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2004.10.12

新選組!32

新選組!32 第40回「平助の旅立ち」

1866年(慶応2年)7月26日、徳川宗家を相続了承した一橋慶喜。この時点ではまだ将軍職は継ぐとは言っていないのですね。「出陣する!自ら采配を振るう」と二条城で宣言する慶喜公。「兵達の志気も上がるに違いなかろう」と慶喜に下問されて、「これ以上の励みはありません」と答える松平容保。「なんとしてでも勝たねばならない。これは、亡き家茂公の弔い合戦でもあるのだ」と言い切った慶喜は、さらに8月8日、御所に参内し、孝明天皇から「速やかに追討の功を奏すべし。」という勅命を与えられています。しかし、そのわずか3日後、幕府軍の一部が戦線を離脱したという知らせが京に届くと、慶喜は「出陣は止めた」と言い出します。「長州征伐は?」と聞く容保に、「取りやめだ」と答える慶喜公。「それはいけない」と諫める容保に慶喜は「今は、日本人同士が戦っている場合ではない。家茂公が亡くなられた事は良いきっかけになる」と言って、容保を呆然とさせてしまいます。

撤退した幕府軍というのは、全権を委任され小倉城に入っていた小笠原長行でした。小倉藩は関門海峡を挟んで長州軍と戦っていたのですが、長州の高杉晋作が率いる部隊に城を奪われ、あえなく敗退したのでした。長行もやむなく小倉を離れ、京都へ戻って来ます。長行から敗戦の報告を聞いた慶喜は、とても幕府軍に勝ち目が無い事を悟り、最も幕府が傷付かないで方法で事態の収拾を図る策を講じたのです。慶喜としては、混乱した事態を収拾すべく最善の策を採ったつもりでした。しかし、それは傍目にはどう見ても前言を翻したとしか受け取りようがなく、周囲は混乱し、幕府の権威は失墜するばかりでした。

徳川慶喜は、たびたび前言を翻しながらも、その年の12月5日、皆に推される形で第15代将軍となります。そして、その20日後、孝明天皇が、突如として崩御されてしまいました。孝明帝は天然痘で亡くなったとされていますが、未だに暗殺されたとする説も根強く残っています。

「帝が!」と驚く近藤に、頷く土方。尊皇攘夷の嵐が吹く中で、孝明天皇その人は幕府そして松平容保の最大の理解者であり続け、そのことが公武合体派にとってその寄って立つ論拠ともなっていました。その孝明天皇の死は、幕府を支えていた最も大きな柱を失ったという事に他ならず、幕府の崩壊へと時代の流れを一気に加速させる事になります。

お幸の家。部屋の外の廊下に井上が控えています。部屋の中には寝ているお幸と枕元に座っている近藤、そして診察に訪れている孝庵が居ました。お幸の脈を取って、難しい顔をしている孝庵。悲痛な表情を隠せない近藤。診察を終えた孝庵が、別室で近藤に話しかけます。「なぜ、こんな具合になるまでほっておいた?体がぼろぼろだ」そう言われても何も答えられない近藤と土方。その向う側には、沖田も居ます。「身内か」と孝庵に聞かれ、答えに困っている近藤に代わって土方が「そうだ」と答えます。「今夜は、なるべく側に居る様に」そう言って帰ろうとする孝庵を近藤は上がり框に座って見送り、土方は途中まで送っていくつもりなのでしょう、土間へと降ります。その横合いから沖田が「ありがとうございました」と声を掛けます。そう言われて、意外そうな孝庵ですが、沖田はわずかに頭を振って何も言うなと孝庵を制します。沖田の気持ちを察した孝庵は、「たまには診せに来い」とだけ言い捨てて、帰って行きます。

お幸の看病をしている井上。玄関で、沖田と火鉢を挟んで黙って座っている近藤。そこへ、孝庵を送っていった土方が帰ってきます。「こんな事になるなら、もっと早く妹に会わせれば良かった」とつぶやくように言う近藤に「居場所は判っていたのだろう」と答える土方。近藤は「お幸が元気になってから会いたいと言ったから」と後悔している様子です。

近藤達にお孝についての報告をしている山崎。「名前は確かにお孝ですが、本人に聞くと生まれは若狭、親はまだ国元で達者との事です。」「人違いか?」とあせる近藤ですが、そこへ沖田と土方に連れられたお孝がやってきます。しかし、その娘にお幸と似たところは、どこにもありませんでした。それを見て、呆然としている近藤。

