龍馬伝9 ~命の値段~
「再び江戸に帰ってきた龍馬。千葉道場を訪ねた龍馬を歓迎する貞吉と重太郎ですが、佐那はよそよそしくあいさつをするばかりです。」
「佐那の態度を責める重太郎。自分でもなぜあんな態度を取ったのか判らないと錯乱する佐那。」
「土佐藩中屋敷。半平太と同宿している龍馬。半平太は桃井道場で塾頭を務めるまでに腕を上げていました。しかし、自らの目的は、各地の攘夷派と交友する事にあると龍馬に念を押す半平太。」
龍馬が2度目の江戸に着いたのは、1856年(安政3年)9月の事でした。龍馬が9月29日付けで無事に江戸に着いたと土佐に出した手紙があり、28日頃の着ではないかと考えられています。一方、一足先に江戸に出ていた半平太ですが、やはり故郷に出した手紙に龍馬と同宿しているとあり、もう一人大石弥太郎と3人で暮らしていた事が判っています。
半平太が桃井道場の塾頭になったのはドラマにあったとおりで、無頼の風があった道場を規律のあるものに変えたと言われます。
「半平太に連れられ、とある居酒屋を訪れた龍馬。そこには薩摩の樺山三円、水戸の住谷寅之助、といった各藩を代表する攘夷派の志士が居ました。とまどう龍馬ですが、そこに桂小五郎が遅れてやって来ます。旧知の桂にあって、やっと元気の出る龍馬。」
半平太は桃井道場の塾頭として各藩の名士と顔見知りであった事は確かでしょうけれども、攘夷派の志士として交流を持つのは4年後に再び江戸に出てからの事と考えられています。一方の龍馬は、千葉道場の繋がりから住谷寅之助と面識はあったものと思われますが、志士としての付き合いは無かった様ですね。後に住谷が土佐にやって来て龍馬と会うのですが、住谷は龍馬を志士ではなく、あくまで撃剣家であるとその日記に記しています。
「彼等の目的は、攘夷派で多数を占めた上で攘夷の風を起こし、幕府が攘夷を実行せざるを得ない様する事にありました。水戸、薩摩、長州それぞれの藩が、既に攘夷を旗頭にしていると聞き、内心あせる半平太。彼は、土佐はと聞かれて、とっさに土佐も攘夷派が主流になっていると嘘をついてしまいます。」
「帰り道、各藩の俊英と対等に話が出来るとは素晴らしいと半平太を持ち上げる龍馬。あんなに恥ずかしい思いをした事はないと悔やむ半平太。彼は龍馬に、いよいよ土佐藩を攘夷に染めなければならない、そのためにもお前も仲間になれと迫ります。しかし、喧嘩はいやだと煮え切らない龍馬。」
「アメリカの要求を呑み、開国に結した幕府。異人は嫌いだと言葉を伝える孝明天皇。」
「土佐藩牢屋敷。10両で買った物を200両で売ろうとして捕まった商人の話を聞く弥太郎。」
弥太郎が牢の中で商売の道に目覚めるという逸話は確かにある様です。それに拠れば、相手は魚梁瀬村のきこりで、弥太郎は彼から商売の仕方を教わり、一ヶ月足らずで全てを理解しました。そしてきこりに、将来天下の金持ちになった暁には飯茶碗一杯の金をやろうと約束したと言われます。ただし、このエピソードが事実かどうかは不明の様ですね。
「千葉道場。稽古を終えた龍馬を、重太郎が呼び止めます。重太郎は酒席を用意し、たまには龍馬と飲みたいのだと言い出します。そして、佐那が龍馬を好いていると告げ、お前はどう思うのだと迫ります。そこに、肴を持ってきた佐那。腹が痛いと言って席を外す重太郎。とまどう龍馬と、杯を交わして飲み始める佐那。彼女は父と兄からは好きな男性の下に嫁げば良いと言われている、私は龍馬さんと一緒になりたいのだと迫ります。とっさに、佐那は酔っていると逃げる龍馬。彼はそそくさと佐那を後にし、逃げ出してしまいました。龍馬は土佐に残してきた加尾が忘れられないのです。」
佐那と龍馬の関係は微妙なものがあり、佐那が語り残した話に依れば、彼等は確かに婚約しており、その証として紋付きの片袖を受け取ったとあります。その一方で、お龍の語り残しでは、龍馬は佐那に世話にはなったが、何だか好かぬから取り合わなかったと言ったとあります。
龍馬の手紙には佐那を褒めちぎったものがあり、好意を持っていたのは確かな様ですが、一方でその同じ手紙には今は加尾と付き合っていると読める一節がある事から、どこまで深い関係にあったのかは良く判らないというのが現状の様です。何とも悩ましいところですね。
「夜の道を行く土佐藩士の山本琢磨と桃井道場の相弟子の田那村。彼等は酔っており、足下も定かではありません。そこに小さな風呂敷包みを手にした商人が通りかかります。その商人に、俺を睨んだと因縁を付ける田那村。驚いて逃げ出す商人。その後には風呂敷包みが落ちていました。開けてみると懐中時計が入っていました。」
「半平太の部屋。集まっている弟子達を前に、藩を攘夷で染めるために、それぞれが立派な武士となって欲しいと発破を掛ける半平太。そこに上士がやってきます。彼等は、商人から時計を奪い、金に換えた人物が居る、時計を買った古道具屋の証言からその人物は土佐藩の山本琢磨という名前だと言います。思わず琢磨を見て、本当かと叫ぶ半平太。その場に崩れる琢磨。上士は、琢磨に責めを負わせるのは半平太の責任であると言い捨てて帰って行きます。」
