新選組!10
今回の「新選組!」第18回「初出動! 壬生浪士」は、久坂玄瑞が立て
た数え歌の立て札を巡って、浪士組に出動が命じられます。
久坂玄瑞は文才が豊かだった人で、八・一八の政変に続く七卿落ちの際
に、即興で見事な歌を作った事でよく知られています。また、実際に数え
歌も作っている様ですね。ですから、ああした立て札を立ててもおかしくな
い様にも思えますが、番組の設定はフィクションです。今回の番組で使わ
れた数え歌は、もっと後になって大阪で流行った数え歌だったと思うので
すが、うろ覚えで、正確な資料が手元に無いので断言できません。どな
たか、ご存知ありませんか。
今回の番組の中で、山南啓助が言った「長州を敵に回す事になる。」とい
うセリフは、重要な意味を持っていますね。新選組の今後の方針を明示す
る事になるのですから。また、後の山南の脱走から切腹に至る結末を暗
示しているとも受け取れます。ただ、実際に新選組が出動し、はっきりと
長州藩を敵に回すのは、八・一八の政変の時からです。また、新選組を名
乗るのも、市中取り締まりを命じられるのも、この政変以後の事です。
さて、だんだん「ねこづらどき」のシリーズになってきたマイナー隊員の紹介
ですが、今回は平間重助です。番組では、剛州さんが人の良さそうな役柄
を演じていますね。
平間重助は1824年(文政7年)、現在の玉造町芹沢に生まれています。
芹沢鴨と同郷ですが、それもそのはず、平間家は、先祖代々芹沢家に仕
える家老格の家だったそうです。重助の家は、その分家のようですね。神
奈川県川崎の平間寺に由来し、鎌倉時代から続く由緒ある家系の様です。
重助については、1844年(天保15年)に行われた水戸藩の軍事調練の
参加者に名前があるそうです。その後、重助は芹沢家の用人として仕え、
芹沢鴨から神道無念流を学び、目録を受けています。所帯を持ち、長男に
も恵まれ、平穏な暮らしぶりだった様ですね。
1863年(文久3年)芹沢鴨が浪士組に参加する際、芹沢家では、用人で
ある重助に同行するよう頼みます。このため重助も浪士組に参加する事に
なりますが、芹沢鴨の世話役という事だったのでしょうか。重助39歳の時
でした。
新選組では、番組にあった様に副長助勤を拝命します。以後は、平山五郎
と同様に芹沢鴨の絡んだ大阪力士との乱闘、大和屋焼き討ち事件などに係
わります。
1863年(文久3年)9月16日に芹沢鴨が暗殺された際には、危うく難を逃
れています。彼が助かったのには、別室で寝ていたから、厠へ立っていたか
ら、布団の上から刺されたのですが、そのまま死んだふりをしていたから等
諸説があり、どれが正しいのかは判りません。新撰組始末記では、刺客が
去った後、裸で刀を手に持ち、「どこへ行った!」と叫んびながら、ウロウロし
ていたとあります。その後行方不明になりますが、どうやら郷里に帰っていた
ようです。重助にすれば芹沢鴨の世話役として付いてきたのであり、彼が死
んでしまえば新選組に居る理由も無くなったという事だったのでしょうか。
重助は、芹沢家に芹沢鴨の暗殺の顛末を伝えた後、再び姿を消しました。新
選組を脱走した事で幕府の目をはばかる様になった事、また故郷の水戸にお
いても、天狗党からは、反攘夷に傾いたように映る新選組に居た事が裏切り
行為と見られ、身の置き所が無かったのでしょうか。
維新後、重助は芹沢村に戻ったそうです。晩年は官軍の目を忍びつつ暮らし、
1874年(明治7年)51歳で亡くなったと伝えられます。
平間重助の経歴を見ていると、近藤派の井上源三郎と重なる所がある様です
ね。そして、人柄も用人に相応しく、おだやかだったと伝えられます。このあた
りも源三郎と通じる所がありますね。ドラマの役柄も、こうした事を押さえている
のかも知れません。
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コメント
「マイナー隊員の紹介」・・・勉強になります。
たとえ表舞台には出てこなくても、ひとりひとりにドラマがあるのですよね。
これからも、いろいろな人を紹介してくださいね。
投稿: mikolin | 2004.05.11 23:51
mikolinさん、トラックバックとコメントありが
とうございます。
マイナーなんて言うと本当は失礼なのでしょ
うけど、ドラマでは見逃されてしまう様な脇
役の人でも、調べてみると結構面白い事が
判ったりします。
それに、こういうディテールを見ていくと、三
谷幸喜さんは、本当に良く調べてあるのが
判るのですよね。プロの脚本家ですから当
然と言えば当然なんでしょうけど、これだけ
好き放題に新選組を描きながら破綻を見せ
ないのは、ちゃんとした裏付けをとってある
からなんだと、改めて思います。さすがで
すね。
投稿: なおくん | 2004.05.12 17:47
マイナー隊員の紹介がついにシリーズ化されましたか(^o^)
三谷作品の素晴らしいところはどんなキャラでも
しっかりと描いてあげるところだと思います。
来週はどんな隊士が登場するのか楽しみですね。
投稿: yrena | 2004.05.12 22:24
どこまでネタが保つか判りませんが、見
てくれる方がいる限り、続けていこうか
なと思ってます。
来週は、八木家の葬儀ですね。また近藤
一人の手柄になりそうなのが気になりま
すが、さてどんな展開に持っていくので
しょうね。
投稿: なおくん | 2004.05.12 23:16
わざわざコメントまで残して下さりありがとうございました、こちらこそ恐縮です。
自分は根っからの理系人間で、維新前の日本史なども中学レベルでしか(中学でやったことも覚えてないけど…)学んでない無知っぷりなんですよ。
ドラマを見ながら文献と見比べたりするのがすごく楽しくて仕方ない!
こちらのサイトのように隊員を掘り下げて紹介して下さるような文章は、実はドラマより楽しみにしてるのかも…とさえ感じてしまいます。とても勉強になります。
今後もなおさんが楽しんで新撰組レビューを書いて下さればと、隅っこで応援してます。
投稿: Snow Swallow | 2004.05.13 00:04
Yukimiさん、こんにちは。
私の駄文にお付き合い頂いてありがとうございます。こんなに持ち上げられては、後が恐い...。
私が書いているのは、どこかの本やサイトに書かれている事を参考にしているもので、史学的な
批判に耐えられるものではありません。気楽な、雑談のつもりでお付き合い願えれば幸いです。
PS.申し訳ない事に、そちらのサイトのコメントの書き方が判らなかったもので、ちゃんと
「ねこづらどき」のサイト名が入っていません。お手数ですが、もし可能なら訂正して頂けると
有り難いのですが。
投稿: なおくん | 2004.05.13 18:16