龍馬伝32 ~狙われた龍馬~
「慶応元年6月、吉之助に合うべく京都にやって来た龍馬と慎太郎。しかし、薩摩藩邸に居た吉之助は会ってくれませんでした。仕方なく藩邸を後にする二人。慎太郎は先斗町のなじみの芸妓の所に隠れると言い、龍馬は寺田屋を目指します。」
龍馬と慎太郎が吉之助を追って京都を目指したのは史実にあるとおりです。京都に入ったのが何時なのかは判っていませんが、前後の状況から考えて慶応元年の6月中の事であっただろうと推定されています。
「寺田屋。久しぶりに訪れた龍馬に驚くお登勢。それは新選組の近藤が来ているからでした。一度は帰ろうとした龍馬ですが、お龍が近藤の相手をしている、近藤の目当てはお龍だと聞き、気が変わります。」
「大胆にも近藤の居る部屋の襖を開ける龍馬。彼は薩摩藩士西郷伊三郎と名乗り、吉之助の遠縁に当たると言って近藤の警戒を解きます。酒が足りないと言ってお龍を下がらせます。」
龍馬が寺田屋を定宿にしたのは何時なのかについては元治元年説と慶応元年説があるのですが、この年の9月9日付けで乙女に宛てた手紙には「ふしみ宝来橋寺田や伊助の下に荷物を送ってくれ」と記されており、これが龍馬の書簡における寺田屋の初出である事から慶応元年説を裏付ける資料とされています。また、同じ手紙の中に西郷伊三郎と名乗っているとも書かれており、ドラマはこの事を踏まえて変名を名乗らせているのですね。
「巧みに近藤を持ち上げる龍馬ですが、なぜ薩摩は長州攻めをしぶるのかと聞かれて調子が変わります。なぜ新選組は幕府の言われるままに志士を斬るのか、それではただの飼い犬と変わりないではないかと近藤を責める龍馬。それを聞き、思わず刀を引き寄せる近藤。それより早く、近藤に当て身を食らわせて気絶させた龍馬。」
近藤がお龍に執心していたという説は聞いた事が無く、たぶん創作でしょうね。新選組と寺田屋の関係については、お龍の回顧談の中に出て来る話があります。
近藤は寺田屋を新選組の定宿にしようと狙っていました。たぶん勤皇派が出入りするこの宿を押さえておけば、なにがしかの牽制になると考えていたのでしょう。ところが登勢が言う事を聞かない為、彼女を縛り上げて脅しに掛かりました。この時、お龍が間に入って詫びを入れ、定宿には出来ないが休息に使う分には構わないという事で妥協したのだそうです。(反魂香)
新選組側の記録には無い話だと思いますのでこれがどこまで真実かは判りませんが、新選組との間で何らかの接触があった事だけは確かでしょうね。ただし、龍馬が近藤の相手になったという事はあり得ません。
「酒を持って駆けつけたお龍が見たのは、気を失って倒れている近藤を見下ろしている龍馬でした。亀弥太が斬られた直後だったらこの男を斬り殺していたとつぶやく龍馬。しかし、それでは自分も同じ事になってしまうので、それはしないと自分を諫めます。」
「長崎、亀山社中。一人戻って来た陽之助。彼から吉之助が下関に来なかったと聞き、憤る仲間達。彼らは龍馬が京都に行ったと聞き、その身を案じます。」
「下関。長崎から戻ってきた晋作と俊輔達。歓迎する小五郎ですが、晋作達は武器を買う事が出来なかったと意気消沈しています。そんな彼らを励まし、長州は負ける事はないと檄を飛ばす小五郎。」
「大阪城。第二次長州征伐の準備を着々と進める幕府。」
「土佐。象二郎に命じられたとおりに、楠の数を調べている弥太郎。なぜ自分がこんな事をしているのかと腹を立て、木樵の飼い猿に八つ当たりをしてしまいます。」
「弥太郎の家。象二郎に逆らえない弥太郎を不満に思う弥次郎。しかし、喜勢は象二郎は出世する、今の内に取り入っておくようにという占いを聞いており、むしろ今の状況を喜んでいました。」
「気を失った近藤をそのままに、風呂に入る龍馬。風呂窯を炊くお龍は京都を出てからの龍馬の足取りを聞き、今の仲間という亀山社中の連中に会いたいと言い出します。その時、入浴中の龍馬を覗く怪しい人物が居ました。龍馬に誰何されたその人物は満面の笑顔で風呂場に飛び込んできます。その男とは千葉重太郎でした。」
「龍馬の部屋に案内された重太郎。彼はいきなり江戸に戻ってくれと言い出します。妹の佐那が不憫でたまらず、龍馬を連れ戻しに来たのでした。あまりの事に席をはずすお龍と登勢。しかし、話の中身が気になるお龍は、部屋の外で聞き耳を立てています。」
