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2007.08.21

夏の旅・尾道紀行 ~新尾道三部作・ふたりの舞台~

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新尾道三部作とは、「ふたり」、「あした」、「あの、夏の日」の3作を指します。これらの作品は1990年代に断続的に公開されたもので、尾道三部作に比べると認知度はやや劣るかも知れません。

映画の造りとしては、尾道を郷愁的・叙情的に描いた前三作に比べて、町の描写はかなり現実的になっています。これは制作者が意図的に変えた事であり、古き良き町が消えていく事に警鐘を鳴らそうとした前三作に対して、人と人の繋がりを描く事により重点を移した結果なのだそうです。バブル期に始まる混迷の時代において、日本人の心が失われていく事を少しでも食い止めようと考えたと大林監督は語っています。

その最初の作品が「ふたり」で、1992年の公開です。原作は赤川次郎の同名の小説。

尾道にとある二人の姉妹が暮らしていました。姉の千津子(高校生・中嶋朋子)は何でも出来るしっかり者として近所でも有名なのに対し、妹の実加(中学生・石田ひかり)は常にぼーっとしていて、姉の厄介にばかりなっていました。ある日通学の途中で、千津子が突然事故に遭い死んでしまいます。実加は途方に暮れながらも、家族の中で姉の代わりになろうと賢明に努力しました。そして、ピアノのレッスンに通う道筋で変質者に襲われそうになった時、不意に千津子の幽霊が現れて実加を助けてくれます。そこから再びふたりの姉妹(一人は実加にしか見えない幽霊ですが)としての暮らしが始まるというストーリーです。

姉娘の死を受け入れられない依存症の母、単身赴任の寂しさから浮気に走る父親、親友の父親の死、クラスメートの心中事件など、様々な人間模様の中で成長していく実加の姿が描かれた佳品ですね。

その映画の冒頭に現れ、後に姉の事故死の現場となったのがこの場所です。浄土寺の西の坂道を少し北に登ったところにあり、海徳寺という寺の門前にあたります。事故のシーンでは、右側の坂路に何本もの巨材を積んだトラックが止まっているという、あからさまな死亡フラグが立っていました。

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そのトラックに挟まれてしまった姉の下に駆けつける妹の背後に見えていた尾道の景色がこれです。凄惨きわまりない状況の背景に、おだやかで美しい尾道の風景を見せるという手法は、無慈悲で残酷な現実を強調するという意味で有効な演出だったと思います。

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「ふたり」においては、浄土寺周辺がロケ地として良く使われています。この浄土寺は実加のピアノの発表会が行われた会場として設定されており、両親がタクシーから降りるシーンでこの門が登場しています。

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ピアノの発表会が行われたのはこの方丈の一室で、床の間の前にグランドピアノが置かれていました。映画では襖を取り払っていたので結構広く見えたのですが、実際にはおよそピアノの発表会を行う様な雰囲気の場所では無いですね。

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実加の恋人?である神永智也が、演奏を終えた実加に花束を渡して去っていった庭です。映画だと自由に出入り出来る庭の様に見えましたが、実際には門が閉まっており、外部から入る事は出来ません。また見学者が庭に下りる事も禁止されています。綺麗な芝生なので、つい歩いてみたくなるのですけどね。

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神永が実加に、彼の従姉妹がしでかした事(実加が書いた神永宛のラブレターをクラス中に晒してしまった)を詫びるシーンに登場した、浄土寺前の通路です。石畳と古風な壁が良い雰囲気ですよね。それに、ここから眺める景色もなかなかのものです。

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実加と親友の真子が、神永の従姉妹の家に討ち入りに行くシーンに出てきた艮神社です。社殿左に巨石があり、尾道三山との関わりを感じさせますね。映画では二人がこの石の左にある階段を登り、さらには墓地の中の坂道へと繋がって行くのですが、あの墓地がどこにあるのかは不明です。

なお写真はありませんが、この神社の近くに実加と神永が最初に出会った時に入った喫茶店が存在します。「茶房 こもん」という店がそれで、ワッフルが美味しい事でも知られている様ですね。我が家は偶然入ったのですが、後になってから気付いたので写真は撮っていないのです。惜しい事をしたな。

いわゆる名曲喫茶であり、京都・大阪ではほとんど無くなってしまった文化が、こではまだ息づいていました。とても上品な、良い雰囲気の店でしたよ。

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今回は、タクシーに案内してもらったほか、駅に備え付けてあったロケ地のガイドマップを参考に歩いたのですが、およそ不親切な作りの地図で、ほとんど何も判りませんでした。そのガイドマップを良く見ると、この地図を頼りに歩けば確実に道に迷うだろうとわざわざ記されており、ものの見事に制作者の狙いに嵌ってしまった事になります。自分の足と目で確かめろと、あえて判らない様に作ってあったのですね。それはそれで面白いのですが、炎天下においては迷惑極まりないことでした...。

結局、探しに行った電柱のある道は見つけられず仕舞いに終わったのですが、代わりに見つけたのがこの景色です。あまりの暑さに目まいがしましたが、このいかにも尾道らしい景色に出会えた事で良しとしましょうか。

ガイドブックの記述ではありませんが、尾道は迷ったなりになにがしかの発見がある、そんな町である事は確かです。

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