龍馬伝1 ~上士と下士 その2~
今回の龍馬伝の記事を書くにあたって、新選組!や義経の時の様に、ドラマのあらすじを再現しながら進めようとしたのですが、当時とは環境が違いすぎて、とてもじゃないけれども書ききれそうにはありません。なので、2回目にして、早くもスタイルを変えます。ここからは主として、ドラマと史実の関係に絞って進めていこうと思います。
・龍馬の母について
龍馬の母は、坂本家の先代直澄の娘として生まれ、家系に男子が居なかった事から山本家から直足(八平)を養子に迎え、2男3女を産みました。龍馬を産んだ時は38歳で、当時としては相当な高齢出産でした。このため母乳が出ず、龍馬には乳母が付けられたと言います。このあたりは、ドラマでは省略されていた様ですね。
龍馬はこの乳母に良くなついていたらしく、後に手紙の中で南町の乳母の健康を気遣い、寒い季節に向かうので綿入れを送ってやって欲しいと家族に依頼しているという事実から、そのあたりの機微が窺えます。
母が亡くなったのは龍馬が12歳の時で、病死と伝えられていますが、何の病だったかは判りません。ドラマの様に雨の中を上士の家に駆けつけたという事実は無く、あの下りは完全な創作ですね。
そして、これも省略されていますが、実は伊与という継母が居ました。この伊与は2度の結婚歴を持ち、その二人の夫とは死別しています。2度目の夫との間に一子がありましたが他家に養子に行き、伊与自身は夫の実家で暮らしていた様です。美人で聡明、かつ勝ち気な性格である一方、慈悲心が強く義理堅い人であったと伝えられ、八平はそこを見込んで後妻として迎えたのでしょう。
そして、伊与は母としてはとても厳しい人であった様です。ある人の目撃談として、何事かの粗相のあった龍馬に対して、伊与は反省を求めるべく板の間に正座させ、食べ物も与えなかったというエピソードが残っているそうです。
あまりに厳しすぎたせいか、龍馬の手紙には全くその名が出てこないのですが、実母に代わって龍馬を養育した人物である事は間違いなさそうです。
・龍馬と寺子屋について
子供時代の龍馬は、ドラマにあった様に行く末の案じられる存在でした。12歳になっても寝小便の癖が治らず、また寺子屋に行っても周囲にまるでついて行けないばかりか、学友達に勉学の不出来をからかわれて抜刀騒ぎを起こし、退学処分になるという始末でした。このあたり、龍馬は後年に、自分は早くに学問を投げ出してしまったので、無学者になってしまったと自嘲気味に語っています。この無学と言うのは、特に漢籍が読めないという事を指している様ですね。
そんな龍馬が劇的に変わったとされるのが、剣術の稽古を始めた時でした。龍馬は14歳の時に小栗流の日根野道場に入門して修行を始めたのですが、それまでのうつけぶりが一変し、寝小便の癖も泣き虫も一度に吹き飛んでしまったと言われます。そして5年後に目録を得る事が出来、そこから江戸修行へと繋がって行くのですが、そのあたりは次回で描かれる様ですね。
・乙女の教育について
ドラマでは細身の乙女ですが、実際には身長176㎝、体重113キロと伝えられ、文字通り仁王様というあだ名がふさわしい女性でした。剣術、長刀、馬術、水泳、それに学問に至るまで諸人に優れた才能の持ち主であり、不甲斐ない弟の教育係を買って出たのでした。龍馬は沢山の手紙を残していますが、その読み書きの基礎は乙女によって仕込まれたのでした。
また、鏡川での水練は有名ですね。竿の先に付けた縄を腰に結び付けて泳がせ、龍馬が溺れそうになると竿を引き上げて鍛えたというドラマそのままの情景が、龍馬歴史館の蝋人形で再現されています。
後年龍馬は、「親が死んでから後は、乙女姉さんの世話になって大きくなった」と述懐しており、親の恩よりも深い恩があるとまで言っています。実際、乙女宛の手紙が沢山残されており、誰よりも親愛を寄せた存在だった事が窺えます。
・武市半平太について
武市半平太については以前に書いていますので詳細は省略しますが、郷士の中でも白札という特権階級に属していました。城下に道場を開いており、そこに岡田以蔵らが通っていたのはドラマにあるとおりです。
ちょっと意外なのが下戸だったという事で、「龍馬が行く」では酒豪として描かれていました。そこで今回調べなおしたところ、下戸で大の甘党だったというのが正解な様ですね。どうにもイメージが狂って仕方が無いのですが、ドラマの何となくつかみ所のない役作りと言い、龍馬以上に新しい半平太像が描かれていくのかも知れません。
・平井加尾について
加尾は龍馬の初恋の人とされる人で、龍馬の手紙にもその名が出てきます。ドラマにあった様に平井収次郎の妹で、龍馬より3歳の年下でした。平井家と坂本家の間には元から交流があった様ですが、中でも加尾と乙女が一弦琴の稽古仲間であった事が龍馬との縁を結ぶきっかけになった様です。龍馬と加尾の関係がこれからどうなって行くかは、ドラマの展開を待つ事にしましょうか。
参考文献:「龍馬 最後の真実」 菊池 明、「「坂本龍馬」 松浦 玲、「龍馬の手紙」 宮地佐一郎、「龍馬が行く」司馬遼太郎、「坂本龍馬 海援隊始末記」 平尾道雄、「坂本龍馬の妻 お龍」 鈴木かほる
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コメント
明けましておめでとうございます。いつも、素敵な京都を紹介していただき、とても興味深く拝見しています。京都ファンのわたしとしては、本当に大好きなブログです。今年も楽しみにしています。愛知在住の主婦で、毎年一回は京都に行くのですが、次回行く時アドバイスなど、いただけたらと思います。よろしくお願いします。
投稿: takumama | 2010.01.04 22:22
takumamaさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
このブログは、誰に頼まれた訳でもなく自分が好きでやっている事なのですが、
どなたかのお役に立っているのが判ると、
報われた様な気がして来ます。
なのでこういうコメントを頂くと、素直にうれしいですね。
takumamaさんが京都に来られる時期、
見て回りたい内容などをコメント欄に書いて貰えば、
私の出来る範囲でお手伝いさせて頂きます。
その時が来れば、お気軽にお申し出下さい。
何時でもOKですよ。
投稿: なおくん | 2010.01.04 22:36