新選組!37の2
新選組! 第46回「東へ」その2
おたふくで、おまさに別れを告げる原田。薩長の世になったら清国に渡り、水滸伝の様に盗賊の頭になると言って、おまさをあきれかえらせます。
原田については、江戸に帰った後、彰義隊に参加して上野で戦死したというのが通説なのですが、清国に渡って馬賊の頭になったという伝承もあります。これは、明治40年頃、原田自身が松山に居た弟や甥に会いに来たという事を、甥の妻が多摩産業新聞社の記者に語った事をきっかけに広まったものです。それによれば、原田は坂本龍馬を暗殺した後間もなく清国へ渡り、馬賊の群れに投じ、やがてその頭となって、日清、日露の両戦役では日本の為に尽くしたと言います。松山の親族を訪ねたのは一晩だけの事で、夜尋ねてきて翌朝には帰って行ったと、そのとき目撃したという姪の長男の証言も残っています。原田の親族は、原田が龍馬暗殺の真犯人だと思っており、原田が生きていると判ったらどんな災いが降ってくるか判らないと考え、ことさら冷たくあしらって引き留める事もしなかったと言います。
この伝承の真偽を確かめる術はありませんが、このドラマの原田なら、馬賊の頭になっていてもおかしくないという気がしますね。ちなみに、長男の茂は後に繁治郎と改名して明治37年に亡くなりますが、婦人との間に6男4女をもうけており、その血筋は今も脈々と続いているそうです。
永倉の腕の中で、宇八郎の名を呼んで息を引き取ったおその。永倉は、おそのを斬った官軍の兵士を見つけ、敵とばかりに斬って捨てます。
史実のおその(小常)は、慶応3年12月11日に亡くなっています。まさに新選組が京都から引き上げるという間際の日の事で、永倉は翌日に聞かされたと言います。小常は薩摩兵に斬り殺されたのではなく、永倉の長女「磯」を産んだ後の肥立ちが悪く、病没したのでした。永倉は引き上げのどたばたの中で身動きが取れず、小者に小常の遺骸の埋葬を頼みます。一方知らせを聞いた「磯」の乳母は、産まれて間もない「磯」を抱いて永倉に会いに来ます。永倉は、屯所の前の八百屋の座敷を借りて、我が娘との対面を果たしました。「磯」はその後、乳母夫妻に磯子として育てられ、長じて尾上小亀という女役者になります。小亀はたいそうな人気役者となり、その噂は東京にいる永倉にまで聞こえ、明治24年頃、京都を訪ねた永倉は生き別れとなっていた娘との再会を果したと言います。ちなみに、小常は島原に出ていた芸妓で、市川宇八郎とはなんの係わりもありません。
間道を探していて、薩摩兵に斬られてしまった山崎。
実際に山崎が倒れたのは、淀または橋本の戦いにおいてと言われます。隊士が残した記録では、横倉甚五郎は「淀にて討死」と記し、島田魁は「橋本にて討死」と書いており、どちらの戦いで傷ついたのかは良く判っていません。新選組始末記では、淀で三カ所に鉄砲傷を受けたとありますね。このとき副長助勤を努めていた程の幹部がどこで倒れたかはっきり判らないほど、当時の戦場は混乱を極めていた事が伺えます。ただ、山崎は記録にあるように戦場で死んだのではなく、川村三郎(近藤芳助)が「大阪の八軒屋「京屋」で見た」と書き残している事から、生きて大阪まで後送された事は確かなようです。
捨助の案内で逃げ込んできた山崎達を、官軍の兵士達から庇う寺田屋のお登勢。
寺田屋騒動をはじめとして、薩摩藩のご用宿として常に危険にさらされながら薩摩と関わってきた寺田屋ですから、お登勢に凄まれて逆らえる薩摩藩士はそうそう居なかった事でしょうね。ただし実際の寺田屋は、鳥羽伏見の戦いによって起こった戦火に巻き込まれて焼け落ちています。現在の寺田屋は、明治に入ってすぐに再建されたもので、幕末当時そのままの建物ではありません。今、寺田屋を訪れると、薩摩との密接な繋がりを示すかのように、敷地に隣接して立派な慰霊碑が建っているのを目にする事ができます。
1868年(慶応4年)1月9日、大阪。大阪城を引き上げる新選組が、隊旗を先頭に大阪の町を歩いて行きます。周りを取り囲む町衆達の反応は冷たいもの。石さえ飛んでくる始末です。
戦いに敗れた新選組に対して、京では「壬生浪を打払い」と書いた瓦版が出回りました。京都の町衆にとって、新選組はどこまで行っても壬生浪だったのですね。大阪でも事情は同じでした。大金の拠出を強要された豪商が多かった分、余計に冷たかったかも知れません。敗者に冷たいのが世の常とはいえ、こうした町衆の反応は、身から出た錆という部分はあったにせよ、町の平安を守ってきたつもりの彼らにとっては辛いものだった事でしょうね。
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