新選組!19
新選組!第27回「直前、池田屋事件」
池田屋事件という新選組最大の事件に向って怒濤の展開、刻々と状況が変わっていきます。その一方で、ドラマの後半へ向けての様々な伏線がありました。
まずは、近藤と対峙する永倉新八。芹沢鴨暗殺と内山暗殺について、何も知らされていない永倉が近藤に事実関係を質します。近藤は表情を眩ませて、「やっていない」と言い切ります。このときの近藤が新見錦にかぶって見えたのは私だけでしょうか。とりあえず納得した永倉でしたが、この時のやりとりがいずれ真実を知った時に大きく意味を持ってきそうですね。
その永倉が会っていた小常さん、永倉が落籍して一女をもうける人ですが、市川宇八郎の恋人だったという設定だったのですね。宇八郎が出て来たのは随分と前の事だったので、このエピソードはすぐには思い出せませんでした。宇八郎は亡くなったのですね。ところで、この市川宇八郎とは後に永倉と共に靖共隊を作った芳賀宜道の事なのでは。彼をここで殺してしまって後はどうするつもりなのでしょうか...。永倉は近藤と別れておしまいという事になるのかな。
谷三十郎が、末弟昌武を養子にと売り込みます。なんだか唐突な印象なのですが、当然土方は反対します。しかし、意外な事に山南は「考慮に値する」と賛成の様子。谷家はさして名誉の家柄という程でも無いはずなのですが、彼は昌武が板倉候の隠し子という情報を密かに握っていたのでしょうか。
その山南と近藤のやりとり。尊王攘夷の徒を斬る事に疑問を感じる近藤に、彼等は尊王攘夷はお題目に過ぎず、反幕府が目的なのだと諭す山南。まるで土方が言いそうな事で、この設定は意外でした。山南は尊王攘夷派と争う事に耐えられず土方と対立するに至るという設定だと思っていたのですが違うのですね。だとすると、山南はなぜ切腹するのでしょうか。これからの展開が見物になってきました。
「私が見つけました。」とうるさい武田観柳斎。新選組!18の2で紹介した中の「新撰組始末記」に描かれた人物像を再現しているのですね。火薬の扱いについて神経質な程うるさく、沖田が火薬に触ったとたんに外に飛び出します。火の気がなくても粉塵爆発などがありますから火薬の扱いには慎重になるべきなのですが、いくらなんでも怖がりすぎです。これは、武田の知識が学問上だけの事で、実地に基づいた役立つものでは無いという事を表しているのでしょうか。
松原、河合、葛山、昌武の4人とコミュニケーションを持つ近藤。これって、ものすごく意味深な場面ですよね。みんな後に近藤とは別れ別れになる面々なのですから。中でも良く判らないのが葛山武八郎。ここでプチマイナー隊士紹介をすると、この人は会津藩の出身で、この後に起こる池田屋事件には土方隊に属して参戦しています。17両の報奨金を貰っていますから、かなり活躍したのでしょうね。それから3ヶ月後、1864年(元治元年)9月6日に切腹して亡くなってしまいます。その原因は新選組!17の2で紹介したとおり、永倉と共に会津藩に提出した近藤の非行五箇条を認めた建白書だとされています。この事件は、会津候のとりなしで表面的には収まったのですが、土方の判断で最も影響が少なくて済む葛山に腹を切らせる事により、隊内への見せしめにしたと考えられています。彼について判っている事はこの程度で、新選組に入る前の経歴や実際の人となりを知る手がかりはありません。三谷幸喜としても彼を描き様がなく、「さしたるお役に立つとも思わないんで、あかん時には言うて下さい」と言うようなキャラクター設定にしたのでしょうね。私としては、先日壬生寺を訪れた時に彼の墓にお参りして来たばかりなので、親しみを感じてしまいました。
おまさちゃんと原田の関係も明らかになって来ました。盗んだ大根を持って嬉しそうに走る原田が何ともおかしかったですね。嫌いと言いながら字はきれいだと含みを残した言い回しが見事です。
沖田の名を騙って遊ぶ偽物。一瞬捨助かと思ったのですが、藤堂平助でした。近藤に詰め寄られ、沖田に対する劣等感を吐露する平助。それを諫め励ます近藤。兄の様であり、父の様でもある近藤はなかなか良いですね。でも、これも後の藤堂が持つ苦悩への伏線なのでしょうね。
一方、宮部鼎蔵ら浪士達は武器弾薬の奪回を計ります。望月亀弥太ほか数名で斬り込んで見事に奪還に成功しますが、情けないのが逃げ出した新撰組の隊士達。しかしこの場面をなぜ入れたのでしょうね。史実にもなく、数人で真っ昼間に斬り込むなど無茶も良いところで、必然性が無いと思うのですが。この時期の新選組はまだこの程度で、池田屋後にその実力が知れ渡ると言いたいのでしょうか。でも、まともに戦わず戦線離脱したのなら、隊規違反で切腹ものだと思うのですが...。それとも、浪士達にも活躍の場を与えたかったのかな。
桝屋喜右衛門こと古高俊太郎に対する拷問。五寸釘と百目蝋燭が出て来ました。永倉新八の「新撰組顛末記」に依れば、足の甲に五寸釘を打ち付けて蝋燭を立てて火を灯し、流れ落ちる蝋が傷口を伝い、あまりの苦痛に遂に自白したとなっています。さすがにこの場面の描写はありませんでしたが、もし仮にこのとおりの事をしたとしたら蝋は直接床に落ちるばかりで少しも拷問にはならないという記事を読んだ事があります。だとしたら、直接蝋を打ち抜いた釘に垂らしたのでしょうか。どっちにしてもむごたらしい事です。書いていて気分が悪くなってきた。これだけの事をしてきた割に土方副長の表情は、いつもとあまり変わらない様に見えたのですが...。
さて、池田屋事件に向けての忙しい展開の中にこれだけの内容を詰め込んだ三谷脚本、見事としか言い様がありません。次回池田屋事件でクライマックスを迎える訳ですが、その後の展開にも十分期待出来ると考えて良さそうですね。
この項は、永倉新八「新撰組顛末記」、別冊歴史読本「新撰組の謎」を参照しています。
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コメント
ええー、市川宇八郎って芳賀宜道のことだったんですね!
ビックリ・・・さっそく調べてきました。本当だ!
永倉さんのセリフだと、確か「宇八郎は自分が死ぬと感じていた」とか言っているだけで、実際に「死んだ」とは言っていない(報せをもらったわけではない)ように取れました。なので、芳賀宜道として登場する可能性はある気がします。
小常さんが出てきたので、ああこれで永倉といい仲になるのか~、とだけ思ったのですが、なんだかさらに伏線がありそうですね。
投稿: abetomo | 2004.07.14 00:19
こんばんは!いつも楽しく読ませていただいてます(^^)
ということで勝手に紹介してしまいました。
・・・テレビみてませんけどココはみてます(^^;;
投稿: ゴロスケ | 2004.07.14 00:26
abetomoさん、こんにちは。そうか、永倉は「市川宇八郎は死んだ。」とは、はっきり言っていないのですね。でも、だとすると親友の許嫁を盗ってしまうという事になりはしませぬか?三谷幸喜が今後どうケリを付けるつもりなのか気になりますね。
ゴロスケさん、トラックバックありがとうございます。過分に褒めて頂いて、ひたすら恐縮しております。ドラマはいよいよ次回がクライマックス、是非ご覧になられる事をお勧めします。
投稿: なおくん | 2004.07.14 18:20