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2004.09.15

新選組!28の2

新選組! 第36回「対決見廻組!」その2

西本願寺屯所前で、素振りの稽古をする大勢の隊士達。これは姫路の本徳寺で行ったロケでの部分ですね。お堂の廊下から隊士達を見下ろして、「新選組も、大所帯となったもんだな。」と感慨にふけっているのは井上です。「本当ですね。」と相づちを打ったのは沖田。「ようやくここまで来たという思いもあるが、壬生浪士組を旗揚げした頃が懐かしい気もする。」「最初は、13人でしたからね。」「六番組長にして頂いたのは嬉しいが、なんだかこそばいくてしょうがないよ。」「良いんじゃないですか、源さんは、近藤さんの兄弟子なんだし。なんなら、一番組長替わってあげましょうか。」「勘弁してくれ。」何気ない会話ですが、新選組の組織が巨大化してきたにも係わらず、依然として中枢を占めているのは試衛館のグループである事を示しています。井上は近藤達にとっては確かに重要な人物ではありましたが、幹部の座に座っているのはその指揮官としての能力を買われたというより、試衛館において近藤の兄弟子であったという位置づけの方が大きいという事なのでしょうね。

「周平、頑張っているか!」隊士達の中にいた周平に向かって声を掛けてやる沖田。「はい。」疲れてはいるものの、稽古は苦になっていない様子です。「次は?」「えーと、八つどきから、松原先生の柔術の稽古です。その後は、えーと、武田先生の兵学の講義があります。」「しっかり。」井上から激励されて、周平はにっこり笑って去っていきます。どうやら、前回の井上の作り話のおかげで、彼もすっかりやる気になっているようですね。

新選組では、壬生に居た当時から文武館という道場を建てており、ここでは剣術の稽古のほか、隊士達に教養を身に付けさせるために文の講義も行っていたようです。そして、西本願寺に移ったこの頃には、隊士の中で文武に特に優れた者を師範役として任命し、各隊士に対する教育係としていました。剣術師範の筆頭が沖田で、以下永倉、新井、斉藤など。柔術師範には篠原を筆頭に松原と梁田。文学師範は伊東を筆頭に武田、尾形など。この文学師範は、兵学の講義も行っていたのでしょうか。その他、槍術師範が谷三十郎、砲術師範が清原と阿部、馬術師範が安富となっていました。

「ねえねえ、源さん、昨日お寺の中をぶらぶらしていたら、本堂の奥に宝物を仕舞ってある部屋を見つけたんです。後で行ってみましょうよ。」と突然、子供のような事を言い出す沖田。「勝手にうろつかない方が良いぞ。」と大人の分別を見せる井上。しかし、沖田は「なんだか、面白そうなんですよ。仏像とか置いてあって、ね。行ってみましょうよ。」とどこまでも無邪気です。井上はあきれたように、「子供のような真似はするな。日頃から、新選組一番組長として、恥ずかしくない行動...」と諭すように言いかけますが、沖田はそれを途中で遮って「源さんを誘ったのが間違いだった。」とふくれたように言って去っていきます。

この沖田と井上の関係は、新選組始末記に出て来ます。沖田は、壬生の屯所の近所や壬生寺で近くの子供達を集めては鬼ごっこなどをして遊んでいたのですが、そこへ井上がやってくると「井上さん、また稽古ですか。」と言ったとあります。それを聞いた井上は、「そうと知っているなら、黙っていてもやって来たらよかりそうなもんだ。」と嫌な顔をしたものだそうです。まだまだ子供っぽい沖田と年長者としてそれを叱る井上の関係が、甥っ子とおじさんのような感じで微笑ましいですね。

