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2007.02.14

新選組血風録の風景 ~長州の間者その3~

Tantora0606251
(木屋町三条上がる 丹虎跡)

(新選組血風録概要)
(文久3年重陽、柳ノ馬場の道場に居た新作の下に、おそのの店の下男が使いにやってきた。木屋町三条上がるにある丹虎まで今すぐ来て欲しいという。)

(新作が丹虎に出向くと、主人に離れ座敷に案内された。待つほど一時間、やってきたのはおそのではなく吉田稔麿という武士だった。吉田は小膳からの頼まれた人物に代わり、新作の仕官についての周旋を引き受けたと言う。吉田は新作の父が岸という姓で元は長州藩士だった事、家中には親戚が多く残り、自分にとっても遠縁にあたる事など、新作自信が知らない事までも知っていた。)

(内心驚いている新作に、王事の為に死ねるかと迫る吉田。即座に死ねますと答える新作。心が高揚する新作に吉田が投げ掛けたのは意外な言葉だった。新選組に入れと言う。言葉も出ない程驚く新作に、間者になれと畳みかける吉田。)

(吉田が言うには、新作ほど間者に向いている人物は居ないという。第一に京都浪人である、第二に尊攘浪士とのつきあいが過去一度もない、第三に腕が立つ、第四に元長州人である。吉田ほどの志士に見込まれたという感激で、承知してしまう新作。)

(吉田は来月に新選組の新しい隊士を募集する考試があると言い、隊士になる以上、模範的な隊士となって怪しまれぬ様にせよと忠告した。そして、京都にある長州藩の諜報網のあらましを語り、掴んだ情報は小膳にまで知らせて欲しいと伝えた。そして、おそのには何も言ってはならないと釘を刺し、そして隊内にはもう一人の間者が居るが名前は言えないと言い残した。)

・血風録の日付について

「この小説全般に言える事なのですが、日付に関してはかなりいい加減なところがあります。新作が吉田と会ったのは重陽とあるのですが、これは9月9日の事ですよね。ところが、この先の下りで8月18日の政変が出てくるのですが、その時には新作は既に新選組に入隊していた事になっています。」

「これは明らかに矛盾しており、ここで言う重陽とは、5月5日あるいは7月7日と言いたかったのでしょうか。こんな具合に日付に限らず設定上おかしな部分はいくつもあるのですが、あまり細かい所は気にせずに読み飛ばしてしまうのがこの作品を楽しむコツかと思います。」

・吉田稔麿という人物について

「吉田稔麿は吉田松陰の門下生で、久坂玄瑞、高杉晋作、入江九一と共に松蔭の四天王と称された俊英です。ただし、小説にある様に松蔭の遺弟という事実はなく、縁戚関係にはありませんでした。江戸に出て旗本妻木田宮の用人となり、幕府の情勢を探っていたというのは小説にあるとおりです。」

「以来、江戸、京都、長州の間を駆けめぐり、目覚ましい活躍をした志士でした。後に江戸に向かう途中で京都に立ち寄り、池田屋騒動に遭遇する運命にある人物です。」

「文久3年8月21日には、長州藩が下関で外国船を砲撃した事について糾問するために訪れた幕府の使節団に対し、吉田は烏帽子・直垂姿に身を包み、一人で軍艦に乗り込みました。そして、江戸における忠臣蔵の人気に触れ、四十七士を忠君の例に挙げて、巧みに使節団を煙りに巻いてしまったと伝えられます。」

「ちなみに、この時幕府使節団が乗ってきた軍艦が朝陽丸で、後に明治新政府の手に渡り、函館湾海戦に参加し、旧幕府軍の盤龍丸の砲撃を受けて轟沈しています。「新選組!!土方歳三 最後の一日」をご覧になった方は、ドラマの終盤で沈みゆく新政府軍の船を覚えておられるかと思いますが、あの船が朝陽丸ですね。」

・小説の舞台の紹介

「新作が吉田と会った丹虎は別名四国屋とも言い、後の池田屋騒動の時に土方隊が探索した場所とされてまいす。土佐の武市半平太が住んで居た場所でもあり、現地には武市瑞山先生寓居之跡という石碑が建っています。ちなみに、武市はこの年の4月に土佐に帰っていますので、新作が訪れた時には既に居なかった事になりますね。」

「丹虎跡は現在は金茶寮という料理旅館になっており、玄関まで路地が続く造りで、いかにも京都らしい風情が溢れています。武市半平太ゆかりの部屋に泊まる事も出来る様ですが、部屋そのものは近年に改装されている様ですね。」


以下、明日に続きます。

考文献
子母澤寛「新選組始末記」

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