「近藤先生。」とお幸を看病していた井上が部屋を飛び出してきます。それを聞いてお幸の部屋へと急ぐ近藤。粉雪が舞う中、再び廊下で控えている井上。部屋の中で、お幸の手を取ってやる近藤。苦しい息の中、「妹は?」と弱々しく聞くお幸に近藤は「今、こっちに向かっているところだ」と答えてやります。「妹の事を、よろしくお願いします。」ととぎれとぎれに頼むお幸に、黙って頷いてやる近藤。「先生。」となおも言いかけるお幸ですが、近藤は顔を振って「何も言うな。」と制止します。おゆきは嬉しそうに微笑んで「おおきに。」と小さな声でつぶやきます。それを聞いて、大きく頷いてやる近藤。やがてお幸は目を閉じ、息を引き取って行きました。お幸の手を強く握りながらその死に顔を見つめる近藤は、とても悲しそうな顔をしていました。

その同じ時刻、どこかの料亭で会合を開いている伊東一派。杯を飲み干した伊東は、「新撰組を離脱する」と門人達に向かって宣言するように言い出します。驚いたように、伊東の方を見やる面々。その中に藤堂平助の姿もありました。「尊皇とは言っても、新撰組はあまりにも幕府に寄りすぎた。私が望むのは、朝廷を中心とした新しい世だ。これからは、尊皇に身を捧げたいと考えている。」と言い放つ伊東に、藤堂ははっとして伊東を見やります。しかし、彼が何も言わない内に、口々に賛同の意を声に出して誓う門人達。酒宴を続ける伊東一門と離れて、一人廊下に立ち、庭を眺めている藤堂。そこへ、加納鷲雄がやってきます。「お前の立場は判る。辛いとは思うが、これからは伊東先生の為に尽くして欲しい」と加納に言われて藤堂は、「判っています」とやや苦しげに答えます。「先生が呼んでいる」と言われ、黙ってうなずく藤堂。

1867年(慶応3年)1月3日。新撰組の屯所で、島田が女の子達と羽子板をして遊んでいます。島田は負けっ放しのようで顔が墨だらけです。その様子を欄干の上から眺めている沖田を見て「沖田さんもどうですか」と島田が誘います。にっこりと笑って、下に降りていく沖田。彼の子供好きは変わっていないようですね。

「釈尼恵幸」と書かれたお幸の位牌を拝む近藤。そこへ、土方が入ってきます。「伊東さんが仲間を集めて行っている新年の集いは近藤さんが許したのか」「帝のこともあるので、控えめにやると聞いたが」「永倉も呼ばれている。仕事も断り無く休んでいる。ただの宴とは思えない」そう土方に言われて、呆然とした様子の近藤。

伊東達が集う料亭の廊下で踊っている遊び人風の男。なんと、山崎なんですね。さすがに桂吉弥は落語家だけあって、堂に入ったものです。そこに永倉がやってきました。扉を開けて入った永倉をにこやかに迎い入れる伊東。その向う側には斉藤が先に来て飲んでいます。

近藤に報告をしている山崎。それを聞いて斉藤がと驚く近藤。「何をやってんだ」と言ったのは原田。「斉藤さんは今日の剣術の指南役を断り無く休んでいます」と続ける山崎の報告を聞いて、「これが士道不覚悟でなくて何なんだ」と憤る土方。「伊東一派の集まりに、その二人が参加しているというのは何とも妙な話だ」という武田に続けて土方は「まとめて切腹だ」と言い出します。しかし、近藤は「何か訳があるはずだ」と慎重に構えます。

伊東の前で、加納と藤堂から酌を受けて飲んでいる斉藤と永倉。永倉は「そろそろ本心を聞かせて欲しい」と伊東に聞きますが、「私は新撰組を背負って立つ、永倉先生、斉藤先生と、膝を交えて酒が飲みたかっただけだ」と伊東ははぐらかします。永倉は、さらに「しかし、ここに呼ばれた本当の訳を聞いていない」とつっこみますが、「それは、これから」と伊東に交わされてしまいます。「仕事がある」と言い出す斉藤に、「心配は無用。近藤さんの了解を得ているから大丈夫」と笑って答えた伊東ですが、急に真顔になって杯を置き、おもむろに「私は、新選組を離れるつもりです」と切り出します。「ついては、両先生も、行動を共にして頂きたい」と迫る伊東に、呆然とした様子の永倉と斉藤。思わず永倉達を見やる藤堂。「せっかく新選組が力を付けてきたというのに、今の有様はどうであろう。組を守る事ばかりに気を取られて、内ばかりしか見ていない。時代が大きく変わろうとしているときに、我々がなすべきは、日本国のため、命を捧げる事だ。私は、私自身の手で本来あるべき新選組を作り、その上で近藤君、土方君を迎え入れたいと考えています。」さすがに伊東の論には、隙がありません。見事に新選組の抱えている弱点を突き、その本来の目的であった尊皇攘夷の魁となるという目標を再度掲げることにより、自らの立場を見事に正当化しています。ただし、ここまで世話になった会津藩や幕府を裏切る事になるという一点を除いての事ですが。