今度は、土方を捕まえて話をしている沖田。「宝物?」「なんか、部屋の中に面白そうな物が部屋の奥に一杯あるんですよ。見に行きましょうよ。」と副長相手に寺の中の冒険を誘っています。まあ、沖田だから許されるというか、土方相手に無邪気なものです。そこへ谷三十郎がやってきます。なにやら憤慨している様子で、沖田と土方の間に割り込み、「土方君。」と話しかけてきます。「はい。」と何事かというふうに、しかし極力冷静に答える土方。「どうも近頃、ないがしろではないか。」と谷に言われ、土方はやや狼狽気味に「何がですか?」と聞き返します。黙って、自分を指さす谷。にこやかに「そんな事は無いです。」と言う土方に、谷は「近藤家とは、縁戚なのを忘れてもらっては困る。」と言って土方を睨み付け、去っていきます。黙って頭を下げた土方は谷の後ろ姿を見送り、その姿が見えなくなってから、「あいつが良いのは、家柄だけだ。態度はでかいし、腕だって大した事ない。引き入れたのは、間違いだった。」といまいましそうに沖田に告げます。「まあ、人が増えれば、いろんな奴が居るって事ですよ。」と相づちを打つ沖田。土方にこき下ろされている谷ですが、以前に紹介したとおり、実際の谷三十郎は腕も立ったし、どちらかといえば謙虚な人間だったようです。その場を去ろうとする土方に、「ねえ、ねえ、ねえ、宝物見に行きません?」と無邪気な子供のように誘いかけますが、「遊んでいる暇は、ねえんだ。」と冷たくあしらわれます。後に残された沖田は白けた表情で、「みんな変わっちゃったなぁ。」とつぶやきます。どっちかというと、沖田が変わらなさすぎるのですけどね。

松原に稽古をつけて貰っている周平。「左足を引け!」と叱責が飛びます。見事に松原の腕をねじ上げてみせる周平。「いいぞ、それでこそ、近藤先生の跡継ぎだ。」という松原の言葉に、頷く周平。「いくぞ。」とさらに稽古を続ける松原と周平ですが、それを遠くからいまいましそうに見つめる一団が居ます。

伊東の自室。伊東と向かい合っているのは藤堂平助。加納と篠原が座っています。「面白いものだな。側から見れば盤石に思えた新選組も、こうして中に入ってみると綻びだらけだ。そうは思わないか、加納君。」「新選組は、これまでにも度々の仲間割れを繰り返してきています。」そういうやりとりを、複雑な表情で聞いている藤堂。それに気付いたか、伊東は「とはいえ、近藤勇という男、私から見たところでは、高い志を持った一廉の人物だ。お前が心酔するのも、判らぬではない。」と言ってやります。これを聞いた藤堂は、うれしそうに「はい、近藤先生は、常に我々の言葉に耳を傾けてくれます。」と皆に語りかけますが、伊東はそれにかぶせるように「しかし、裏を返せば、人の話を聞きすぎるという事。それが近藤君の弱さでもある。」と、近藤を批判するような事を言い出します。それを聞いて、自分の感情を誤魔化すような表情になって、「はい。」とだけ答える藤堂。

お堂の前で、居合いの稽古をしている斉藤。その向こうの階段に、河合と松原が並んで座っています。「たとえば、長州の奴らというのはさあ、こっち(お金)の方はどうやって稼いでいるのかなあ。」と松原。「そりゃ、やっぱり、藩からお金が出ているんじゃないですか。」と答える河合。それを聞いた松原は勢い込んで、「幾らくらいかな。」とさらに河合に聞きます。「いえ、私に聞かれても困りますが。でも、大した額じゃないんじゃないですか。みんな、粗末なもの着てるし。」と河合。意外にちゃんと京都における長州人を観察しているようですね。それを聞いて、考え込む松原。そんな松原を見て河合は、「あれ、ひょっとして、例の斬っちゃった男の事、思ってます?」と言い出します。その二人の会話を聞いている斉藤。「若い女房が居てさ、これからどうやって生きていくのかなって。」としんみりして言う松原ですが、すぐに「いや、そんな心配してやる事もないんだけどな。」と誤魔化します。「まっちゃんは、優しいからな。」と河合。同期で同郷のこの二人は、相当に親しいという設定のようですね。その二人の横に来て、腰掛ける斉藤。「毎月、少しずつでも包んでやった方が良いのかな。」という松原に「まっちゃんの気が収まるんなら、そうしてあげた方が。」と同意する河合ですが、その横から斉藤が「止めとけ。」と止めます。「旦那を斬った男に、金を恵まれる。かみさんの気持ちになってみろ。」そう斉藤に言われて、黙ってしまう松原。「これ以上、深入りするな。」そう忠告して、斉藤は立っていきます。後に残されて、考え込んでいる松原。

