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2004.07.19

新選組!20

新選組!第28回「そして池田屋へ」

さすがに力が入っていましたね。前宣伝が凄かっただけの事はありました。殺陣のシーンでは目まぐるしく場面が展開し、正直言って誰がだれだか見分けが付かない所もあったのですが、臨場感があって良い出来だったと思います。あのセットも細部まで作り込まれていて、本当の池田屋の様でした。どこかに保管しておいて見学させて呉れないでものですかね。

まずは、軍議の場面。山南総長は「ここは、会津に加勢を。」と提案。これに対して土方副長は、「戦の前から負けた時のことを考えてどうする。」と反発。この発言に山南は「あらゆることに備えて策を練っておくのが軍議ではないかっ!」と爆発します。総司が「山南さんも、怒鳴ることがあるんだ...。」と言ってうやむやにしてしまいましたが、この場面は今後重要な意味を持って来るのでしょうね。山南と言えば温厚なイメージがあり、このドラマでも堺雅人が知的な演技をしていますが、浪士組上洛の際に、組下の者の乱暴を注意しに来た村上俊五郎に対して烈火のごとく怒ったというエピソードや、禁門の変の際に自分の甲冑がないと言っておおごねをしたというエピソードから察するに、内には相当激しいものを秘めていたと思われます。この爆発もそうした山南の性格を表したものと思われますが、先週あった近藤に決意を促す進言などと合わせて考えると、なにやら生き急いでいるような印象を受けます。このドラマの山南は、土方以上に新選組の土台を早く完成させようと焦っているようにも受け取れ、そのあたりが土方との微妙なずれを生じさせて来るのかな、という感じがしました。

明日にでも会津藩に届けようという軍議に対して、「何を悠長な事を言っている、危機は迫っているのだ。」と的確な情勢判断をしてみせる武田観柳斎。おお、実に冴えていますね。彼を持ち上げた「ねこづらどき」としては、嬉しい場面です。彼はこの後も自ら軍師として居座り、なかなかの仕事ぶりを見せてくれます。

八木源之丞夫妻に、新選組の進み方を尋ねる近藤局長。それを受けて当惑する源之丞。いつもながら、伊東四朗の適度にコミカルな演技には好感が持てますね。少し考えた源之丞は、京都の町に火を付けて天皇を奪い去るなど罰当たりもいいところ、と近藤の決意を支持します。「攻めてくるいうんなら、戦うだけや。」すぐ後にそのとおりになってしまうのですが、京都の町衆にしてみればいかに長州贔屓とはいえ、自らの町に火を付けられるとなれば戦う方を選ぶでしょうね。わざわざこの場面を入れたのは、これから新選組が取る行動が、市民の平穏を守るための正当な警察権の行使であるという証明をしたかったのでしょうね。決して後世に言われるような「朝敵」となる暴挙ではなかったと源之丞の口から言わせたのでしょう。また、わずかに迷いの残る近藤に最後の決断をさせるためのものだったのかも知れません。

一方、知らせを受けた会津藩では、なんと新選組を見捨てるという決定が下されます。そこには、ここで新選組がしくじれば会津候は京都守護職を解かれ、国元へ帰れるという計算がありました。会津藩が守護職を辞めたがっていたというのは事実の様です。主として財政上の理由(守護職就任にあたり幕府から役料を貰っていましたが、それでは全然足りず、内実は火の車だったそうです)からの様ですが、そもそも京都守護職への就任そのものが望んだものではありませんでした。会津藩でも火中の栗を拾うようなものだと最初から判っており極力辞退したのですが、一橋慶喜や松平春嶽から強要されてやむなく就任したのでした。この池田屋事件の前に会津候は、一時京都守護職を離れ軍事総裁職に就いています。守護職の後任には松平春嶽が就きますが、すぐに任にあらずと辞表を提出し、再び会津候に守護職の辞令が出されます。これに対して、会津候も直ちに辞表を提出して任を逃れようしますが、これは認められずに結局復職したのでした。このドラマの設定は、こうした史実を踏まえての事なのでしょうね。子母澤寛の「新選組始末記」によれば、池田屋への出兵については、放置しておく訳にも行かず、さりとて長州藩と決定的に対立する事もためらわれることから軍議の決定までに時間を要し、さらに一橋慶喜や所司代との打ち合わせにも時間を取られた結果出動が遅れたとあります。

