義経 27の3
義経 第27回 「一の谷の奇跡」その3
一ノ谷近くにまで来た時、突然軍勢を止め、兵を二手に分けると言い出す義経。いぶかる安田義貞に、本隊を率いて一ノ谷に向かう様に命じ、自らは70騎を率いて一ノ谷の背後を突くと宣言します。義貞は危ぶみますが、諸将が次々に賛意を示すのを見て、くれぐれも三種の神器を奉じる様にと念を押した上で、義経の策を承知します。
1184年(寿永3年)2月7日、卯の刻。東の木戸口の範頼軍の攻撃から、戦いの火ぶたが切って落とされました。矢合わせの後、激突する源平の両軍。攻め寄せる源氏軍ですが、平家方の戦意も高く、形勢は互角です。
知盛の陣。範頼が動いたという知らせを聞き、和睦の話をしていたのではないのかと憤る知盛。彼は直ちに重衡と共に、東の木戸口の防戦へと向かいます。
間道を抜け、一ノ谷を目指す騎馬武者の群れ。
一ノ谷、平家の陣。前面に逆巻く海、狭い浜にひしめく平家軍。その背後の切り立った崖の上に、巨大な三日月を背に現れた義経麾下の70騎の武者達。
崖の上から一ノ谷を見下ろす義経。沖合いにひしめく平家の軍船。足下の浜に張り巡らされた赤い陣幕。東西の木戸口から遠いこのあたりの兵は、数こそ多いもののどこか緊張感に欠けている様子です。
一ノ谷に通じる坂を見つけてきた景季に、今少し時を待つと答える義経。いぶかる景季には答えず、鷲尾三郎にこの崖を獣は通うかと問いかける義経。そして鹿は良く通うという答えを聞いた義経は、この坂を下りると決断を下します。驚きつつも義経の決断に賛意を示し、武者押しの声で答える郎党達。
崖下の平家の陣から空に視線を移した義経の目に、雲間から疾走して来る白馬の姿が映ります。その白馬の中に自らの運命を見た義経は、静かに鞭を持った右手を上げ、やがて崖を下れと下知を下します。義経に続き、次々に崖下へと馬を踊らせる義経麾下の武者達。あまりの急斜面に、倒れる馬が続出しますが、委細構わず全軍は駆け下って行きます。
頭上から降ってくる源氏軍に気付いた平家方。あわてふためいて具足を付け、武器を取って義経軍に立ち向かおうとしますが、不意を突かれたために統制が取れておらず、ばらぱらになって敵に向かっていきます。義経達は、崖から下りた勢いでもって平家方の中に切り込み、縦横無尽に暴れます。
その様子を沖合の御座船から見ていた宗盛は、何よりもまず御座船を守れと下知を下します。あまりの急変に、不安一杯な表情で、安徳帝を抱きしめる時子。
生田の森。源氏勢相手に奮戦する知盛と重衡。そこに、一ノ谷が逆落としに攻められたとの知らせが入ります。驚いた知盛は、重衡に命じて救援に向かわせます。
一ノ谷。大軍を翻弄し続ける義経とその郎党。義経は陣屋に火を掛け、さらに混乱を増長させる策を取ります。
御座船から、崩されていく自陣を見つめながら、和睦を勧める法皇からの文は、自分たちを欺くための謀であったかと気付く宗盛。
救援に現れた重衡ですが、義経達の勢いは止まらず、続々と味方が討たれていきます。あたりに倒れているのは、平家方の兵ばかり。馬から下り、次々に敵を倒していく義経。その様子を見ていた重衡は、弓で義経を仕留めようとしますが、それに気付いた弁慶の長刀で、馬から突き落とされてしまいます。それを見た義経は、重衡を生け捕りにせよと命じ、兵達が倒れた重衡の周りを取り囲みます。重衡に名を訪ねた義経は、幼い頃共に遊んだ重衡であった事に驚き、重衡もまた相手があの義経であったと知り、思わず幼名の牛若と呼んでしまいます。義経は感情を押さえ、重衡を捕虜として連れて行く様に命じますが、心中は複雑な様子です。
義経の奇襲によって混乱を来した平家方は、やがて東西の木戸口も突破され、沖合の船をめがけて敗走していくのでした。その様子を、御座船から呆然と見守る宗盛。ようやく御座船にまでたどり着いた知盛は、あの崖を駆け下りた者は何者かと悔し紛れに叫びますが、宗盛は言葉を発する事すら出来ません。
日が傾く頃、平家方を一掃した一ノ谷で、沖合を見つめる義経。そこに範頼が現れ、義経の逆落としの奇襲を激賞します。しかし、梶原景時は三種の神器はと厳しく問いかけ、義経が沖合を去っていく御座船の中にあると答えると、奪い損ねたと言い捨てて不機嫌そうに去っていきます。気まずくなった雰囲気を取りなす様に、範頼は黙って義経の肩を持って激しく揺すり、その功をたたえてやります。
都に凱旋した義経軍。そこに待っていたのは、都人による賞賛の嵐でした。群衆に取り囲まれ得意げな郎党達に混じって、囚われの身となった重衡の姿も共にありました。
牛車の中から、凱旋将軍である義経を見守る後白河法皇。義経の軍事能力を知った法皇は、自らの手駒として義経を使う事を考えます。
以下、明日に続きます。
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