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2007.02.13

新選組血風録の風景 ~長州の間者その2~

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(蛸薬師麩屋町の現状)

(新選組血風録概要)
(新作はおそのの家を訪ねたり出逢茶屋で会ったりしていたが、店を継ぐ話になると煮え切らず、最後にはおそのが必ず泣き出すのであった。おそのは小間物屋を手放さない事だけが幸せに通じる道だと信じているかの様だった。)

(おそのの姉小膳は、そんな二人を見かねた様だった。ある日、新作に向かって長州に仕官する気はないかと聞いてきたのである。小膳とおそのの父の代までは長州藩出入りの商人であり、今でもその縁で知るべがあると言う。新作は父の遺言から長州はまずいと思ったが、背に腹は代えられなかった。新作がよろしく頼むと言うと、小膳はたとえ30石、50石の分限でも、妹の方は言い聞かせて、店を閉めさせると請け合ってくれた。)

小説の舞台の紹介

「おそのの店があったとされる蛸薬師麩屋町上がるの現状は、上の写真のとおりです。蛸薬師通も麩屋町通も共に一方通行の細い道路で、京都のどこにでもある街角に過ぎません。偶然小間物屋風の店がありましたが、無論この小説とは何の関わりもありませんので、念のため。」

・蛸薬師通

「蛸薬師通は京都の中心部を東西に走る道で、平安京造営時の街路では四条坊門小路に該当します。現在の通り名はこの道路の東詰めにある蛸薬師堂にちなんだものです。」

「蛸薬師堂があるのは京都でも有数の繁華街である新京極ですが、その中でもこの御堂は賑やかな提灯で飾られているので、歩いていてもすぐにそれと知れます。」

「しかし、蛸薬師通そのものにはこれといった特徴もなく、通りかかったとしても気付かない事がほとんどでしょう。ではその地味な通りを、ざっと案内してみましょうか。」

「祇園祭の宵山で、橋弁慶山をご覧になった事があるでしょうか。橋弁慶山は謡曲「橋弁慶」に題材を取り、牛若丸と弁慶が五条大橋で闘う様を再現した人形を乗せる山です。宵山にはこの人形が町家の二階に飾られ、通りから見える様にライトアップされています。結構目立つので人だかりがするのですが、この山のある道路が実は蛸薬師通です。祭りの夜には、特に賑わう道ですよね。」

「そこから少し西へ行って室町通を過ぎたあたりに、織田信長がバテレンに地所を与えて建てさせたという南蛮寺がありました。当時は和風3階建てという珍しい教会だった様ですね。現在はビル街の一角に石碑を見る事が出来ます。」

「さらに西に向かって油小路通と交差するあたりに、信長が討たれた本能寺がありました。現在は油小路を少し下がった辺りに、本能寺跡と記した石碑が残されています。地味な様でも町中を通る道だけあって、ざっと見ただけでも結構歴史が残っているでしょう?」

・麩屋町通

「次に麩屋町通は南北に走る道路で、平安京では富小路に該当します。現在の富小路通は一本西にあるのでややこしいのですが、豊臣秀吉による京都改造の際に通り名が入れ替わった様です。」

「麩屋町通と呼ばれる様になったのは比較的新しく、元は白山通と呼ばれていました。現在でも押小路通を下がったあたりにある白山神社に由来すると言われますが、その後この通りの周辺に豆腐や麩を扱う業者が集まった事から、麩屋町通と呼ばれる様になりました。」

「その同業者町もやがて廃れ、現在ではわずかに湯波半にその面影を見る事が出来ます。江戸時代の半ばには、「国問屋」と呼ばれる地方物産を扱う問屋街が成立していました。今では俵屋、角屋、柊屋といった老舗旅館がある事で知られる麩屋町通ですが、かつては商人達の熱気溢れる、活気のある界隈だったのですね。」

・蛸薬師麩屋町

「おそのの店があったのは、その問屋街と蛸薬師堂への参道が交わる辺りであり、当時としてはかなり賑やかな場所だったと思われます。四条や三条といった大通りには及ばないまでも、小娘が小間物屋を営むには相応しい場所だったのかも知れません。」

「現在でも新京極、それに錦市場から近いせいか、人通りは結構多いです。この写真を撮っている時も、人通りが絶えるのをじっと待っていましたからね。おそのが店に執着したのも、少し判る様な気がします。」

以下、明日に続きます。

参考文献
小学館「京都の大路・小路」

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