「攘夷を藩主に訴えるためには不祥事は許されない、だから腹を切って詫びろと琢磨に言い渡す半平太。以蔵が異議を唱えますが、半平太は取り合いません。」
「藩邸に帰ってきた龍馬は、以蔵から琢磨が切腹させられると聞き、半平太に直談判を試みます。たかが時計で切腹させる事は無いと言う龍馬に、攘夷の為には仕方がないのだと聞き入れない半平太。龍馬は時計を返して許して貰うと言って出て行きます。」
「佐州屋を訪れた龍馬。彼は時計を返し、琢磨を許してやってくれと頼みます。しかし、時計が帰ったとしても、訴えは下げられないと渋る佐州屋。龍馬は両手を付いて頭を下げ、琢磨が腹を切らなければならないのだと訴えると、さずかに驚いた様子の佐州屋。」
「半平太の部屋。佐州屋が訴えを取り下げると約束してくれた、琢磨が腹を切る理由は無くなったと報告する龍馬ですが、半平太は訴えが取り下げられたからと言って琢磨を許す事は出来ないと譲りません。なおも食い下がる龍馬ですが、収二郎達が入ってきて龍馬を遮り、半平太を支持します。収二郎は、お前は仲間ではない、土佐に帰っても加尾とは会うなと忠告を与えます。」
「土佐。月を見上げて微笑む加尾。」
「牢の窓から月を見上げて、商売の可能性に思いを馳せる弥太郎。」
「月を見上げながら刀を素振りし、思い悩む龍馬。」
「琢磨の部屋。部屋の扉を叩く音がし、開けるとそこには龍馬が立っていました。」
「琢磨を連れ出し、川縁まで来た龍馬。彼は琢磨を船に乗せ、土佐にはもう戻れないが必ず生きる場所がある、堂々と生きろと言って彼を逃がします。」
「琢磨が逃げた事の責任を問われる半平太。」
山本琢磨が事件を起こしたという事は史実にもあります。大まかな筋はドラマにあったとおりですが、琢磨が田那村に引きずられたという事はなく、二人の共犯というのが正しい様ですね。時計は二つあり、うち一つはロシアからの渡来物で、かつ盗品という曰く付きのものでした。佐州屋は被害にあってすぐに江戸中の時計屋に手配をしていたので、時計屋は後日代金を届けるからと言って、売りに来た相手の名前を巧みに聞き出したのですね。ですから、ドラマで時計が琢磨の手元にあったのは不自然ではありません。なお、琢磨が半平太の妻の従兄弟というのも事実です。
大きく違うのは、半平太が切腹を命じたという事実は無く、問い詰められた琢磨が自分から腹を切ると言い出したというところです。半平太は琢磨を諫めて思いとどまらせ、龍馬と共に佐州屋と掛け合い、訴えを取り下げる様に頼み込みます。折しも佐州屋では、ロシア製の時計は盗品であったために奪われたとは言えずに捨てたと(幕府の)お上に届け出ていたのですが、そのことを疑われて出頭を命じられて困っていたのでした。捨てた以上拾い主が必要であり、拾い主を琢磨として届ける事で一件の落着を図る事で半平太達と佐州屋は合意します。
お上の方は佐州屋が上手く立ち回って藩名も出さずに済んだのですが、今度は藩の目付方から呼び出しがあり、琢磨の身柄を預かると言われます。半平太はやむなく琢磨を迎えに行きますが、琢磨の姿は消えていたのでした。
琢磨が姿を消したのは龍馬が逃がしたと推測されていますが、半平太も共謀していたとする説もあり、少なくともドラマの様に薄情な半平太の姿はありません。
山本琢磨のその後は、龍馬伝紀行にあった様に、日本人初の日本ハリストス協会の正教徒、そして初の司祭となって生涯を終えています。
「帰国の用意をする半平太。側で見守る龍馬に、祖母の具合が悪いと呼び返されたのだと表向きの理由を言う半平太。彼は龍馬に、琢磨を逃がしたのはお前かと聞き、もう自分の邪魔はするなと言い放ちます。自分はもう目先の事には係わっていられないと言う半平太に、琢磨の命が目先か、それでは鬼だと言い返す龍馬。鬼に成らなければこの国は変えられないという半平太に、一輪の花を愛でる心を持っている鬼は居ないと食い下がる龍馬。椿の花を抜き打ちに切り落とし、判った風な事を言うなと遮る半平太。」
半平太が、祖母の具合が悪い為に呼び返されたのは事実です。ただし、あくまでの看病のためであり、琢磨の事件の責めを負ったという事実は無い様ですね。
「千葉道場。子供達の稽古を付ける龍馬を、そっと影から見つめる佐那。」
次週は加尾と弥太郎の身の上に、大きな動きがある様ですね。今回はあまり出番の無かった二人が、どう演じて見せてくれるのか楽しみです。
参考文献:「龍馬 最後の真実」 菊池 明、「坂本龍馬」 松浦 玲、「坂本龍馬 海援隊始末記」 平尾道雄、「龍馬の手紙」宮地佐一郎、「「武市半平太伝」 松岡 司 「龍馬の夢を叶えた男 岩崎弥太郎」 原口 泉 「坂本龍馬の妻 お龍」 鈴木かほる
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