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2006.01.14

ねこづらどき版「新選組!!土方歳三最期の一日」14

暗闇の海岸。小舟に分乗して上陸して来る新政府軍。続々と揚陸される武器弾薬。海岸のすぐ側は断崖になっている様子です。

絨毯の上にあぐらをかいて、ワインを飲み始める榎本と土方。日本酒とワインの違いの講釈を始める榎本。米は手を掛けないと酒にはならないが、葡萄は放っておいても酒になる、葡萄自体に発酵させる成分が含まれているからで、実に理に適った産物だ、いかにもヨーロッパの人間が考えそうな酒ではないかと土方に同意を求めます。眉間に皺を寄せた険しい表情のまま、ワインを一口飲む土方。その様子を見て、悪くないだろうと感想を聞く榎本。悪くはないが、良くもないと憮然とたまま答える土方。

やがて、日本でもワインが作られる様になる、特にこの蝦夷地はヨーロッパの風土に似ており、ワイン造りにはぴったりだ、やがてここで作られたワインが世界で飲まれる様になるかもしれないと夢を語る榎本。彼はさらにサンドウィッチもどうぞと土方に勧めます。皿に盛られているのはハムチーズサンド。付け合わせに丸のままのピクルスが添えられています。気むずかしい表情で一口ほおばる土方。何も文句が出ないところを見ると、意外と美味しいと感じたのかもしれません。しかし、彼はサンドウィッチの事には触れず、榎本という人間が判らないと言い出します。
蝦夷地に渡り、じわじわと開拓を進めながら、薩長とは違う新しい国を作るという途方もない話を聞き、その途方もなさに俺は乗った。あんたも本気で新しい国が作れるとは思っていなかったはずだが、薩長に一泡吹かしてやりたいという思いは同じと思ってあんたに賭けた。なのに、なぜ今になって白旗を上げる、俺はあんたに失望したと榎本を詰る土方。彼は、一時でもあんたと近藤勇を重ね合わせた自分が恥ずかしいと言って、部屋を出て行こうとします。その後ろ姿に、勝手に近藤と重ね合わせておいて、勝手に失望されたのでは堪らないねと声を掛ける榎本。近藤は信念の人だった、自分の信じた道を真っ直ぐに突き進んでいった、人はその真っ直ぐさに惹かれ、あの人に付いていった、あんたとは違うと、榎本に言葉を投げつける土方。決然と立ち上がり、当たり前だ、私は榎本武揚だと言って、土方を真っ直ぐ見つめる榎本。彼は土方の方に歩み寄りながら、君はひとつだけ思い違いをしている、私は本気で蝦夷地に新しい国を作るつもりだったと語りかけ、来たまえと土方を誘います。

