龍馬伝33 ~亀山社中の大仕事~
「長州藩。諸隊を訓練する小五郎の下に、薩摩が軍艦と銃を用意すると約束したという龍馬の手紙が届きました。龍馬とは面白い男だと微笑む晋作。聞多に金を用意しろと命ずる小五郎。長崎に急ぐ龍馬。」
龍馬から薩摩が承知したという伝言が下関にもたらされたのは、慶応元年7月の事でした。ただし、龍馬が長崎に来たという資料は見あたらない様です。もっとも、本人はこの頃どこに居たのかという記録も無い様なので、長崎に行ったと言い張るのも出来なくは無いですね。普通言われるのは、京都に居ただろうという事です。
「長崎、小曽根邸。商談で訪れているグラバーに、薩摩が軍艦1隻とミニエー銃千丁を買いたがっっているともちかける龍馬。しかし、この場に薩摩藩の人間が居ない事に不審を持つグラバー。彼は、商人を甘く見るなと言い捨てて、去ってしまいます。金の出所の判らない限り、船を先がしてくれる商人は居ないと忠告を与える乾堂。」
この商談に関しては、龍馬は直接には関わっていない様です。この商談がまとまった後の日付(9月9日)で京都から乙女に宛てて書いた手紙の中で、龍馬は長次郎達の事について書いているのですが、単に(鹿児島から)長崎に出稽古に行っていると書いてあるのみで、社中の活躍については一切触れていないのです。つまりは、交渉の過程は知らなかったという事であり、龍馬はこの仕事を社中に任せていたという傍証になりそうですね。
「京都、薩摩藩邸。幕府を警戒し、表に出る事はしないと決めた吉之助。」
吉之助は長崎には行きませんでしたが、実際には小松帯刀が長崎に居た様です。門多と俊輔はこの帯刀に会い、その上で商談を進めた様ですね。ですから、薩摩藩は一切表に出ないという事は無かったはずです。
「長崎、奉行所を訪れているお元。最近は薩摩に関する知らせが無い、龍馬が長崎に戻ってきていると聞かれますが、店には来ていないと言って帰るお元。」
「奉行所で貰ったわずかな金を貯めるお元。」
「観音像にも似たマリア像を拝む、お元達隠れキリシタン。」
「引田屋のお座敷に出るべくやって来たお元。入り口で手紙を見ながら泣いている妹芸妓が居ました。借金を全部返したら父の下に帰れると励ますお元。その時、別の料理屋から出て来る龍馬達に気づきました。」
「これで断られたのは六軒目だと弱る龍馬達ですが、諦める訳にはいかないと次を目指します。その後を付けるお元。その時、一軒の家から女が転がり出てきました。その後から飛び出してきた男。彼が言うには、女の荷物からロザリオが出てきたのでした。奉行所に突き出すと言って女を引き立てて行く男。思わず飛び出しそうになり、惣之蒸と長次郎に隠れキリシタンに関わってはいけないと引き留められる龍馬。その様子を見て、目を瞠るお元。」
「亀山社中。所在なげにビードロを吹く龍馬。蔵太から、太郎がカステラが売れたと喜んでいると報告を聞いています。大事な事を隠していては、どうしてもばれてしまう、あの隠れキリシタンの様にと浮かない龍馬。」
「グラバー邸。お慶の誕生日を祝うパーティーが開かれています。その席で舞いを披露するお元。一休みをすべく控え室に戻ったお元は、十字架がある事に気づきました。周囲に人の目が無い事を確かめ、十字を切って拝むお元。背後からその様子を見ていた龍馬。龍馬に見られていた事に気づいたお元。」
「龍馬の不法侵入に気付いた警備員。銃を突き付けられながら、大声でグラバーを呼ぶ龍馬。あきれた様に出て来るグラバー。その彼の前に手をついて、一人の日本人として話を聞いて欲しいと頼む龍馬。」
このドラマで気になるのは、やたらと土下座をする事ですね。頭を下げさえすれば全てが進むというのが通り相場になっていますが、何とも安っぽい設定だという気がします。それに、秘密にしなければならないこの話を、衆人環視の中で切り出すというのも不自然極まりないと思います。
先に書いた様に長崎には薩摩藩の家老である小松帯刀が来ており、長州藩の担当者もまた帯刀と協議の上で商談を進めています。その間を取り持ったのが亀山社中となるのですが、この様にちゃんと段取りを踏まなければ物事が進むはずはないですよね。
「やむなく、10分だけ時間を与えたグラバー。世の中の流れを自分で変える事が出来れば、大もうけが出来ると切り出す龍馬。そこにお慶も入ってきました。龍馬は二人を前に、名義は薩摩だが、金を出すのは長州だと語り始めます。彼は薩摩と長州が手を結び、幕府に取って代わるのだと切り札を出したのでした。」
「パーティー会場で、龍馬の様子を気にしているお元。」
「もし船を用意出来れば日本の仕組みが変わる。それは日本を守る為だと語る龍馬。日本を守ると聞き、興味を持った様子のグラバー。あくまで金儲けの話を持ってきたのだとビジネスライクな龍馬。、彼は長州は幾ら金を用意出来るのかとお慶に聞かれ、15万両と答えます。彼はその証拠の品として、小五郎が書いたという証書を見せました。」
「自分が間に入る、オールトならすぐに乗ってくると請け合うお慶。慌てて割って入り、龍馬の取り分はと聞くグラバー。私心があっては志とは言えない、この話は日本を守るためであり、自分は一銭も要らないと答える龍馬。」
