« 坊ちゃんの世界 ~ターナー島~ | トップページ | 坊ちゃんの世界 ~大街道・銀天街~ »

2006.08.15

坊ちゃんの世界 ~坊ちゃん列車~

Bochanresya0608151
(道後温泉駅にて)

「停車場はすぐ知れた。切符も訳なく買った。乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。道理で切符が安いと思った。たった三銭である。」(夏目漱石 「坊ちゃん」より)

坊ちゃんに登場するこの汽車は、三津と松山(現在の松山市駅)を結ぶ伊予鉄道高浜線を走っていました。当時の伊予鉄道は、正規の鉄道に比べて狭い線路幅であるなど簡易な規格で建設出来た軽便鉄道であり、その動力である機関車も後のD51などと比べれば半分程度の大きさしかありません。その頃はまだ日本では機関車は製造されておらず、ドイツのクラウス社から輸入されたもので、当時の貨幣で9700円、現在の価値に換算すると約2億円もしたとされています。開業は1888年(明治21年)の事であり、漱石が松山に赴任する7年前の出来事でした。

Bochanresya0608153
(子規堂にて)

マッチ箱の様だと形容されたのは、この客車の事でしょう。確かにマッチ箱の様に真四角で、機関車と同じくとても小柄に出来ています。開業当時の三津と松山間の料金は3銭5厘(下等)で、所要時間は28分でした。概ね1時間30分ごとに運行されていた様ですね。1954年(昭和29年)にディーゼル化されるまで現役で走っていたと言い、小説にちなんで坊ちゃん列車と呼ばれていました。

Bochanresya0608155

「やがて、ピューと汽笛が鳴って、車がつく。待ち合せた連中はぞろぞろ吾れ勝に乗り込む。赤シャツはいの一号に上等へ飛び込んだ。上等へ乗ったって威張れるどころではない、住田まで上等が五銭で下等が三銭だから、わずか二銭違いで上下の区別がつく。こういうおれでさえ上等を奮発して白切符を握ってるんでもわかる。もっとも田舎者はけちだから、たった二銭の出入でもすこぶる苦になると見えて、大抵は下等へ乗る。」

坊ちゃんでは、主人公が道後温泉(作品中では住田)へ行く場面でも汽車が登場します。こちらは、伊予鉄道とは別に、温泉客の誘致を目的として道後温泉組合が始めた道後鉄道でした。この道後鉄道は漱石が赴任した1895年(明治28年)の8月に開業しており、漱石は真新しい列車に乗って温泉通いをしていたのでしょうね。大街道を始点として道後温泉にまで続いていましたが、現在の城南線は後の松山電気軌道の路線を引き継いだものであり、直接の繋がりは無い様です。また、道後鉄道は開業から5年後に伊予鉄道と合併して姿を消しており、坊ちゃんが発表された当時はすでに伊予鉄道に吸収されていました。

Bochanresya0608152

坊ちゃん列車は1号車が梅津寺パークに保存展示されているほか、復元模型が伊予鉄道本社など数カ所で見ることが出来ます。これは子規記念博物館前に展示されているもので、旅行者にとっては一番見やすい場所にあると言えるかも知れません。

8月19日追記
その後調べて判ったのですが、この子規記念博物館前の坊ちゃん列車は、「坊ちゃん百年展」に合わせて伊予鉄道本社前から移設されたものだったのですね。これからずっと常設される訳ではなく、平成18年9月10日(日)までの特別展示なのだそうです。

現在市内を走っている坊ちゃん列車はかつての機関車を復元したもので、ディーゼルを動力として2両が運行されています。1号車と14号車がモデルになっていますが、それぞれ細かい意匠が異なっている様です。道後温泉と松山市駅及びJR松山駅間を結んでおり、道後温泉、大街道、松山市駅前、JR松山駅前、古町の各駅から乗車が可能です。予約は不要で、各乗車駅から直接乗って料金を払えば良いのですが、一乗車につき300円(小人150円) と通常の電車の倍の料金設定になっていますね。時刻表などの詳細についてはこちらを参照してください。

|

« 坊ちゃんの世界 ~ターナー島~ | トップページ | 坊ちゃんの世界 ~大街道・銀天街~ »

松山」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14874/11450276

この記事へのトラックバック一覧です: 坊ちゃんの世界 ~坊ちゃん列車~:

» 伊予鉄道 坊ちゃん列車 [ぱふぅ家のホームページ]
坊ちゃん列車は明治時代、夏目漱石が松山に赴任した際に乗車したミニSLを復元したもので、ディーゼルエンジンで運行する軌道車両である。小説「坊っちゃん」の中で「マッチ箱のような汽車」として登場する。... [続きを読む]

受信: 2011.10.11 23:46

« 坊ちゃんの世界 ~ターナー島~ | トップページ | 坊ちゃんの世界 ~大街道・銀天街~ »