佐久間象山を訪ねている桂小五郎。古高が捕縛されているというのになんとなくのんびりした印象なのですが、桂は幕府に仕えている象山に京都挙兵のはかりごとを漏らしてしまいます。これが事実だったら、聞かされた方もさぞ迷惑だったでしょうね。桂は落ち着いている様でもやはり上の空だったのか、土産にと渡された地酒を忘れてしまいます。ここに登場したのが捨助。象山に「般若」と呼ばれて拗ねていましたが、人を人と思わぬ傲岸さが災いを招いたとされる象山の一面を表しているのでしょうね。捨助はいやいやながら桂に酒を届けに行かされます。

再び新選組の軍議に戻って、山南総長は浪士の襲撃に備えるために屯所の守備に回る事が決まります。浪士が新選組を襲うという風聞は実際に何度かあった様で、永倉新八の「浪士文久報国記事」には、前年の11月頃の事として、長州の間者の御蔵伊勢武が近藤に対して、「長州藩が新選組の屯所を焼き討ちにしようとしているから、ここから立ち去った方が良い。」と警告しています。また、「島田魁日記」には、池田屋事件後の6月8日の事として「長州浪人が屯所へ斬り込みに来るという風聞があり、屯所の表門に2門、裏門に1門の木砲を置きいて警備を固め、待ち伏せをした。」とあります。当日襲われるという風聞があったという記録はない様ですが、当然の配慮として屯所を守る留守部隊が居た事は考えられると思われます。

池田屋での浪士の会話。「桝屋から武器を運び出させているところ。」との事。これって、前回のレビューで史実には無いと書いてしまいましたが、一旦封印した桝屋の土蔵が破られ、甲冑や武器の一部が持ち出されたという記録がある様ですね。ですから、前回の望月亀弥太が桝屋に斬り込んだ場面は、史実に基づいた脚色なのでした。お詫びして訂正します。それにしても、白昼堂々と斬り込んだり、それを悠々と運び出したりする設定はやはり無理が感じられ、いかがなものかとは思いますが...。

池田屋に居る桂の元を訪れた捨助。酒を届けるだけでなく自分を雇ってくれと言い出します。あげくに踊りも踊れると言って膳をひっくり返してしまう粗相を犯し、またしても強制撤去されてしまいます。このとき、着物を汚された桂は衣装を代える為と言って藩邸に引き上げますが、三谷幸喜は捨助を実に効果的に使っていますね。池田屋事件の時の桂の行動には不可解な部分が多いのですが、捨助によって見事に辻褄を合わせています。そして、シリアスな場面の前に笑いを持ってきて、ドラマとして見やすくしてくれていますね。

祇園会所に集合した新選組の面々。会津藩の援護が無い事を知った近藤は、遂に単独で行動開始する事を決意します。部隊を二手に分けてそれぞれを近藤、土方が率いる事にし、自らは10名を率い、残りは土方に託します。近藤が指名したのは、沖田、永倉、藤堂、それに倅周平(昌武)。武田は誰にも頼まれないのに自ら軍師として随行することに決め、後は土方が決めていきます。面白かったのが谷三十郎。徹底的にスルーされていましたね。幾ら何でも気の毒ですが、新選組始末記で大活躍した事になっている三十郎、実は活躍したのは弟の万太郎の方でした。八木家から聞き取りを行った子母澤寛の取り違えがあった様なのですが、このあたりのエピソードを入れているのかも知れませんね。そしてもう一人、見慣れない顔が出て来ました。一瞬誰だか判らなかったのですが、浅野薫なんですね。確か前々回だったかな、テロップで名前だけが出ていました。彼もマイナー隊員の紹介要員ですので詳しくは後日アップしますが、地味な探索方を厭い華やかな斬込隊へ志願します。

さて、あまりにも長くなりましたので、一度切り上げる事にします。後半はその2として後刻アップします。


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