暗闇の中、断崖をよじ登る新政府軍。彼等は肩に綱を掛けて武器を引っ張り上げています。

廊下を歩きながら、君は案外リアリストかも知れないと土方に話しかける榎本。リアリストとは、夢に溺れず、現実をしっかりと見つめる事が出来る人の事を言う。戦場では夢を追っている場合ではなく、確かに必要とされる資質だと土方に説明してやったあと、しかし、私は違うと言って立ち止まる榎本。だったら、あんたは何だと聞く土方に、間抜けなロマンチストさねと答える榎本。
彼は土方に先立って望楼へと続く階段を上りながら、薩長のやっている事は何だ、徳川の力を奪い取って山分けしているだけではないかと非難し、私は何もないところから国を作り上げたかったのだと言いながら、見たまえと土方に函館の夜景を見る様に勧めます。水は清く土地は肥え、地下には様々な資源が眠っている、この地を踏んだ時私はここなら新しい国が作れると確信した。薩長にはりあって、我ら自身の手で国を作るのだと気持ちが高ぶったものだと熱く夢を語る榎本。そんな榎本を見つめながら、俺は今まで死に場所を求めてきた、その横であんたは、今の今まで本気で薩長に勝つつもりだったのか、と呆れた様な土方。もちろんさねと言い切る榎本。あんたは馬鹿だと土方。お褒めの言葉と受け取っておくよと榎本。
しかし、夢は覚めたと急に冷静に戻る榎本。醒めた以上、今まで私に力を貸してくれた人々を救うのが私の仕事だと言って窓から離れ、反対側にある腰掛けに座ります。そして土方を見つめながら、実は戦が終わったら牛を飼うつもりだったと話し始める榎本。牛?と意外そうに聞き返す土方。何万頭もの牛だ、と再び夢の話に熱が入ってくる榎本。でかい話だとつり込まれる土方。牛の乳は飲んだ事があるかと聞く榎本。汚らわしそうに、無いと答える土方。榎本は土方の側へと歩み寄って一緒に窓の外を眺めながら、牛の乳は滋養に富んでおり、そこからはバターやチーズが作られると話を続けます、チーズ?と聞き慣れない名にとまどう土方。さっき食べたサンドウィッチに入っていたものだと教えてやる榎本。牛の乳だったのかと気まずそうな土方。美味かったろうと聞く榎本に、素直にああと答える土方。やがてはこの国の人もチーズを食する様になる、その日の為にこの地に牧場を作るつもりでいた、この大地を開拓して農業や牧畜を盛んにして人々を豊かにする、そして薩長が作る国よりもずっと素晴らしい国を作ってみせると抱いていた大志を語った榎本ですが、しかし、全ては夢に終わったと現実に戻ります。
そこに、榎本を捜していた大鳥がやってきます。彼は分散していた各地の指揮官達が帰ってきたと伝え、不安がっている彼等に、総裁から一言、言ってやって欲しいと頼みます。これにすぐに行くと答える榎本。彼は、土方にも一緒に来てくれと声を掛けます。

「榎本が蝦夷地に旧幕臣に依る新しい国を作ろうとしていた事は、間違いなく本気でした。彼の自信の根拠はその麾下に従えた海軍力にあり、その計画は津軽海峡を封鎖してしまえば新政府軍も手が出せないという計算の下になりたっていました。そして、そうこうしている内に旧幕臣達が続々とやって来て、心おきなく開拓にいそしむ事が出来るはずというのが榎本の描いた青写真でした。
彼はまた国際法に通じており、独立国となる為には諸外国と条約を結んで国として認めて貰う必要があると知っていました。そして、蝦夷地平定直後に函館に商館を持つ各国と話し合いを持ち、自分たちの体制が整い次第条約の締結を行うという段取りまで付けています。しかし、開陽の沈没、甲鉄艦の新政府への引き渡しによって彼我の海軍力は逆転し、彼の構想は脆くも崩れ去る事になったのです。
この榎本は、降伏後一旦は獄に下がりますが、すぐに許されて農商務省大臣など新政府の要職を歴任する事になります。このことから、榎本は最初から新政府と通じており、蝦夷地に依ったのは不満を持つ旧幕府の勢力を蝦夷地に集めて一網打尽にするためだったとする説もあります。さらに、土方を撃ったのは新政府軍ではなく、降伏の段取りを付けた榎本の差し金だとする説もあり、島田や相馬達が榎本からの仕官の誘いを断ったのはこの為ではないかと考えられなくはありません。しかし、幾ら何でもこの説は穿ちすぎでしょうね。もしそうだとしたら、ここまで激しく抵抗する必要は無かったはずですから。」

以下、続きます。

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コメント

榎本も大鳥も共に学識や教養があり、立派な人だったと思います。だからこの戦いの後、新政府からの要請に応じて、その能力を発揮する事が出来たのでしょう。
それに比べて、土方の旗下にいた島田や相馬は新政府に対する「意地」がありますよね。
相馬が切腹したのも、このあたりに原因があるのかと思ってました。

投稿: merry | 2006.01.25 16:34

新選組ファンとしては、意地を貫いた島田や相馬に拍手を送りたいですよね。
それに比べて、栄爵に包まれた榎本はという気もしますが、
彼の能力や実績を正当に評価してやるべきかなという気もしています。
このドラマに描かれた榎本ならば、
認めてあげても良いのかなという気がしてくるから不思議ですね。

投稿: なおくん | 2006.01.25 20:15

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