亀山社中が手数料を取らなかったかどうかは判りませんが、彼らの目論見としては、手に入れた船には社中の人間が乗り込み、彼らが主体となって運用するつもりでした。実際に、一度は長州藩との間でその様な取り決めが交わされているのです。この取り決め自体はすぐにご破算となりましたが、全くのボランティアなどでは無く、あくまでビジネスとして事に当たっていたと言えそうです。
「お慶から証書を奪い取り、船と銃を用意すると約束するグラバー。そのグラバーに抗議するお慶。お慶を相手にせず、部屋から出て行くグラバー。」
「興奮した様子でパーティー会場に戻ってきたグラバー。その彼に、龍馬の様子を聞くお元。もう帰ったと言って相手にしないグラバー。」
「急いで亀山社中に戻って来た龍馬。彼はグラバーが引き受けてくれた事を仲間に報告します。吉報を受け、喜びに溢れる亀山社中。龍馬はこれから先の交渉の担当者として、惣之蒸と長次郎を指名しました。これは亀山社中の大仕事だと宣言する龍馬。」
「グラバー邸で始まった商談。長州からは聞多と俊輔がやって来ました。英語が上手いと言われ、自分たちはイギリスに留学していたと答える聞多達。留学と聞いて、羨ましそうなそぶりを見せる長次郎。」
「グラバーが勧める船のカタログを見て、20年は古い外輪船だとはね付ける長次郎。グラバーにスクリュー船は無いのかと聞くと、別のカタログを出してきました。少し古いが、これなら軍艦に使えると鑑定する惣之蒸。3万9千両と聞き、それならボイラーを新品と交換してくれと交渉する長次郎。しぶしぶ了解するグラバー。この船にすると決める長次郎。なかなかの目利きだと褒めるグラバー。笑顔で彼と握手を交わす長次郎。」
「大阪、大和屋。長次郎からの手紙を、息子の百太郎の側で読む徳。手紙には、初めて大仕事を任された事、聞多達から聞くイギリスの話が面白い事、親子3人で留学がしたい事などが綴られていました。」
「引田屋。大詰めを迎えた商談。船と大筒込みで3万6千両で交渉がまとまりました。喜ぶ聞多達。ほっとしてへたり込む長次郎。」
「廊下で番をしていた龍馬。部屋から出てきた惣之蒸は長次郎の仕事を褒め、自分の出番が無くなってしまったと嘆きます。そのうちに惣之蒸にしか出来ない出番がやって来ると慰める龍馬。その時、お元がやって来ました。部屋に居るのは長州の侍かと言って、龍馬を誘い出すお元。」
「とある一室に龍馬を引き入れるお元。かの女は長州人が居る事を奉行所に訴える事も出来ると切り出します。なぜ自分を呼び出したと聞く龍馬。クラバー邸で見た事を黙っていてくれたら、自分も奉行所には行かないと取引を持ちかけるお元。やはり耶蘇だったのかと冷ややかな龍馬。」
「言う事を聞いて貰えないなら、今から奉行所に駆け込むと部屋を出て行こうとするお元に、侍を舐めてはいけない、部屋を出て行く前にこの刀がお前に届くと脅す龍馬。しかし、脅しだけで刀を納め、黙っていてやると約束してやります。」
「なぜ見つかれば惨い目に遭うと知りながら異国の神を信ずると聞く龍馬に、自分は親に捨てられた、耶蘇は自分の全てである、この世の事は全て与えられた試練であり、乗り越えれば天国に行けるのだと答えるお元。」
「奉行所の隠密をしているのは金の為かと聞かれ、ここに居る芸妓はみんな親に売られた者ばかり、早く金を貯めてここから逃げ出したいと願っているのだと食ってかかるお元。お前ほどの売れっ子なら、すぐに金は貯まるだろうと言う龍馬に、自分が逃げたしたいのはこの国だと吐き捨てるお元。彼女は再び取引を持ちかけます。その取引に乗ってやる龍馬。彼は、お元が逃げ出したくなる様なこの国を変えてやると約束するのでした。」
龍馬が隠れキリシタンについてどう思っていたかについては判りません。いわゆる船中八策にも信教の自由は出てこないですしね。
明治維新によって国が変わったのは確かですが、信教の自由が認められたのは明治6年になってからの事でした。明治初年には、新政府の手によって浦上四番崩れと呼ばれる隠れキリシタンに対する弾圧が行われています。この事件の担当者だったのが井上聞多、そして最終的な結論を下したのは桂小五郎でした。当時の最先端を行く政治家達でさえ、隠れキリシタンに対する偏見と恐れを持っていたのですね。
この弾圧の酷さは旧幕府の時以上だったと言われ、もしお元が本当に隠れキリシタンであり、龍馬から国を変えてやると約束をされていたとしたら、とんでもない裏切りを受けたと思った事でしょう。下手な設定は止めた方が良いと思うのですが、そのあたりのフォローはあるのでしょうか。
「グラバー邸。契約書を交わすグラバーと門多達。改めて長次郎に礼を言う聞多達。長次郎の仕事振りを褒めるグラバー。」
長次郎の仕事ぶりについては、長州侯に拝謁して感謝状を貰った事、また長州侯から薩摩侯へと出した礼状の中にその名が記されている事からも、とても素晴らしいものであった事が伺えます。長次郎にとっては、まさに絶頂と言って良い時でした。
「小五郎と吉之助相手に、交渉がまとまった事を知らせる手紙を書く龍馬。」
「坂本、とつぶやく吉之助。」
「感慨にふける小五郎。軍艦が手に入ったと檄を飛ばす晋作。」
「砂浜で大の字になり、仕事を終えた満足感に浸る龍馬。」
参考文献:「龍馬 最後の真実」 菊池 明、「坂本龍馬」 松浦 玲、「坂本龍馬 海援隊始末記」 平尾道雄、「龍馬の手紙」宮地佐一郎
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