義経 26の3
義経 第26回 「修羅の道へ」その3
一ノ谷、平家の陣。海を見つめながら、やはり源氏は来るかと宗盛に問いかける時子。宗盛は、三種の神器を取り戻す事が法皇にとっての急務である以上、必ず攻めてくると答えます。そして知盛は、一ノ谷の守りは万全であり、安心しておられよと続けます。
未だ何も沙汰が無かった維盛の処遇を決めよと、重衡が宗盛に対して催促をします。宗盛は、通盛の下に付けと決めますが、かつて総大将を勤めた維盛は、この降格とも言うべき決定に辛そうな様子です。知盛は資盛に対して宗盛の陣を任せると言いますが、資盛はそれよりも兄の様子が気がかりな様です。そのとき、沖合に水軍が現れたとの知らせが届きました。すわ敵が現れたかと驚く時子ですが、知盛は海を見るや、あれは我らの味方である阿波の水軍であると答えます。
ドラマでは通盛の下に付けと言われて落ち込んでいた維盛でしたが、実際には一ノ谷の陣には居らず、屋島に居た様です。維盛を初めとする重盛の流れを汲む小松一門は、宗盛が主導権を握った平家の中にあっては孤立しており、都落ちに際しても都に残るのではないかと危惧されていました。実際にその中の資盛は一度都に帰り、叡山に逃れていた後白河法皇を頼ったのですが、取り次ぐ者が居なかったために、一門の後を追ったとされます。そんな中で、義仲に敗れて平家凋落の原因を作った維盛の立場は、微妙なものがあったのでしょうね。そして、平家が太宰府を追われて西海に彷徨う事になった時、維盛、資盛の弟である清経が、悲観のあまり海に飛び込んで自決するという騒ぎもありました。その後勢力を盛り返した平家でしたが、小松一門の孤立は深まるばかりだった様です。そして、遂に維盛は戦う気力も失い、最前線から離れた屋島に籠もってしまいます。残された資盛、有盛、師盛、忠房の兄弟達は、揃って本陣である一ノ谷を離れて三草山に陣を張りました。これなども、傍流に追いやられた彼らの運命を象徴する様な出来事ではありますね。
一ノ谷の沖合に現れた阿波の水軍とは、阿波民部重能の率いる水軍の事でしょうね。重能は、清盛の時代から仕えていた平家の家人で、大輪田の泊に波除けの島を築く工事の責任者として指揮に当たっていた事もある人物です。この時、あまりに難航する工事を推し進めるために人柱を立ててはどうかと清盛に進言したところ、清盛はこれを退け、代わりに教典を埋める様に指示しました。その甲斐あってかようやく島を築く事が出来たのですが、この事からこの島は経ケ島と呼ばれる様になります。その重能は、屋島の御所を築く事にも尽力しており、この時期の平家を支えた有力者の一人でした。そして、壇ノ浦の戦いに向けて、知盛と因縁を重ねて行く事になります。
鎌倉、大倉御所。一ノ谷まで迫った平家に対する戦略についての軍議が開かれています。頼朝は、法皇に対する立場を有利にするためにも、三種の神器を確保する様にと範頼に厳命する事とします。頼朝にしてみれば、平家は既に眼中になく、平家を滅ぼした後に最大の敵となって立ちはだかるであろう法皇の姿が見えている様です。
京、範頼の陣。平家の軍勢が10万に達したという知らせに、6万の鎌倉軍はどう戦うべきか容易に結論が出ません。さらに、都に居る平家縁の公家から鎌倉軍の動きが平家方に筒抜けになる恐れがある事も悩みの種でした。そこで義経は、警護のためと称して間断なく兵を動かしていれば、いざ軍を動かたとしても、いつもの警護なのか出陣なのかは区別が付かないはずと策を出します。それを聞いた範頼は、義経を搦め手の大将に任じ、その戦略を問い質します。義経は、播磨を通って敵の背後に出ると答え、それを受けて範頼は正面から戦いを挑む事を決意します。そして、矢合わせは2月7日早朝と告げる景時。
義経の宿所。帰ってきた義経を迎える郎党達。そこへ、うつぼがお徳からの差し入れを持って現れます。そこで義経の側に侍る静を見て、いぶかるうつぼ。義経は静とうつぼの双方を紹介しあいますが、うつぼは静が義経の側室であると悟り、衝撃を受けた様子です。
1184年(寿永3年)1月29日、六条御所。範頼と共に平家追討の院宣を下される義経。
義経の宿所。出陣は今夜と告げる義経に、準備は全て整っていると答える郎党達。
夜、出陣の儀式を行う義経主従。弁慶を初めとする郎党達は、都での暮らしが楽しかったのは静が居てくれたおかげと礼を言い、静は都にて皆の無事の帰りを待っていると答えます。そして、義経と静に気を利かせて、席を立っていく郎党達。義経は静に、自分の帰る所は静の所だと告げます。
花開いたオダマキを濡らして降り始めた雨。
雨音のする中、白拍子らしく、出陣のはなむけに武運を祈る舞を贈る静。舞い終えて頭を下げた静に、参ると告げて座を立つ義経と、平伏したまま無言で見送る静。
準備の整った郎党達と共に出陣していく義経。部屋に残り、義経を見送った姿勢のまま、涙を流す静。
夜の都大路を、一ノ谷に向けて出陣して行く義経主従。その後を追ううつぼ。彼女は義経に静の面倒は自分が見ると伝え、義経は一言頼むと言い残して先を急ぎます。その義経一行の後ろ姿を、涙しながら見送るうつぼ。
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