「ねえ、付き合ってくれよ。」と今度は藤堂を捕まえて誘っている沖田。「これから、伊東先生の講義があるんです。」と言う藤堂は、なにやら本を抱え込んでいます。「あっ、沖田さんも一度いかがですか。」と反対に誘いますが、沖田は「駄目なんだよ。難しい話聞くと、眠くなっちゃうんだよ。ねえ、珍しい仏像とか、一杯しまってあるんだよ。見に行こうよ。」とあくまで、宝物の探検にこだわります。「ああ、今度。」と言いにくそうに断って、講義に向かう藤堂。「今度、今度ってさ、今度が来た試しなんかないじゃないか。」となおも食い下がる沖田ですが、「ごめんなさい、また誘って下さい。」と藤堂は逃げる様に去っていきます。「もう...。」と子供のように拗ねている沖田。

兵学の講義をしている伊東。大勢の隊士が詰めかけています。「レジュメントとは、三大隊以上からなる隊の事を言います。」と教えているのは洋式軍学なんですね。そこへ、遅れてそっと入ってくる藤堂。「ブリガーデとは、2レジュメントからなる隊で、右側が首、左側補は尾となります。ディッシとは、2あるいは3ブリガーデからなる歩兵の事を言います。」とここまで言って、藤堂を見て「遅い!」と叱りつけます。「申し訳ありません。」としゅんとして謝る藤堂。

「一に、矢の勢いは、弓の強さによるものである。二に、鉄砲は、弾を持って事をなし、その勢いは薬...」と身振り手振りで講釈しているのは、武田観柳斎。しかし、彼の前に座っているのは、わずか二人です。「なんだ、このふぬけた様は。なぜ、みんな私の講義を聴きに来ない!」と不機嫌に叫ぶ武田。「呼んできましょうか。」と気を使って言う周平ですが、武田は「止めた、止めだ。ふざけるな。せっかく良い話をしようと用意してきたのに。冗談ではない!」と怒って後ろを向いてしまいます。それでも周平は「呼んできます」と言って、出て行きます。

新選組は、確かに幕府がフランス式軍隊を取り入れるのに合わせて訓練を洋式化していきますが、それはもう少し後になってからの事で、まだ暫くは従来通りの調練が行われており、指揮を執るのは武田でした。そして、洋式化された後も、曲がりなりにも武田が訓練の指揮を執っていたとする説もあります。また、伊東の洋式兵学については、彼はこんな知識を持っていたのでしょうか。伊東が主として納めたのは水戸学であって、兵学ではないと思うのですが。もっとも、ずっと後日になって御陵衛士となった時には、大開国を唱えて富国強兵策を主張するようになり、屯所であった月真院では、英語の勉強やロケット製造の方という火薬の研究をしていたとありますから、この頃には洋式軍学の素養も身に付けていたのかも知れません。このドラマにおけるこの場面は、武田の凋落を描くための伏線となっていきそうですね。

屯所の庭で、相撲を取っている一団。そこへ周平が駆けてきます。「兵学の講義が始まりますよ。」と声を掛けますが、座っていた浅野は「観柳斎の話を聞いても、役に立たないんだよ。」と冷たく答えます。「そうかなぁ。」「あの人の兵学は、古いんだよ。甲州流だかなんだか判んないけど、今さら弓の使い方教わってもさ。」と醒めた言い方をする浅野。周平は、諦めて帰ろうとしますが、後ろから「周平!」と声を掛けられます。思わず「はい。」と答えて振り向く周平。「特別に引き立ててられているからって、いい気になるな。」と言ったのは、大石鍬次郎です。「先生は、ぼやいてたぞ。とんでもないやつを、養子にしたって。」大石は、江戸の人ですが、日野で大工をしていたとも言われ、その時に佐藤彦五郎の道場に出入りするようになったとも言われます。そのことからか一説に近藤のお気に入りの弟子ともされていますから、自分を差し置いて近藤の養子となった周平に嫉妬を感じているという設定なのでしょうね。「あの人が、そんな事言うはずないから。」と気弱そうに答える周平に、大石は「調子に乗んじゃねえぞ。」と居丈高に言って、周平の腹に蹴りを入れます。思わずうずくまった周平ですが、大石に向かって組み付き、反撃に出ます。しかし、大石の仲間二人が加勢してきたため、周平は倒され、三人に寄ってたかって足蹴にされてしまいます。それを、黙って見ている浅野。彼の役職は、隊士を監視する諸士取調役なのですから、当然隊士のもめ事は許すべきではないのですが、何もしようとしません。どうも、このドラマの浅野は、徹底して駄目隊士として描かれていますね。私としてはちょっと悲しいです...。そこへ現れた井上。この様子を見て「何をやってるんだ。」と一喝します。「相撲の稽古をしていたんです。」といけしゃあしゃあと誤魔化す大石。「一人をよってたかって。そんな相撲があるか!」と叱りつけますが、周平は「大丈夫です。ちょっと、稽古に熱が入っただけですから。心配ないです。」と皆を庇います。

