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2006.08.17

坊ちゃんの世界 ~道後温泉~

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「ほかの所は何を見ても東京の足元にも及ばないが温泉だけは立派なものだ。せっかく来たものだから毎日はいってやろうという気で、晩飯前に運動かたがた出掛る。」(夏目漱石 「坊ちゃん」より)

漱石をしてこう言わしめた道後温泉本館の夜の佇まいです。この建物が完成したのは1894年(明治27年)の事で、漱石が松山に赴任する前年の事でした。当時の道後温泉町の町長であった伊佐庭如矢が、温泉客の誘致を目的として13万5千円という巨費を掛けて築き上げたです。松山中学一の高給取りであった漱石の月給が80円ですから、いかに巨額であったかが判るというものでしょう。あまりの高額さに周囲は猛反対に転じ、伊佐庭町長は命の危険すら感じたと言いますから相当なものだった様ですね。

いわば現在のテーマパークの走りとでも言うべきものですが、今や松山の顔として誰一人知らない者はないという状況を鑑みれば、伊佐庭町長の賭けは大成功に終わったと言えそうですね。この町長は、本館の建設と併せて松山市内から道後温泉に通じる軽便鉄道を建設しており、道後温泉の繁栄の基礎を築いたと言われています。実に先見の明がある人だった様ですね。伊佐庭如矢が建てた本館は、この日も入浴客で引きも切らないという盛況ぶりでした。

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「温泉は三階の新築で上等は浴衣をかして、流しをつけて八銭で済む。その上に女が天目へ茶を載せて出す。」

現在の道後温泉本館は、大きく神の湯と霊の湯に分かれています。神の湯が銭湯も兼ねた大浴場、霊の湯がこぢんまりとしている分入浴客も少なめで、ゆっくりと楽しめる様になっています。神の湯は附属する脱衣場を利用するコース、2階の大広間で浴衣を借りてお茶とせんべいを頂くコースがあり、霊の湯は大広間で茶菓の接待を受けるコースと3階個室を利用するコースがあります。料金等の詳細はこちらを参照してください。

この大広間というのがくせ者で、男女共同になっているのですね。部屋にはしきりも何もなく、行李箱を一つ貸してくれるだけで、こんなところで服を脱いで浴衣に着替えて良いのかと、初めて来た時にはとまどったものです。女性客にとってはなおさらでしょうね。天目に乗せてお茶を出すという接待は、漱石の当時と変わっていません。

「湯壺は花崗石を畳み上げて、十五畳敷ぐらいの広さに仕切ってある。大抵は十三四人漬ってるがたまには誰も居ない事がある。深さは立って乳の辺まであるから、運動のために、湯の中を泳ぐのはなかなか愉快だ。おれは人の居ないのを見済しては十五畳の湯壺を泳ぎ巡って喜んでいた。ところがある日三階から威勢よく下りて今日も泳げるかなとざくろ口を覗いてみると、大きな札へ黒々と湯の中で泳ぐべからずとかいて貼りつけてある。湯の中で泳ぐものは、あまりあるまいから、この貼札はおれのために特別に新調したのかも知れない。おれはそれから泳ぐのは断念した。」

このエピソードのとおり、神の湯の壁面には「坊ちゃん泳ぐべからず」の木札が貼り付けてあります。確かに深さも広さも十分で、誰も居なければつい泳いでみたくなりますよね。ただ、温泉は熱めで、長く入っているとのぼせてしまうでしょう。

今回入ってみて気付いたのですが、かすかに塩素臭がしており、この点が以前とは違っていました。これは、一時期全国的に騒ぎになったレジオネラ菌対策として、愛媛県の条例で塩素投入を義務づけたせいなのですね。安全性との引き替えとは言え、温水プールに入っている様で、せっかくの風情が壊れてしまう事も事実です。別の殺菌方法を開発するなど、何か良い解決策は無いものなのでしょうか。

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これは道後温泉駅の近くにあるカラクリ時計です。毎正時ごとにせり上がり、中から坊ちゃんの登場人物の人形20体が現れるという仕掛けになっています。一番下は道後温泉の湯船になっており、クルクル回っているので光りの輪の様になっていますね。この時計の側には明治時代のお巡りさんに扮したボランティアの方が居て、面白おかしく解説をしてくれます。最終10時まで残って居られましたから、お疲れ様の一言ですね。

なお、夏休み、春休み及び年末年始には、30分毎にカラクリが動作する様になっています。

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今回泊まったホテルは古湧園。道後温泉本館から少し坂を上ったところにある老舗のホテルです。今回は3連泊をしたのですが、何より良かったのは食事が美味しかった事ですね。以前道後で泊まったホテルの食事が今ひとつで、今回もあまり期待していなかっただけに、とても嬉しい驚きでした。魚を中心としたメニューで、毎回工夫を凝らした料理が出てきます。実は、私は魚系はあまり好きではなかったのですが、ここの料理を食べて認識を改めました。煮魚が美味しいと思ったのは今回が初めてではなかったかしらん?料亭の味と言っても過言では無いと思います。仲居さんを始めとした従業員の対応も良く、このホテルにして大正解でした。

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コメント

はじめまして
道後温泉の近所で育ちました〜。
がっかり名所ではないかと心配していましたが、
こうしてきれいな写真になると、いい感じですね(^^;)

愛媛の今治市の温泉が、塩素を使わない殺菌を始めていました。
確かに塩素のにおい興ざめですよね〜

投稿: たま | 2006.08.18 09:01

道後温泉もいい感じですね。
でも、ちゃんと「坊ちゃん」読んでないしなぁヾ(^^;)

投稿: Milk | 2006.08.18 18:20

たまさん、Milkさん、コメントありがとうございます。

たまさん、がっかり名所だなんてとんでもない。
私は以前から松山の、中でも道後温泉の大ファンなのです。
これほど都会に近くで便利な、
それでいて風情のある温泉街は、他にはちょっと見あたりませんよ。
こんな町にいつか住んでみたいものだと思ってます。
塩素殺菌の件は、やはり別の通を模索する動きがあるのですね。
いつか道後においても改善される日が来ると信じたいです。

Milkさん、道後はなかなか良い所ですよ。松山はとても開けた素敵な町ですし、
本格的な温泉と都会を両方楽しめるというワンダーランドです。
坊ちゃんは読んでおいた方がずっと楽しめます。
町中至る所に坊ちゃんの影響が見られますからね。
短編ですし、著作権が切れているのでネット上でも見ることが出来ますよ。


投稿: なおくん | 2006.08.18 21:59

こんばんは。

坊ちゃん巡りですか、元文学少女としては目がキラキラしてしまいます。
道後温泉、かなり観光地化されているようですけれど、
やはり一度は行きたいですね。

今時の温泉は、塩素系のにおいがする所がおおいです^^;

投稿: ヒロ子 | 2006.08.19 21:22

ヒロ子さん、コメントありがとうございます。
道後温泉には鄙びた情緒はありませんが、
手軽に本格的な温泉が楽しめる所に最大のメリットがあります。
松山という都会の一部と言っても良い位の所ですからね。
今年は特に小説坊ちゃん発表百年にあたり、
様々なイベントで盛り上げようとしている様です。
これから行かれるなら「坂の上の雲」もチェックしておかれる方が良いでしょうね。
松山市を上げての取り組みで、2年後のドラマ放映に向けて整備が進められています。
これから要注目の町かも知れませんよ。

投稿: なおくん | 2006.08.20 08:19

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