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2007.01.22

新選組血風録の風景 ~油小路の決闘その8~

Aburakouji3
(戒光寺・御陵衛士墓所 左から毛内・伊東・藤堂・服部の墓)

(新選組血風録概略)
七条油小路の辻にやってきた篠原達は、路上に捨てられている伊東の死体を見つけます。
「駕籠に入れろ。」
と篠原が命じた時、四方から夥しい人数があふれ出してきました。
「死体を捨てて、斬り込め!」
と命じて、正面の敵を袈裟斬りに斬って捨てる篠原泰之進。

7人を四方に向かって部署した篠原でしたが、すぐに乱戦になり、御陵衛士達は個々に闘うはめになります。

まず最初に倒れたのが藤堂平助。彼は溝に足を取られて倒れたところを、ずたずたに切り裂かれてしまいます。

次いで倒れたのが服部武雄。彼は幕末において最も見事と言われる奮戦ぶりで新選組を悩ませましたが、最期は原田の槍に仕留められてしまいます。

最後は毛内有之助。様々な武芸に通じていた彼でしたが、脇差しを抜こうとした時に小手もろともに切り落とされ、素手で立ち向かおうとしたところを、切り刻まれて倒されました。

篠原、加納、富山、三木の4人はそれぞれに血路を開いて逃走し、薩摩屋敷に逃げ込んでいます。

その後4人は官軍の東征軍に従軍し、加納は板橋において近藤の正体を見破る事で、この夜の敵討ちを果たしました。

篠原と加納は共に長命し、明治41、2年頃に亡くなりました。篠原の死因は中耳炎、おけいが案じたとおり耳を水で洗う癖が命取りになりましたが、少なくとも畳の上で死ねた事は確かです。

「この事件の時に新選組隊士を率いていたのは、浪士文久報国記事の記載により、永倉と原田であった事が判ります。」

「この日出動した新選組隊士は篠原の日記などから40人程と言われますが、新選組の金銀出納帳の慶応3年11月19日(事件の翌日)の支出の欄に、七条一件として17人の隊士に対して17両を支給したという記録が残っています。これからすると、当夜出動した隊士は17人という事になりますね。また話は本筋から逸れますが、この記載からは、隊士が作戦行動に出動した場合の特別手当は一人1両だった事も判かり、なかなか興味深いでところです。」

「一方、この事件は、いやしくも天皇の御陵を守る御陵衛士が殺されたという事で朝廷において問題とされ、新選組隊士23名に対して切腹させようという案が出されています。この案は間もなく鳥羽伏見の戦いが勃発した為にうやむやになっていますが、一歩間違えれば新選組は朝敵と名指しされていた事になり、いかに伊東暗殺が無謀な行為であったかが判ります。」

「朝廷の処分案と金銀出納帳の記載とでは人数が食い違いますが、どちらにしても40人という人数は過大であり、当夜御陵衛士を襲ったのは20名前後の隊士であっただろうと考えられています。」

「ただ、浪士文久報国記事には、永倉・原田の隊士とは別に隊長附を現場に潜ませたともある事から、局長付の見習い隊士(新入隊士は最初は局長付に回されるのが慣例でした)20名程が出動していたとする説もあります。その場合は、手当が支給されたのは当夜の戦闘員であった正規の17名の隊士に対してであり、見習い隊士は度胸試しの為に狩り出されて周囲を固めていただけであった事から、手当の対象外だったという事になりますね。」

「戦闘は、原田が放った鉄砲の合図によって開始されました。小説では、篠原が最初の敵を袈裟斬りにして下知を下したとなっていますが、維新後の証言によれば、最初の敵を見つけて叫び声を上げ、手元に掛かってきた敵に袈裟斬りに斬り付けたのは加納道之助でした。ただし、斬って捨てた訳ではなく殴り倒して逃げたとあり、その後は前後の判らない乱戦の中を無我夢中の内に逃げ切った様です。」

「浪士文久報国記事に依れば、当夜の新選組の死亡者は三浦常次郎一人であり、他に原田、大石、岸島、芝岡といった隊士が傷を負っています。やはり、新選組側は鎖を着込んでの完全武装であり、小説の様には簡単に斬り倒す事は出来なかった様ですね。」

以下、明日に続きます。

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