義経 39の2
義経 第39回 「涙の腰越状」その2
夜の満福寺。公文所別当大江広元に宛てて、文を認める決意をした義経。切々と義経が語る言葉を、弁慶が文字に写し取っていきます。
鎌倉に入れて貰えぬ身を憂い、頼朝との間にはもはや骨肉の情は無いのかと恨みの言葉から始める義経。以下、義経の回想。
雪の中を、2人の幼子を連れ、懐に乳飲み子を抱いて逃げる常磐。
泊まる家とてなく、ようやく見つけた川船の中に眠り、船と共に名がされていく親子。
子等と共に自害をしようとし、義朝の形見の小刀を見て思いとどまる常磐。
清盛の前で命乞いをする常磐。乳飲み子の牛若を見て、都に住む事を許す清盛。
常磐の前で、少年に成長した牛若に竹とんぼを作ってやる清盛。
重衡、知盛とすまいに興じる牛若。それを疎ましげに眺めている宗盛。
母から平家の人々と会ってはならぬと言われ、自分は何者なのかと叫ぶ牛若。
鞍馬寺に送られ、母と別れなければならなかった牛若。
新宮十郎から系図を見せられ、自分が源氏の一族であった事を知る紗那王。
清盛が自分の父の敵と知り、困惑のあまり流れに身を投じる紗那王。
青年となり、昼は寺の修行、夜は武術の修行に明け暮れる紗那王。
紗那王に脅威の芽を感じた平家に追われ、都を出る決意をする紗那王。
蓮華王院にて、清盛と最後の逢瀬をする紗那王と源平の宿命を教える清盛。
父の終焉の地尾張にて元服した義経。
父とも慕った清盛に、弓を引く覚悟があるのかと義経に問いかける藤原秀衡。
郎党を従い、兄頼朝の下へと馳せ参じる義経。
黄瀬川で、頼朝との対面を果たした義経。
頼朝から秀衡について問われ、その人物の大きさを称える義経。
清盛よりも頼朝との兄弟の絆が大事、その絆を生涯の拠り所としたいと願う義経。
真っ直ぐな義経を見て、流人として韜晦しながら生きてきた自分を顧みる頼朝。
(回想終わり)
神仏に願を掛けた起請文も験が無く、もはや神仏にも見放されたらしい。この上は広元に頼るほか無く、兄に取り次いでくれるよう幾重にもお願いする次第です、と文を締めくくった義経。
義経が語り終えた時には、既に夜が明けていました。これならば、必ずや頼朝も心を動かすであろうと太鼓判を押す弁慶。彼は義経に休むように勧め、自らは清書をし、鎌倉へ届ける様に手配する事にします。世に言う「腰越状」は、この日鎌倉に届けられました。
「同じ様な回想シーンが多いのがこのドラマの特徴ですが、腰越状は義経の過去から現在までの境遇を切々と綴ったものですから、まあ仕方がないと言えるでしょうか。腰越状は、吾妻鏡にその全文が記載され、また平家物語や義経記にも記されている史上最も有名な手紙として知られます。
手紙の流れは概ねドラマにあったとおりですが、意図的に讒言という言葉を省略していましたね。腰越状においては、義経は平家追討の功を讒言の為にないがしろにされたと訴えており、その讒言者の実否を糺さず、鎌倉に入れても貰えないので自分の素意を述べる事も出来ないと嘆いています。この讒言者とは梶原景時の事を指していると思われますが、滝沢義経は他人を悪し様に言うキャラクターではなく、意図的にこの部分を割愛したのでしょうね。
また、奥州以前の義経の境遇についてはほとんど判っていませんが、腰越状に書かれた文面によって僅かに推測する事が可能です。義経は、混乱する京を離れて諸国を流浪し、遠い片田舎を住みかとして土民百姓に仕えさせられたと記しており、鞍馬寺からすんなりと奥州藤原家にたどり着いたという訳ではなさそうですね。その間には、言いしれぬ苦難の道のりがあった様です。
そして、頼朝との思想の違いを見せつけるのが、自分が官位を受けた事はむしろ源家にとっての名誉だという下りです。義経は遂に朝廷の影響を廃した武家政権を打ち立てるという頼朝の真意を理解出来なかったのですね。頼朝がこの手紙を読んだとしたら、おそらくはこの一文によって義経を見捨てる覚悟を決めたのでは無いでしょうか。
この腰越状は鎌倉幕府の正史である吾妻鏡に記載されているにも係わらず、後世の創作ではないかとする説があります。その中の言葉に当時はまだ使われていなかったものがあるからで、一説に依れば吾妻鏡の編纂時に平家物語を参考にして挿入されたのではないかと考える人もいます。
しかし、だとしても、この手紙から窺える義経の心情は悲しく哀れです。この手紙がなければ判官贔屓という言葉も生まれなかったかも知れませんね。」
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