お幸の家を訪れている井上。近藤は、これから出かけるのか、お幸が羽織を着せる手伝いをしています。「周平の事は、放っておこう。」と近藤。「しかし、せっかくやる気を見せ始めたというのに、周りがあれでは、あいつが不憫でなりません。」といかにもらしい思いやりを見せる井上。「自分で乗り越えさせるんだ。今、俺たちが手を差し伸べたら、あいつはますます立場を悪くする。大人になる為の試練だ。」と昔の侍らしい、厳しい姿勢を見せる近藤。これを聞いて、井上はやむなく黙り込んでしまいます。「今日は少し遅くなる。」とお幸に向かって言う近藤。「気いつけて。」と答えるお幸。「私も、お供してはいけませんか。」と井上が聞きますが、「源さん、私には、若い隊士が従うから、心配はいらん。」と近藤は断ります。「行って参ります。」「行っといでやす。」とお幸に見送られた近藤の前に、若い隊士が二人控えています。近藤が出てくるのを見て、立ち上がって近藤に従って出て行きます。「新選組の局長ともなれば、色々ご苦労も耐えんのですな。」としみじみとした口調で言うお幸。それを聞いて、わずかにため息を漏らす井上。それを見て、お幸は、「こちらもこちらで、いろいろあるようですね。」と言ってやります。やはり、ため息で答えるだけの井上。

本堂の奥の宝物庫の扉を開ける人影。沖田と原田です。「行くぞ。」と言ったのは原田。沖田の子供っぽい誘いに乗ってくれたのは、同じく子供っぽさを多分に残している原田しか居なかったのですね。その背後から、藤堂が駆けてきます。「平助。」「やっぱり来ちゃいました。」それを聞いて嬉しそうな沖田と原田が藤堂と肩を組みます。「そうでなくちゃなあ。新選組、やんちゃ三人衆!ダアー!」と原田を中心にはしゃぐ三人。「しっー、行くぞ。」と原田に言われて、倉庫の中に入っていく三人衆。中には、きらびやかな宝物がぎっしりと並んでいるようです。「なかだか、罰が当たりそうだ。」と気弱な声を出す藤堂。「何、そんなの信じてるの。」とちょっと小馬鹿にしたような沖田。「俺なんかな、大仏の手のひらで寝た事があるんだぞ。心配するな。」と原田。彼が言うと、本当にやりかねないと思えるから不思議です。「おい、見てみろ、高そうなもんばっかりあるぞ。」「ねえ、左之助さん、近頃ちょっと自棄になってない?」と沖田に言われて、「なってる。なってる。」と言いながら宝物に手を掛ける原田。「ねえ、やっぱり戻りましょう。」と不安そうにいう藤堂ですが、「なんだよ、臆病だな。」と沖田は取り合いません。沖田は、なにやら巻物を広げて見ていますが、「さっぱり読めないや。」と妙に感心しています。そんな沖田に藤堂が真面目な調子で「ねえ、沖田さん、相談したい事があるんですけど。」と持ちかけます。「良いよ。」と軽く答える沖田。「伊東先生の事なんですが。」「伊東先生がどうしたの?」と聞き返す沖田ですが、藤堂は「あっ...。あ、やっぱりまだ言えない。」と口ごもってしまいます。「何だよ、それは。」と不満そうな沖田。「もうちょっとしたら、相談に乗って下さい。」と藤堂はその場を誤魔化します。「おい、ちょっと来てみろ。」と向こうから呼ぶ原田。「この絵、何だか中ててみ。」と掛け軸を広げて、破ってしまう仕草をする原田。さすがに見かねて、「置いておきなよ。」「破れたら、事ですから。」と止める沖田と藤堂ですが、原田は調子に乗って、ますますふざけています。しかし、つい調子に乗りすぎて、本当に掛け軸の絵を破いてしまう原田。「何やってんですかー!」と叫ぶ沖田。「やると思った。」と声が震えている藤堂。さすがに驚く原田。掛け軸を放り投げて「逃げろ。」と言いますが、藤堂に「ばれますよ。」、沖田に「まずいなぁ、これは大事になりますよ。」と交互に言われて、とうとう進退窮まり、「御飯粒、持ってこいー!」と叫びます。それを、あきれた様に見ている藤堂と沖田。

