新選組!37
新選組! 第45回「源さん、死す」
冒頭、近藤狙撃シーンの再現。近藤が撃たれたのを見て、あたりを見回す島田。民家の窓に人影があるのを認めると、馬の尻を叩いて走らせます。島田は叫び声を上げながら、隊士二人を引き連れて民家に向かって駆け出します。民家から脱出する篠原と加納。倒れ込んだ近藤を乗せたまま街道を疾走して行く馬。
伏見奉行所で、山崎の治療を受ける近藤。近藤の敵を討つと言って立ち上がる土方達。それを必死に止める井上。井上の説得に折れ、近藤と沖田を大阪城に送る事にした土方。
墨染で近藤を邀撃したのは、ドラマにあった篠原と加納のほか、阿部、富山、佐原、内海の計6人だったようです。彼らの役割は、前回書いたように資料によって異なり、篠原の日記では自らが鉄砲を撃ったとし、阿部の証言では撃ったのは富山で、篠原と加納は伏兵として街道脇に居たとなっています。近藤が撃たれた後、島田ら隊士が馬の尻を叩いて走らせたのは阿部の証言にあるとおりですが、そのとき現場に居た島田の日記では、近藤自らが重傷にも屈せず馬に鞭打ったように書かれています。また、ドラマでは島田らが切り込んでいきましたが、実際に切り込んだのは御陵衛士達の方でした。これも、篠原と阿部とでは記述が異なっており、篠原は自ら槍を振るって一人を突いて、加納がこれに留めを刺し、もう一人を阿部と富山が切り伏せたと書いていますが、阿部の証言では二、三人は倒したが、近藤を襲うべく伏せていた篠原と加納は持っていた槍を捨てて逃げてしまい、このために近藤を討ち漏らしたと彼らを非難しています。
さらに、このとき斬られた人物にも何通りかあって、まず永倉の残した「浪士文久報国記事」では、石井清之進が鉄砲に撃たれた後で斬られ、草履取りの文吉もまた討ち死にしたとあります。次いで、「島田魁日記」では、井上新左衛門という隊士と奴の芳介が戦死したと書かれています。さらに子母澤寛の「新選組始末記」では、斬られたのは石井清之進と下僕久吉となっており、それぞれ異なった記述になっています。このうち討たれた隊士については、「京都ヨリ会津迄人数」という隊士名簿に井上新左衛門の名があり石井清之進の名が無いことから、墨染で命を落としたのは石井だったのかも知れないと考えられています。下僕(馬丁)の名前については、残念ながら特定出来ていないようですね。
近藤が伏見奉行所に帰り着いた時の様子は、「新選組始末記」に収録されている「稗田利八翁思出話」に詳しく書かれています。この日非番で門の前にぼんやり立っていた稗田の前を、猛烈な勢いで走りすぎる馬が居ました。時間は午後3時か4時頃だったと言います。稗田はこの頃入って間もない新隊士だったのですが、馬が前を通り過ぎてから乗っていたのが近藤であると気づき、近藤が「誰か居ないか、誰か居ないか!」と叫ぶのを聞いて側へ駆け寄ります。しかし、近藤は彼を無視して馬から降りるとどんどん奥へ入っていき、新入りの稗田は訳も判らずただおろおろするばかりでした。そのうち、お供の連中が集まってきて近藤に従って奥へ入って行き、代わりに永倉が「一番隊、二番隊の者は続け!」と叫びながら飛び出して来て、これに10人ほどの隊士がついて出て行きます。やがて、永倉達が口々に「いまいましい野郎だ。」と言いながら帰って来たため様子を聞くと、現場に急行したものの、そこにはもう誰も残って居なかったという事でした。ドラマでは井上に止められた永倉でしたが、実際には直ちに下手人探しに飛び出して行っていたのですね。そして、重傷にもかかわらず、近藤が自分の足で歩いていたというのは、ドラマにあったとおりのようです。ただ、その日の内に歩けたという事はなさそうで、稗田は、その夜は隊士一堂まんじりともせず心配して過ごしたと書き記しています。
また、近藤が土方に注意していた薩摩藩からの挑発ですが、実際にもあったようです。「浪士文久報国記事」によれば、薩摩、土佐、長州の兵隊が、毎夜奉行所の近辺に現れ、鉄砲を撃ったり、槍で塀を突くなどの挑発行為を行ないましたが、新選組ではこれを無視し、全く騒がなかったとあります。
近藤と沖田が収容されたのは大阪城とするのが一般的ですが、大阪奉行所屋敷に退いたとする説(佐藤彦五郎書簡)もあります。いずれにしても、新選組始まって以来の大戦が始まるというのに、後方で待機していなければならなかった近藤と沖田の無念は、察して余りあるような気がします。二人とも、きっと陣頭に立って戦いたかったことでしょうね。
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