夏の旅2008~土佐紀行・高知城~
旅行3日目は、主として高知市内を回る事になります。まずは、高知市のシンボルである高知城から開始です。
高知城を築いたのは、言わずと知れた山内一豊です。一昨年の大河ドラマでは主役を張っていましたよね。その一豊公の銅像は追手門の近く、県立文学館の前に立っています。ドラマで演じた川上隆也と違って、かなり強面の感じのする古武士の風格を感じますね。
そして、もう1人の主役である千代の銅像は城内にあります。三の丸の手前、杉の段で名馬「太田黒」の横に立ち、夫に勧めるかの様に手を差し伸べていますね。どことなくふくよかな感じがするのは、「豊かできれいな女性にして欲しい」という、司馬遼太郎さんの助言によるものなのかも知れません。
天守閣は四層五階建ての望楼式で、江戸初期に建てられた天守にしては古風さを感じます。これは一豊が前任の地である掛川城の天守を模して造ったからと言われ、土佐を治める拠点を短期間で築くには、設計が省略できるなど何かと都合が良かったのかも知れません。
また、近くで見ると案外小さい事にも気付いたのですが、20万石とは表向きの名目で、実質は9万石に過ぎなかったと言われる当時の土佐の経済力を反映しているのかなという気もします。
とはいえ、総塗り込めの白壁は美しく、軽快な感じのする姿は、やはり名城と呼ぶに相応しいですね。
この城の特徴として天守台が無く、天守閣と懐徳館という本丸御殿が同じ平面上に建っている事が上げられます。多くの場合、天守には専用の石垣を築き、一段高く独立させて建てるのが普通で、こんな例はちょっと他には無い様な気がしますね。
天守の高欄もまたこの時代としては珍しく、一豊のこだわりがあったと言われます。一豊は家臣からこの高欄が目立ち過ぎるのではという助言を受け、わざわざ着工前に家康から許可を貰っており、そこまで気を遣わなくてはならない外様大名の立場の悲しさと、高欄に懸けた一豊の思い入れを感じずには居られません。
本丸御殿の遺構は高知城の他には川越城にあるだけで、とても貴重な存在と言えます。本丸の書院は正殿、溜の間、玄関からなり、この写真は正殿にある上段の間で、藩主が家臣と対面する場所でした。もっとも普段使われていた訳ではなく、特別な場合にのみ、正式謁見の場所として使用されたとの事です。
こちらは、黒潮の波を象ったと言われる「波の透彫欄間」です。うちわけ波の欄間と呼ばれ、土佐の左甚五郎と言われた武市髙朋の作と伝えられています。とてもシンプルで、かつ現代的な意匠ですよね。
ところで、功名が辻で一世を風靡したはずの一豊と千代ですが、早くも過去の人となりつつある様です。この御殿の玄関に千代のレリーフが飾られているのですが、誰だか判らない人がとても多いのですよ。教えて上げると思い出すのですけどね、千代に会うためにこの城に来ている訳ではなさそうです。
大河効果で大いに賑わった高知なのですが、忘れ去られるのも意外な程速かった様です。ちょっと寂しい気がしますね。
天守からの眺望は前を遮る物がなく、とても素晴らしいものがあります。これは南方向ですが、正面に見えているのが筆山で、その麓には鏡川が流れています。
この鏡川と城の北を流れる江の口川を天然の堀として要害を固めた訳ですが、築城当時は辺り一面が酷い湿地帯で、とても町を作れる様な場所ではありませんでした。城の名もまた、周囲を川に囲まれているという意味で、河内山城と名付け似られました。
しかしその後洪水が相次いだため、二代目藩主である山内忠義は河内山の名を忌み嫌い、名を高智山と改めました。これがさらに省略されて、今の高知になったとされています。
本丸の西を護る黒鉄門です。防御力を高める為に小鉄板を貼り付けてある事からこの名があるのですが、確かに見るからに堅固な構えではありますね。
城の登り口には、板垣退助の銅像があります。幕末の戊辰戦争で土佐藩兵を率いて活躍し、明治新政府では土佐閥を代表して参議となりますが、征韓論で敗れて下野し、以後自由民権運動の指導者となりました。岐阜で演説中に暴漢に襲われて負傷した際に、「板垣死すとも自由は死せず」と叫んだ事で有名ですね。
今はさほど注目される事はありませんが、往時は自由民権運動の総帥として絶大な人気を誇っていたそうです。そう言えば、肖像が百円札に使われていた事もありましたね。「龍馬が行く」ではそれなりの活躍をしていますが、「龍馬伝」では出番があるのかな。
高知城は、本丸御殿と天守を除いて、出入り自由の公園となっています。これだけの名城に日常的に接していられるのですから、高知市民は幸せですね。春の桜、そして秋の紅葉も素晴らしいらしく、四季を通して訪れてみたいところです。
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