義経 16の2
義経 第16回 「試練の時」その2
実家を訪れた政子。牧の方に頼朝の所在を確かめています。それに対して、政子にとある噂を伝える牧の方。
野に出て、草摘みをしている義経。静にやろうと思ったのか、野菊を摘んで嬉しそうにしています。そこへ通りかかった政子。彼女は義経に気づかずに、あたりを窺いながら先へと急いで行きます。その後を不審そうに追う義経。
しばらく道を行くと、頼朝の声が聞こえてきました。その方を見やると、亀の前と仲良く戯れる頼朝の姿があります。思わず隠れた義経の目に、怒りに震えながら二人を見つめる政子の姿が映りました。走り帰ろうとする政子と鉢合わせをした義経は、手にしていた花を政子に手渡し、何かの間違いではと頼朝を庇います。しかし、無言で立ち去る政子。
その夜、鎌倉の空を焦がす炎が上がります。そして、郎党達によって救わて、義経の屋敷に運ばれた亀の前。彼女は、煤だらけの哀れな姿になっていました。
政子を問いつめる頼朝。しかし、政子はひるむことなく頼朝の不実を責め、あの家が無くなれば良いと開き直ります。そのあまりに強い態度に、それ以上の追求をあきらめた頼朝。
翌朝、義経の館で放心したように座っている亀の前。そばで気遣わしげに見守っている静。そこへやってきた義経。頼朝に知らせようかという義経ですが、亀の前はそれを断ります。政子の恐ろしさが、骨の髄まで染みた様子です。伊豆へ帰って、畑を耕したいという亀の前を、痛ましげに見つめる義経と静。
まだ燻っている、亀の前の家の焼け跡に呆然とたたずむ頼朝。彼は落ちていた貝殻を見つけます。それは、亀の前が海で拾ってきたものでした。その貝殻を拾い上げ、亀の前に思いを馳せていた頼朝でしたが、やがて貝殻を元通りに置き、立ち去って行きます。
ドラマでは、ただの夫婦喧嘩程度で収まった騒動ですが、実際には頼朝の政権を根底から覆しかねない騒動に発展していました。
亀の前は伊豆の侍吉橋太郎入道の娘で、容貌はさほどではないが心映えの優しい女性であったとされます。頼朝は祐筆の藤原広綱の屋敷に亀の前を囲い、広綱の手引きで亀の前と密かに会っていました。ところが、これが時政の妻であり政子の義母にあたる牧の方の知るところとなります。そして、牧の方はドラマにあったように、政子にこの事実を伝えました。
頼朝の不実を知った政子は、頼朝を責めるより前に、牧の方の実家の兄である牧宗親に命じて、広綱の屋敷を襲わせます。不意を突かれた広綱は抵抗するすべもなく屋敷を壊され、宗親によって追い出されてしまいました。広綱は友人の大多和義久の屋敷に逃げ込み、たまたま留守にしていた亀の前もまた騒ぎを知って、義久の下へ逃げて来ました。
政子は証拠の品々を並べて頼朝を責め、亀の前を引き渡すように要求します。窮した頼朝は行方が判らぬとしらを切りましたが、政子の怒りは収まりません。
面目をつぶされた頼朝の怒りは、政子に対してではなく、その命を受けて広綱を攻めた宗親に向けられました。頼朝は宗親をだまして義久の屋敷に連れ込み、広綱の面前で自分に対する不忠を責め、そのもとどりを切ってしまいます。
宗近は時政の下に走り、頼朝の自分に対する所業を訴えました。事情を聞いた時政は、これは北条一門に対する侮辱であるとして、一門を率いて鎌倉を発ち、所領のある伊豆へと帰ってしまいます。これはほとんど謀反と言っても良い行為だったのですが、頼朝は時政を討つでもなく、ひたすら恐れました。そして、時政の息子である義時はまだ鎌倉に居ると聞いて義時を呼び、義時ある限り鎌倉は安泰であるとして、義時の加増を約束したと言います。
この事件は、頼朝と北条氏の関係を端的に表していると言えそうですね。そして、尼将軍と言われた政子の勝ち気でかつ周到な性格、執権として鎌倉幕府を揺るぎないものとした義時の沈着さとその実力の程を窺い知るエピソードと言う事も出来そうです。
以下、明日に続きます。
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