義経 44の4
義経 第44回 「静よさらば」その4
和泉国の浜。夕暮れ時になって、仲間の消息を求めて辺りを探っていた弁慶が戻ってきました。一日中歩き回ったものの、誰の姿も見えなかったと元気の無い弁慶。しかし、彼が沈んでいるのはそのせいばかりではありませんでした。彼は後白河法皇が義経と行家追討の院宣を出し、その事で知康が鎌倉に赴いたという噂を聞き込んで来たのです。あまりの事に、俄に信じかねた義経は、直ちに都に立ち帰ると叫び声を上げます。
都に帰る途中、荒れ寺に身を隠す義経達。闇の中、その寺に近づく兵達の姿がありました。弁慶と2人で、兵達を迎え撃つ義経。多勢に無勢の中、果敢に戦う2人ですが、隠れていた静が兵達に捕まりそうになります。そのとき、突如として風が舞い起こり、空に舞った妖のものが兵達に襲いかかりました。溜まらず静の手を離す兵達。やがて眩しい光と共に鬼一法眼が姿を現します。法眼の発する奇声を聞いた兵達は、もののけが現れたと、我先に逃げ出してしまうのでした。
久闊を叙す義経と法眼。義経は弁慶と静に自分の師として法眼を紹介します。法眼は修行中に西の海の嵐を知り、その海の上を漂う青白い亡霊見て不吉を感じ、山を下りてきたのでした。その亡霊が平知盛だったと知り、嘆く法眼。西国への道を絶たれた義経は都に戻ると言いますが、法眼は彼が都に戻れば争乱の渦となると反対し、義経に京にこだわることなく自分の都を探すが良いと諭します。義経は離れ離れになった郎党達の事を気に掛けますが、法眼は彼が息災でさえあれば自ずと郎党は集まってくると答えてやります。そして、追手の掛かる前に一刻も早く立ち去れと忠告を与え、義経達を見送った後、彼らが逃げ易い様に法力によって月明かりを隠してやるのでした。
とある山中で休息を取る義経達。その前に現れた兵達。彼らは義経達を捕らえんと襲いかかってきますが、そのとき駿河次郎、伊勢三郎、佐藤忠信の三人が加勢に現れます。思わぬ味方の出現に喜ぶ義経達。しかし、敵と戦っている隙に敵の首領に静が捕らえられてしまい、彼女を人質を取られた義経はやむなく敵の言いなりになって太刀を捨て、縄を首に掛けて敵に背を向けます。彼の自由を奪った上で背後から襲いかかってきた首領の攻撃を巧みに交わし、素手で応戦する義経。主の苦闘を目にした郎党達は、彼を救うべく駆けつけ、義経と戦っている首領を切り倒してしまいます。
再会を喜ぶ義経主従。しかし、喜三太と義久の行方は判らないままでした。なんとか京に戻って法皇に会い、追討の院宣を取り消して貰わなければならないと言う義経に、とりあえず吉野の金峰山寺に向かおうと提案する弁慶。義経は彼の言葉に従い、熊野詣の一行として吉野に向かう事に決めます。
「このあたりの展開は、吉野に向かった事以外は全てドラマにおける創作です。ここで鬼一法眼が出てくるとは思わなかったのですが、やはり存在感はありますね。
吾妻鏡に依れば、和泉国の浜に流れ着いたのは、伊豆右衛門の尉・堀の彌太郎・武蔵房弁慶並びに静の4人でした。このうちの2人はドラマには登場していませんね。さらに吾妻鏡には、後に鎌倉方の取り調べを受けた静の供述が記載されているのですが、それに依れば彼らは一旦天王寺の辺りに潜伏した後、静一人を残して行方をくらましたとあります。静は一両日中に迎えを寄越すという義経の言葉を信じて隠れ家で待っていたところ、馬を送ってきたのでこれに乗り、3日掛かって吉野へたどり着いたと記されています。」
金峰山寺にて数日を過ごすうち、疲れが出たのか寝込んでしまった静。義経達の正体に気付いた寺の者達は、僧兵を繰り出して彼らを捕縛しようと襲ってきます。次郎、三郎、忠信が彼らを引きつけている間に、裏から抜け出してさらなる山奥へと逃げ出す義経、静、弁慶の三人。
無人の堂に隠れている義経達三人。そこに僧兵達を巻いた次郎達もやってきました。この先、大峰山から大台ケ原を抜け熊野に向かうしかないと言う義経ですが、静の足ではこれ以上付いていくのは無理でした。彼女を気遣う郎党達ですが、静は足手まといになる位ならここに残ると自ら言い出します。弁慶は、この先の大峰山は女人禁制であり、どのみち静を伴う訳には行かなかったのだと、自ら残留を決めた静に礼を言います。義経は静に都の母の下に帰る様に告げ、一人で帰るという静に次郎と忠信を供に付けてやります。
雪の山中、別れを惜しむ義経と静。静は自分の笛をお守りの代わりにと義経に渡し、義経はこの笛を静と思うと受け取りました。別れを告げ去っていく静。その後ろ姿を何時までも見送る義経。
「吾妻鏡に依れば、義経を追って吉野にたどり着いた静が、彼と一緒に過ごしたのは五日の間の事でした。ところが、義経の正体に気付いた金峰山寺の衆徒達が蜂起する気配が見えたので、義経は山伏の姿に変身してさらなる山奥へと逃亡を図ります。静も途中までは同道したのですが、吉野の奥の大峰山は女人禁制とあってそれ以上は進めず、義経は静に持っていた金銀を分け与えた上で供を付け、京に戻る様に算段を付けたのでした。
このあたり、義経記に依れば、足手まといになる静を連れて行く事に難色を示す郎党達の声を聞いた義経が、泣く泣く静を都に戻る様に説得したとあります。ドラマでも、静が再三に渡ったて義経の足手まといになる様子が描かれていましたよね。義経と静が互いに別れを惜しむ様は尋常ではなく、お互いに離れては近づき、容易な事では別れようとはしません。峰に上り、谷に下りて影が見える限り義経を見送っていた静ですが、遂に峰の向こうに姿が見えなくなると、山彦が響くほどに叫び声を上げて悲しんだと記されています。
義経記では静の供に付いたのは侍2人と3人の雑色だったとありますから、侍の数だけはドラマと一致していますね。ただし、その侍の名は記されておらず、忠信と三郎だったという事はありません。」
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コメント
ドラマでは静との別れ同様に、萌との別れも涙を誘いました。一方、鬼一法眼の登場はインパクトありましたね。
投稿: しずか | 2005.11.12 00:41
しずかさん、コメントありがとうございます。
このドラマでは、萌も健気な女性に描かれていますよね。
ただ、ここで別れてしまうと、
最後を共にする女性は居ない事になりそうですが、
どうなるのでしょうね。
鬼一法眼は確かにインパクトがありました。
ドラマの始めの頃を思い出して、懐かしかったです。
投稿: なおくん | 2005.11.12 08:04