「佐那の為に江戸に帰ってくれと頭を下げる重太郎。もてあましつつも、うんとは言わない龍馬。自分にはやるべき事があると譲らない龍馬に、今夜はここで寝ると言って諦めない重太郎。」
「気がついて、帳場まで降りてきた近藤。彼はお龍と話す内に、さっきの男が以蔵を逃がした人物だったと気がつきます。既に大阪に向けて立ったと嘘をつく登勢ですが、近藤は聞かずに奥へと入っていきます。」
「重太郎と二人して寝ている龍馬を見つけた近藤。彼は刀を抜いていきなり斬り付けます。寸手のところで交わす龍馬。飛び起きた重太郎は、彼を傷付ける者は自分が許さないと言って刀を抜き、近藤と対峙しました。相手が北辰一刀流の千葉重太郎と聞き、驚きつつも刀を引かない近藤。そこにお龍が飛び込んできました。間に入って刀を納めてくれとたのむお龍。龍馬はそんなお龍を後ろに引かせ、自分が前に出ます。その様子を見て、お龍の気持ちがわかったのでしょうか、近藤は引き上げていきました。」
「龍馬が狙われていると知り、驚く重太郎。こんな状態だから、佐那の下に行く訳には行かないという龍馬。」
この時期に重太郎が龍馬に会いに来たという記録はなく、全くの創作でしょうね。でも、一体何をしに出てきたのだか。龍馬が一人で近藤を相手にするのでは危ないので、助っ人にするためなのかしらん?それとも、今一度活躍の場を作って貰えたという事なのでしょうか。
「翌朝、何かあったら力になると言って江戸に帰っていく重太郎。一人残って朝餉を食べる龍馬の下に、慎太郎が飛び込んできました。吉之助が会うと言って来たのです。」
「薩摩藩、京都藩邸。座敷で待つ龍馬と慎太郎の背後に現れ、廊下で土下座をして謝る西郷。その彼に、なぜ下関に来なかったのかと理由を尋ねる龍馬。船に幕府の隠密が乗っていて、一人は捉えたもののもう一人には逃げられてしまった、自分たちの動きが幕府に知られてしまったために、長州との同盟を諦めたのだと説明する吉之助。しかし、その後の幕府の様子を見ていると、まだ何も気づいていない様子だと安堵したとも言います。」
やっぱり船から隠密が逃げ出したと言ってますね。海の上なのに、一体どうやって逃げ出したと言うのでしょう?当時はまだ沿岸航法だったから、海に飛び込んで岸辺まで泳ぎ着いたという設定なのでしょうか。それにしても、不自然に過ぎますよね。
薩長同盟の動きについては、幕府はかなり正確に把握していた様子です。当時の密偵網はすさまじく、龍馬のすぐ身近な場所にも潜んでおり、その行動は逐一把握されていました。龍馬が薩長同盟締結の為に動いている事も、実は幕府に知られていたのですね。
「それならば、今からでも下関に行って欲しいという龍馬ですが、もう遅い、小五郎は激怒しているだろうし、今更同盟を結ぶ事など出来はしないと諦め口調の吉之助。それならば手みやげが要る、軍艦と銃を薩摩が買って長州に贈れば良いと提案する龍馬。その手筈は亀山社中が整えると売り込む事も忘れていません。それでは幕府と戦う事が決定的になってしまうと慎重になる吉之助ですが、ついに長州との同盟に踏み切る事を決意しました。大願が成就した事に涙を流して喜ぶ龍馬と慎太郎。」
薩長同盟の証として薩摩名義での軍艦の購入を言い出したのは、実は桂小五郎でした。龍馬達の執拗な詫びを受け入れて、妥協案を出したのですね。これを龍馬が出したアイデアで、小五郎がそれに同意したのだとする説もあります。
龍馬と慎太郎はこの小五郎案を持って京都に来ていたのでした。何の対策も無く、ただ手ぶらで出て来るはずも無いですよね。
龍馬達が薩摩の了解が得られた事を長州に知らせたのは7月になってからの事でした。ここから亀山社中の活躍が始まるのですが、それは来週に描かれる様ですね。
参考文献:「龍馬 最後の真実」 菊池 明、「坂本龍馬」 松浦 玲、「坂本龍馬 海援隊始末記」 平尾道雄、「龍馬の手紙」宮地佐一郎、「龍馬の夢を叶えた男 岩崎弥太郎」 原口 泉 「坂本龍馬の妻 お龍」鈴木かほる
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