新選組!9
新選組! 第17回「はじまりの死」、まあ予想どおりの展開でした。近藤を
徹底してよい子にし、芹沢を悪役に仕立てるという、定石どおりの展開です
ね。殿内を殺したのは本当は近藤なのにと思うと、芹沢がちょっと可哀想で
した。しかし、このあたりの暗闘は、後の大阪奉行所の与力殺しも含めて、
新選組でも最も暗い部分ですからね、汚名はすべて芹沢に被って貰わない
と、先へ進めないという事なのでしょう。
その芹沢鴨、殿内を斬った言訳をする姿がなんとも弱気に映りましたが、そ
のあたりが三谷演出の新味というべきでしょうか。「新選組始末記」に出て
来る芹沢のエピソードの中に、八木家の火鉢を借りる話があります。八木
家の唐銅の火鉢を芹沢に借したのですが、それがいつの間にか返ってきて
いる。よく見ると無惨にも刀で切った跡があり、芹沢に聞くと「済まん、済ま
ん。」と頭をくばかり。重ねて誰がやったのかと聞くと「俺だ、俺だ。」と逃げ
て行ったそうです。火鉢を切ってしまうなど乱暴この上ない話ですが、しかし、
その後の返し方が、いたずらをしてから悪かったと気づいた子供の様で、芹
沢鴨の人間味を感じる事が出来ます。同時に、意外に気弱な一面が感じら
れ、今回の三谷演出に繋がっているような気がします。
さて、その芹沢鴨の腹心で、傍若無人に振る舞ったあげく、斉藤一にこっぴ
どく脅されるという情けない役柄を演じているのが、平山五郎です。
平山五郎は、新選組始末記では水戸藩の人となっていますが、どうやら実
際には姫路出身だったようです。1829年(文政12年)の生まれで、新選
組結成当時は34歳でした。ドラマで片目にアイパッチをしていますが、故郷
で花火をしているときに火薬が爆発し、左目を失ったと言われています。こ
のため首を心持ち左に落とす癖があり、「めっかち平山」と呼ばれていました。
片目でも剣の腕前は素晴らしく、斉藤弥九郎の道場「練兵館」で修行し、神
道無念流の免許皆伝を受けています。特に、目が見えない左手から打ち込
まれると無類に強く、必ず受け返して勝ったそうです。
芹沢とのつながりは、やはり剣の同門という事でしょうか。芹沢は文久2年ま
で獄に入っていましたから、二人の出会いは浪士組結成の直前、江戸では
なかったかと思われます。芹沢派の用心棒的な剣客というのは、ドラマの設
定どおりだったようですね。
新選組では副長助勤を勤め、大阪力士との乱闘、大和屋焼き討ち事件など、
芹沢の起こした事件に関係しています。また、四条堀川西入ルの米屋に鉄
砲を持った強盗が侵入した際、永倉新八、斎藤一らと共に現地に赴き、刀が
こぼれるまで戦い、朝廷から褒賞を受けたという事があったそうです。
島原の桔梗屋の小栄となじみであり、芹沢鴨と共に暗殺されたときも一緒に
寝ていました。小栄は、刺客が踏み込んできたときに、たまたま厠へ立って
いたため無事だったと伝えられます。
ドラマの中では、最も損な役回りになっていますが、実際の人柄がどうだった
かについては、判る資料がありません。斉藤弥九郎ともあろう人が、ただの
乱暴者に免許皆伝を与えるとは思えないのですけどね。
彼の墓は、芹沢と共に名前を刻まれて、壬生寺にあります。写真が次の所
にありますので、興味のある方はご覧になって下さい。
| 固定リンク
「新選組」カテゴリの記事
- 今日は「新選組の日」だそうですが(2012.02.27)
- 京都・洛中 海鮮茶屋 池田屋はなの舞 居酒屋編(2011.08.22)
- 新選組血風録の風景~胡沙笛を吹く武士 その6~(2011.06.03)
- 新選組血風録の風景~胡沙笛を吹く武士 その5~(2011.06.02)
- 新選組血風録の風景~胡沙笛を吹く武士 その4~(2011.06.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
初めまして。
いきなりですが、トラックバックさせて頂きました。
以前の「新選組!」の記事も読ませて頂きましたが、とても詳しく書かれているので驚きました。
「新選組!」に関しては、期待と不安が入り混じった気持ちでずっと見続けています。
これからの様々な出来事を、三谷さんがどう描いていってくれるのかが楽しみ(?)です。
これからしばしばお邪魔すると思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: mikolin | 2004.05.08 13:17
mikolinさん、こんにちは。トラックバックありがとうございます。
新選組!については、以前にも書いていますが、三谷ドラマとして見
る様にしています。そうすれば、イライラしなくて済むというか...。
でも、このドラマ、八方破れに見えて、妙に辻褄が合っているのですね。
その辺が巧妙というか、三谷幸喜の力量なのでしょうか。そうした所も
合わせて楽しむ様にしています。
投稿: なおくん | 2004.05.08 15:37
コメント&トラックバックありがとうございました。
・・・二重投稿してしまったようで、すみませんでした。
そうですね。私も"三谷ドラマ"として楽しもうと思っています。
まだまだ見せ場はこれから!ですものね。
投稿: mikolin | 2004.05.08 20:57