金戒光明寺の会津本陣を訪れている近藤と伊東。会津候と対面しています。「老中の中には、長州藩主に腹を切らせ、藩そのものを取りつぶしてしまえという意見もある。しかし、それを長州が黙って聞くとは思えない。もう、無駄な血を流しとうない。そこで、予は、藩主の命を救い、長門、周防のうち、周防一国のみを取り上げるという案を考えた。どう思う?」と近藤に意見を求める会津候。「おおせのとおり、出来うる限り無益な戦は避けるべきかと存じます。」と答える近藤。それを聞いて満足そうな会津候。「近藤に一つ頼みがある。」「はい。」「これより、薩摩藩邸に向かい、西郷に会ってくれぬか。」「はっ。しかし、何故に?」「薩摩は、長州の処分について、なぜか態度をはっきりさせん。本来なら、真っ先に長州征伐を言い出しそうなものを。」という会津候に向かって、伊東が発言します。「恐れながら、申し上げます。薩摩の本心は、長州が生き延びる事ではないかと私は思います。」と言う伊東の言葉を聞いて、いぶかしげに「なに?」と問い返す会津候。「はばかりながら、薩摩が今恐れているのは、長州より、むしろ殿。」「余じゃと。」「今、政の中心は京。そして、京で最も力を持っているのが、会津だからです。」「余は、ただ、この国を守りたいだけだ。」「薩摩の考えは、違います。薩摩にとっての悲願は、政の実権を握る事。長州を追い払ったのは良いものの、今度は会津が力を付けてきた。その会津を抑える為にも、長州に滅んでもらっては困ると、薩摩は考えているのではありますまいか。」とここまで伊東に言われて、困惑しきった様子の会津候。それを見て近藤は、「薩摩の真意、確かめて参ります。」と決然と言ってのけます。

薩摩藩邸を訪れている近藤と伊東。「わははは。」と豪快に笑っているのは西郷です。「そいは、思い違いごわす。」と笑顔で答える西郷。「しかし、薩摩は、長州征伐の準備を、いまだなさっておられないと聞きましたが。」と切り返す近藤。「おかしなこつ言われますな。長州征伐は、決定した訳ではごわはん。戦の準備は、正式に知らせがきてからち、思うちょりました。」と言い抜ける西郷。「それでは遅いとは思いませんか。」となおも食い下がる近藤。しかし「薩摩の兵をあなどってもらっては、困り申す。今夜知らせが来れば、明日の朝には出陣出来もんど。」と西郷は嘯きます。「西郷先生にお聞きしたいのですが。」と伊東。「どうぞ。」「今、主に西国の諸藩では、長州が撃たれた後は、次は己ではないかと、おびえていると聞きました。それゆえに、この度の長州征伐には、乗り気ではないと。」「ふーん、情けなか話しじゃ。薩摩は、そげな事はありもはん。考えた事もごわはん。」そう言って西郷は立ち上がり、近藤達の背後の敷居に立ち、腕を組んで庭を見やります。伊東は西郷の方を振り向き「先生のお言葉、信じてよろしいのですね。」と念を押します。「薩摩のお役目は、御所をお守りすること。禁門の一件で、恐れ多くも御所に向かって発砲した長州藩の罪は、未来永劫ゆるされる事ではごわはん。」そういう西郷の言葉を背中で聞きながら、厳しい表情をしている近藤。西郷は伊東の方を振り向いて「安心しやんせ。いざとなったら、長州の息の根は、おいどん達、薩摩が止めもす。」これを聞いて頭を下げる伊東と、依然として厳しい顔をしている近藤。

ここで伊東が言っている事は、正鵠を射ていました。幕府は軍備を洋式化するとともに、日本を幕府を中心とした郡県制に変えてしまおうという一つの方針を打ち出していました。すなわち、フランスの援助の下に強力な軍隊を得て主な大名を討ち滅ぼし、徳川家の下に新たな体勢の国を作り出そうと言い出したのです。この構想は小栗上野介から出されたもので、正式な政策という訳ではなかったのですが、これを伝え聞いた公武合体派の雄藩は、ことごとく興ざめしてしまったと言います。このまま幕府に協力していても、自分達もいずれ撃たれる側に回ってしまうと恐怖したからで、薩摩が倒幕に転じた主な理由の一つでした。

今回も三部作となってしいました。さらに明日に続きます。

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