新選組屯所の廊下を歩いている近藤、土方、原田、井上の面々。「伊東がこのところ、薩摩や公家の連中と会っていることは、間違いない。やつが、何かを企んでいる事は確かだ。そして、それに永倉と斉藤も取り込まれたんだ。」と土方が情勢の分析をするのを聞いて、「ちくしょう、なんで俺を誘わないんだ。」と腹を立てた様子の原田。いつもながらどこかずれていますが、そんな原田を横目でにらむ土方。それには構わずに近藤は、「まずは言い分を聞いてからだ」と相変わらず慎重さを失っていません。「すぐに誰かに様子を見に行かせる。源さんお願いできますか」と近藤が言うのを制して、「ここは俺に行かせてくれ。伊東の野郎ね冗談じゃない」と原田が使者を志願してきます。どうやら彼は、伊東が自分に声を掛けなかった事が不満な様子ですね。しかし、それを近藤や土方の前で露骨に見せてしまうところが、如何にも原田らしいのですが。

再び、料亭。伊東と加納が席をはずし、永倉、斉藤、藤堂の3人だけになっています。「お前はどうする」と永倉に聞かれた藤堂は、「私は、伊東道場の人間として先生に付いて行く」と答えます。永倉は、さらに続けて「伊東さんは、お前の事を認めているのか」と藤堂に尋ねます。「どうして、そんな事を聞きます。」「昔は、名前すら覚えてくれて無かったはずだ。」永倉は、よく昔の事を覚えていますね。「伊東先生は、私が薦めて京に上られたのだ。」とややむきになって言う藤堂の言葉を聞いて、永倉は「そうだった、悪かった」と謝ってやります。藤堂は、「いえ、ただ、皆さんにはそれぞれの考えもあると思うので、どうかご無理しないで下さい。」と永倉達に気を使いますが、永倉は黙って頷くばかりです。その横から一人で酒を飲んでいた斉藤が、「悪いが、俺は新選組に残る。」と言い出します。それを受けて「俺も組を離れる気はない。山南さんとそう約束した」と永倉も藤堂に向かって告げます。黙って頷いている藤堂に向かって永倉は、「平助、俺は伊東さんに新選組に残るようにお願いする」と言い出します。「近藤さんの側には、時勢を正しく見極められる人が必要だと思う」という永倉の言葉に、藤堂は「はい、私もそれが出来れば一番だと思ってます」と答えます。そこへ駆け込んできた原田。「話は聞いた!しかし、お前等も大胆だな」と言って、永倉達の前に座り込みます。訝る永倉に、原田は「仕事そっちのけでこんなとこ入り浸って、近藤さんは、怒っているよ」と答えます。それを聞いて、「ちょっと待て。」と意外そうに聞く斉藤。「局長は了解済みと聞いています」とフォローする藤堂ですが、「話が違うな。何も、聞いてないってさ。」という原田の言葉を聞いて、「話が通っていないのか」と驚いてしまいます。「だから、俺が呼びに来た。いつまでも、断り無く休むつもりかって。鬼の副長も怒っているぜ。」と原田が言うのを聞いて、思わず顔を見合わせる永倉と斉藤。「なぜ俺を呼ばないかな!おかしいじゃないか。永倉、原田と言えば、新選組の二本柱だぜ」と相変わらずどこかずれた怒り方をしている原田を余所に、「嵌められたらしい」と永倉に向かって言う斉藤。「先生に聞る」と立ち掛ける藤堂を「必要無い」と制して、斉藤は席を立ち掛けます。そこへ戻ってきた伊東は、永倉達を見やって「気持ちは、固まりましたか」と聞いてきます。黙って、伊東を正面から睨み付けている永倉と、後ろ目に伊東を睨む斉藤。その様子を見て、いぶかしがる伊東ですが、座ってにこにこ笑いながら料理を食べている原田に気が付いて、はっとした様子です。なんでこいつが居るんだという具合に、思わずため息をついた伊東に向かって藤堂は、「先生、永倉さんや斉藤さんがここに来る事は、近藤先生の了解を得ては居ないのですか」と詰め寄ります。「その通り」と答えた伊東に、永倉は立ち上がって「どういうつもりだ」と問い質します。それを受けて伊東は、上座に座り直し、永倉に向かって、「つまりは、もう新選組には戻れぬ、という事」とにこやかに答えます。さらに「もはや、我らと共に来て貰うより道はない。私が考える新選組には、両先生は欠く事が出来ない!」と声を励まして言った伊東は、「全ては二人に、我らの下に来てもらう為の策」と続けます。これを聞いた永倉は、伊東に向かって「あなたが国を思う気持ちは、近藤局長と並ぶだろう。しかし、近藤さんとは、大きく違っている。あの人は、策を用いる事はしない。それは、人を信じるからだ。しかし、あなたは策を弄した。それは、あなたが人を信じず、己も信じてないからに他ならない!」と言い放ちます。「残念ながら、この身を預ける事は出来ない。失礼する!」と言って帰ろうとする永倉に、「今戻れば切腹です。」と声を掛ける伊東。「それも運命だ」と言い捨てて去ろうとする永倉と斉藤に向かって、伊東は脇差しを抜いて、「待たれよ」と叫びます。伊東は脇差しを自分の首筋に当て、永倉達を睨み付けています。それを見て思わず「先生!」と叫ぶ藤堂。「何のまねだ」と言う永倉に向かって、伊東は「今、私の真意を近藤君に知られる訳には行かない。ここまでの秘密を打ち明けた以上、察して貰いたい。」と叫びます。永倉は落ち着いた調子で、「やめなさい。そこまで信じているなら、何にも心配はいらない。ここで聞いた話は一切漏らさないと約束する」と伊東に語りかけます。「斉藤も」「ああ」そうしたやりとりを、面白そうにながめながら、料理を食べ続けている原田。その原田に向かって「行くぞ」と声を掛けて永倉は帰って行きます。「なぜ、俺を誘わないのかなあ。」と捨てぜりふを残して帰っていく原田。あんたは誘われたら、付いて行くんかい?残された伊東は脇差を鞘に収め、酒をあおります。「なんとも強情だ」とつぶやく伊東と、複雑な様子の藤堂。

