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2005.09.20

義経 37の2

義経 第37回 「平家最後の秘密」その2

鞍馬寺を訪れ、毘沙門天に祈りを捧げる義経。その背後に、師の覚日律師が現れます。仏に仕える身らしく、戦勝は祝わず、再会出来た事をのみ喜ぶという覚日。

苦悩する義経を見た覚日は、いっそ何もかもを捨てられよと忠告します。修羅の道が険しければ逃げればよいと言う師の言葉に、そういう道もあるのかと気付いた様子の義経。そこに、弁慶が迎えに現れます。彼の姿を見た義経は思い直し、今の自分には郎党が居る、たやすく何もかも捨て去ることは出来ないとと言い残し、鞍馬を後にします。義経の覚悟を知り、その行く末の難儀を思いやる様に瞑目する覚日律師。

身を清め、熊野権現の誓紙に、頼朝に対して二心は無いと起請文を認める義経。

「義経が頼朝に対して異心を抱いていないと認めた起請文を送った事は、吾妻鏡に出てきます。これを受け取った頼朝の反応ですが、芳しいものではありませんでした。九州の範頼は次々と書状を書いては子細を知らせて来ており、頼朝もまたその意を十分に伝える事が出来ている。これに対して、義経は独断専行する事が多く、自分の機嫌が悪い事を知って初めて書状を寄越してきたのは許し難い事だと、頼朝の怒りを買う結果となったとあります。せっかくの義経の起請文も、かえって裏目に出る結果となってしまったのでした。」

京、東山の長楽寺で髪を下ろして仏門に入った建礼門院。

義経の屋敷。涼やかな白い狩衣姿で、一人瞑目する義経。そこに現れた弁慶が声を掛けますが、義経は黙って出ていこうとします。弁慶が呼び止めると、義経は弁慶を供に、吉田山の建礼門院の下を訪れると言い出します。壇ノ浦以来、彼が抱いていた疑問に対する答えを確かめに行こうと考えたのでした。

吉田山、建礼門院の住まう寺。弁慶を門前に残し、案内に従って門内へと入っていく義経。彼が廊下を渡っていくと女性の笑い声が聞こえ、その方に目をやると転がる駒を追って男の子が現れます。義経に気付いて顔を上げたその子は、守貞親王と入れ替わった安徳天皇でした。壇ノ浦で能子がその子を庇っていた事を思い出す義経。そこに明子と輔子が現れます。義経の姿に気付いた明子達は、義経の目から逃れるように安徳帝を囲んで奥へと消えていきます。

建礼門院に拝謁する義経。彼はすぐにでも疑念を確かめたい心を抑え、差し障りの無いあいさつから切り出します。そんな義経に、これまで平家の為にのみ生きてきた自分であったが、髪と供にその道を捨てた、それは初めて自分の意思で決めた事であったと述懐する女院。それを聞き、何も捨てる事が出来ない自分に比べて、女院は強いと答える義経。さらに、自分には平家を滅ぼした事、兄から疎まれた事が重くのしかかっていると言いかけた義経ですが、この世は思わぬ事ばかりにてと言葉を濁します。

女院からここに来た本当の訳を聞かれた義経は、親王に会いに来たと答えます。訝る女院に、血の繋がらぬ親王を女院が側に置いているのはなぜかと、いよいよ核心に迫る義経。女院は、最後まで共にあった自分たちが守り抜く事が、亡くなった者達への供養に繋がると答えますが、義経は血の繋がらぬ親王であるのに、女院と顔立ちが似ていると追求の手を緩めません。動揺が隠せない女院と、扉の外で小刀を手に聞き耳を立てている明子と輔子。女院は遂に、親王までも引き離すと言うのなら、自分の命を取る事だと捨て身の覚悟を示します。そんな女院の覚悟に接し、義経は全てを悟りました。その上で、兄弟が似ているのは当然の事、幼くして産みの母と別れたのは親王も自分も同じ、この上は末永く親王を慈しまれよと女院の意に添った言葉を返します。義経の真意を知った女院は、義経とその名を呼び、彼の情けある気遣いに対して両手を付いて感謝の意を表します。そして、親王を仏門に入れ、僧侶としての生涯を送らせると誓うのでした。

門を出ようとして、弁慶に声を掛けられる義経。ふと振り向くと、建礼門院、輔子、明子、そして能子が彼を見送っていました。義経に向かって頭を下げる能子、輔子、明子、そして建礼門院。女院に頭を下げられて、慌てて跪く義経と弁慶。奥へと姿を消した女院達を見送り、門を出る義経主従。弁慶から、疑念は晴れたのかと聞かれた義経は、全ては自分の胸の内に収めたとのみ答えるのでした。

「ドラマでは建礼門院と共にあった守貞親王ですが、実際には建礼門院ではなく上西門院の猶子となり、仏門に入ることなく成長しています。そして、鎌倉幕府と後鳥羽上皇が戦った承久の乱の後、幼くして即位した実子の後堀川天皇を後見する太上天皇として、政治の表舞台に登場する事になります。
そうした史実はともかくとして、ドラマのこの場面は、身を挺してでも平家最後の秘密を守ろうとする建礼門院と、全てを知りながら武士の情けで気付かぬ振りをした義経とのやりとりが見事で、見応えのある場面だったと思います。」

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