に屋根の上に移動する龍馬。もう星も見えなくなった彼は、木戸に約束が守れないかも知れないと謝り、西郷に後を頼むとつぶやきます。そしてお龍の名を連呼する龍馬。」

「薩摩藩伏見藩邸。かがり火が炊かれ、ものものしい雰囲気の中座り込んでいるお龍。」

「薩摩藩京都藩邸。龍馬が寺田屋で襲われたとの知らせを聞き、伏見に兵と医者を送り込め、坂本を死なせるなと命ずる吉之助。」

「薩摩藩伏見藩邸。様子を見に行っていた藩士から、龍馬は寺田屋から逃げたしたらしいと報告を聞く大山彦八。しかし、龍馬の安否までは判りません。その時、慎蔵が駆け込んできました。龍馬は濠川沿いの材木置き場にと言う彼の言葉を聞き、助けに行くぞと駆け出す彦八達。龍馬を連れて帰るとお龍に言い捨てて、駆け出す慎蔵。呆然と見送るお龍。」

「材木小屋。出血が酷く、虫の息の龍馬。その時、捕り方が材木小屋にやって来て、血の跡があると叫びました。この辺りに居るはずと辺りに散って行く捕り方。半ば覚悟を決め、兄、父、母に謝る龍馬。」

「材木小屋に駆けつけた慎蔵と彦八達。棚の上に居たはずの龍馬が居ない事にあせる慎蔵ですが、すぐに屋根の上に居る事に気付きます。」

「薩摩藩伏見藩邸。戸板に乗せて運ばれてきた龍馬。ぐったりとした龍馬を見て、目を開けてと叫ぶお龍。」

今回の展開は、緊迫感があって面白かったです。ほぼ史実に沿った流れになっていましたし、慎蔵が格好良かったですね。またお龍の演技が真に迫って素晴らしかったです。

史実の展開は以前に書いているのでここでは省略しますが、ドラマとの最大の相違点を上げるとすれば、龍馬が捕り方を殺さなかったという事です。龍馬が捕り方を殺めた事は彼の手紙によっても明らかであり、その事が後に近江屋での襲撃に繋がるのですが、このドラマではあくまで龍馬の手を汚す事はしない様ですね。

さらに上げれば、慎蔵は薩摩藩邸への道中で大立ち回りはしていないという事もありますが、今回の展開ではそれも有りとしても良いでしょう。

最も違和感を感じたのは、材木小屋まで来た捕り方が中を改めなかった事で、普通は一通り見るものではないかしらん。その後、慎蔵達が来た時に誰も居なかったというのも不自然ですし、龍馬を戸板で運んで来たというのもあり得ないでしょうね。そんな事をすれば絶対に見つかりますよ。なぜ史実の様に船を使わなかったのでしょうね。

など不自然なところはいくつもありますが、まずまず楽しめたので今回はスルーとする事にします。

なお、NHKのホームページに依れば、最近伏見奉行所が作成した文書が発見されたのですが、そこからは幕府の狙いは龍馬が所持していた文書を押収することが目的だったと読み取る事が出来る、彼を捕らえる事は二の次だったのではないかと推測されています。実際、龍馬が逃げた後の奉行所の動きは緩慢であり、特になぜ薩摩藩邸の周囲を押さえなかったのかはずっと疑問に思っていました。この説が正しいとすれば、奉行所としては薩摩藩と正面衝突する危険を冒してまで龍馬を追いかける意思は無かったという事になりますね。

これはまだ一つの説に過ぎず、事実であると証明された訳ではありません。素人目で見ると、龍馬を逃がした伏見奉行所が、京都所司代に対する言い訳として文書を押さえた事を強調しているのではないかという気もしますしね。しかし、示唆に富んだ説である事には違いなく、今後さらに深く研究される事を期待したいです。

参考文献:「龍馬 最後の真実」 菊池 明、「坂本龍馬」 松浦 玲、「坂本龍馬 海援隊始末記」 平尾道雄、「龍馬の手紙」宮地佐一郎

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コメント

確かに、今回はいい感じでしたね。
私も家事の手を止めて、見入っていました(^^)

投稿: zuzu | 2010.09.06 11:23

予告で大怪我するのがわかっていても
ハラハラしながら見てしまいました(^◇^)

投稿: Milk | 2010.09.06 17:47

zuzuさん、

相変わらず突っ込みどころはいくつもあるのですけどね、
今回は時代劇と割り切って見ていたおかげでやや過剰な演出も許せる範囲だと思えました。

特に三好慎蔵が格好良かったです、はい。

投稿: なおくん | 2010.09.06 21:23

Milkさん、

本当は両手に傷を負ったのですけどね、それでは演技が大変だったのでしょうか。

私的には、今回はお龍が光っていたと思います。
真木よう子さん、良い演技をしましたね。

投稿: なおくん | 2010.09.06 21:28

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