新選組血風録の風景 ~鴨川銭取橋その3~
(新選組血風録概要)
(観柳斎が5番隊の隊士を連れて出発した後、山崎は土方の部屋に呼ばれた。土方は餅を焼きながら、狛野を頭から一太刀で惨殺したという相手の腕に感心してみせる。そして、この件について手を出してみろと謎の様な言葉を吐く。不審に思いながらも、観柳斎より先回りをしろという土方の命に従って、三年坂まで馬を飛ばす山崎。)
(三年坂の現場では、二人の奉行所同心が番をしていた。彼らに向かって新選組の山崎蒸であると名乗り、馬から飛び降りる山崎。彼は同心達に必要な質問をしつつ、死体の傷口をあらためた。その切り口を子細に検分すればするほど、相手の剣の凄まじさが判る。)
(山崎は同心達に向かって、この付近の料亭を調べ、今夜は武士の会合がなったか確かめる様に指示した。併せて、近くに若い女が住んでいないか、居れば狛野が通っていなかったかも調べるようにも命じた。さらに、この事は奉行所の同僚にも、また後から狛野の死体を引き取りに来る新選組の隊士にも内密にするようにと釘を刺した。)
「山崎が三年坂に着いたのは、小説の流れからすると午後10時頃の事になるでしょうか。現在の三年坂は、花灯路などの特別のイベントがある時を除いて、清水寺の門が閉まると同時に人気が無くなり、夜はごく寂しい場所になります。人知れず隊士が殺されていたとしても、不思議では無い場所ですね。」
「一方、幕末の頃はどうだったかと言うと、このあたりには清水新地と呼ばれる遊郭がありました。二年坂にある阿古屋茶屋が当時の面影を残していると言われますが、このあたりの町並みが全体として雅なのは、かつて花街であった名残なのでしょう。」
「ですから夜に関して言えば今よりもずっと賑やかでした。そんな場所で斬り合いがあれば、きっと大騒ぎになった事でしょうね。今から見れば事件の舞台としてふさわしく見える三年坂ですが、時代をさかのぼってみると今とはまるで違った貌を持っていたのですね。」
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