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2007.03.07

新選組血風録の風景 ~池田屋異聞その11~

Gionkaisyo0702251
(祇園会所跡)

(新選組血風録概要)
(近藤は、桝屋を突き止めるという手柄を上げた山崎に、なおも池田屋に止まり、討ち入りまでの間、宿を見張っている様に命じた。山崎は薬箱の中に大小、鎖の着込みなどを忍ばせて池田屋に戻った。彼は本隊の突入と同時に、自分も切り込むつもりである。山崎を支えているのは、忠兵衛を斬るという一念であった。)

(皮肉な事に、山崎の立場は赤穂浪士における大高源五とそっくりであった。源五は八方手を尽くして、その日はかならず上野介が在宅するという茶会の日を突き止めたのである。)

(元治元年6月5日、この日は祇園祭の宵山で、日の暮れから町には湧く様に祇園囃子が奏でられていた。)

・屯所の留守部隊

池田屋異聞その8でも少し触れた様に、山崎はこの日の襲撃には加わっていませんでした。この事は、事件後に支給された報奨金リストに入っていない事から明らかであり、恐らくは屯所の警備に従事していたものと思われます。」

「新選組!では、留守部隊に報奨金が配布されなかった事が一因となって、永倉が近藤を弾劾する建白書を書くというストーリーになっていましたが、確かに不自然と言えば不自然なのですよね。志士達が古高を奪還に来るかも知れない屯所を守っていたのですから、それなりの働きは認めても良かったとは思うのですが...。」

「この日、屯所に残って居たと思われる隊士は、山南敬助、山崎蒸、尾関雅次郎、山野八十八、尾形俊太郎の五人です。他にも居たかも知れないのですが、どなたか御存知の方は居られますか。」

・山崎を奥野将監の子孫とした理由

「なぜ、作者が山崎を奥野将監の曾孫という設定にしたのかとずっと疑問に思っていたのですが、ここにその答えが書いてありました。池田屋における山崎の働きを、吉良邸討ち入りにおける大高源五の役割と重ね合わせていたのですね。武士の鑑と賞賛された源五の子孫と、臆病者と蔑まれた将監の子孫を対決させ、先祖の雪辱を果たさせるという発想は、ここから出ていたのです。」

・おわびと訂正 宵々山は当時から賑やかでした

長州の間者その10において、6月5日は宵山ではなく宵々山である事、そして幕末当時の祇園祭には宵山だけで、その前日の賑わいはなかったと書いてしまったのですが、その後間違いである事が判りました。実は当時から宵々山もかなりの賑わいを見せていた様なのです。」

「西遊草という幕末(安政2年)に書かれた紀行文があるのですが、その中で6月5日の京都の様子が描かれていました。四条通では祇園祭の鉾が数十の蝋燭の光に照らされて見事に輝き、祭礼の夜らしく遅くまで人出で賑わっていたとあります。元治元年はその9年後ですが、やはり同じ様な賑やかな祭の夜だった事でしょう。ここに、お詫びして訂正いたします。」

「ただ一点違うと思われるのは、この頃には市中の木戸の取り締まりが強化されており、あまり通行の自由は無かったであろうという事です。安政2年の時点においても、木戸に阻まれて家に帰れなくなった町人が居たと記されており、治安の維持のやっきになっていた元治元年には、もっと厳しい事態になっていたと想像されます。」

・西遊草について

「ちなみにこの西遊草の作者は、あの浪士組の発案者である清河八郎です。清河はこの年、母を連れて東北から四国、中国に至るまでの大旅行を行っており、その母の記念として残すために書いた紀行文が西遊草でした。後年策士として知られる様になる清河も、この頃まではただの親孝行な金持ちの息子だったのですね。」

「それにしても、西遊草の文章は簡潔にして明瞭の一言であり、一読すると各地の風物が目に浮かぶ思いがします。清河が如何に頭脳明晰な人物であったかを如実に表していると言えますね。幕末の京都の風景の描写が見事で、幕末や京都のファンには、なかなかお勧めの一冊ですよ。岩波文庫に収録されています。」

(参考文献)
別冊歴史読本「新選組の謎」、清河八郎「西遊草」、子母澤寛「新選組始末記」

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