近藤達に報告している永倉と斉藤。「は判った」と言う近藤に続けて、「あの男の狙いは何だ」と問い質す土方ですが、永倉は「それは答えられない」と伊東との約束通り、秘密を守ってやります。土方は「おまえもか」と聞きますが、斉藤は黙って俯いているばかりです。「お前らがした事は」と言いかける土方を近藤は、「それ以上は良い」と制します。土方は「事情はどうあれ、断りもなく仕事を休んだ事は償ってもらう」と続け、「覚悟している」と答えた永倉に向かって近藤は「しばらくの間、謹慎して頂く」と土方が何か言う前に申し渡してしまいます。それを聞いて不満な様子の土方ですが、「承知」と答えた永倉と斉藤を近藤は部屋から出してしまいます。「伊東は新選組を割る気だ。」と言う武田に、「まだ判らない」と答える近藤。「斬りますか」と迫る沖田ですが、近藤は「今の新選組にとって必要な人物だ」と言ってこれを制します。「芹沢のときも、同じ事を言っていた」と言う土方を受けて「ここは私に任せて欲しい」と武田が近藤に申し出ます。「あなたが?」と疑わしげに答える近藤ですが、「これは言うなれば、試衛館一派と伊東道場一派の争い。どちらにも属さないこの私こそが、仲を取り持つにはふさわしい。」と武田は懸命に売り込みます。言うだけ言って、近藤の返事も待たずに部屋を出て行く武田。その後ろ姿を見送って、「妙に張り切っている」と言う沖田に「河合の一件で、すっかり評判を落としたから、あいつも必死になっている」と冷たく答える土方。「任せて大丈夫か」と心配する井上に、「駄目だ」と切り捨てる土方。そこへ、尾形が見廻組の佐々木が来たと告げに来ます。

以下、明日に続きます。

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コメント

なおくん、こんにちわ!
新撰組、毎週見ておられるのでしょうね。
関門海峡を挟んで長州軍と戦っていた・・・というのには
下関に住み、萩生まれの私は過敏に?反応してしまいます。
うちの旦那さんは高杉晋作や吉田松陰が大好きです。

投稿: うさうさ | 2004.10.14 13:15

高杉晋作や吉田松陰は、私もファンです。彼らが生きていれ
ば、明治後の日本ももう少し違った形になったのではないかと
いう気がします。松下村塾へ行ったときは、そのあまりの小さ
さに驚いた覚えがあります。でも、そこから沢山の英傑が出た
のだと思うと、感慨深いものがありました。このドラマで高杉
が出てこなかった(声だけはありましたが)のは、ちょっと残
念な気がしています。

投稿: なおくん | 2004.10.14 19:41

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